米連邦政府に起訴された美術館強盗の「奇想天外」な手口

必ずしも毎回戦果があったわけではない。2017年には1人が単独で犯行に及び、梯子を使ってニュージャージー州のフランクリン鉱物博物館の屋根に上った後天窓を破り、そこから内部へ侵入した。館内で犯人はセンターポンチで陳列ケースを壊し、宝石と鉱物を奪ったが、その価値はわずか1万1000ドルだった。

裁判資料によれば、犯人は時に窃盗中に無線で連絡を取り合っていたという。また少なくとも2回は犯行中に変装していたようだ。当局によると、2016年にはロジャー・マリス博物案に押し入った犯人の1人が「消防士のユニフォーム姿で斧を携えて」いたという。その犯人は陳列ケースを叩き壊し、ロジャー・マリスがニューヨーク・ヤンキース時代に外野手として在籍していた時に贈られたヒコックベルトとMVPトロフィーを盗んでいった。その年全米でもっとも優れた選手に送られるヒコックベルトは、金のバックルにダイヤモンドと宝石が埋め込まれており、推定価値は10万ドル。

起訴状によると、別の時には2人の犯人がニュージャージーの鉱山博物館に押し入ったが、それまで陳列されていた金塊は金庫に収納されてしまっていた。犯人の1人は「ペンキ工のマスクなど、外観が分からないような服装で」開館時間に再び博物館に戻った。その犯人は金塊と「その他金属」の塊を――営業時間内に――持ち出し、別の犯人と車で落ち合って逃走したとみられる。

起訴状によれば、2019年にはハーバード大学構内にある宝石美術館からダイヤモンドを盗む計画が立てられ、犯人の1人が犯行用に「ユダヤ教ハシディーム派の衣装」を仕立たという。出来上がった衣装を実行犯に試着までさせたが、いざ下見に訪れてみるとダイヤモンドの展示は終了していたため、計画はお流れになったようだ。

犯行グループはボランド被告がスクラントンで経営するバー「Collier’s」を根城にしていたようだ。盗品を売りさばきやすいよう解体し、あるいはトロフィーを延べ棒や円盤、小判型に溶解して、一部をニューヨークで15~16万ドルで売りさばいた。当局によれば、岩から貴金属を分離するためにトーチをレンタルしたこともあったようだ。当局は起訴内容の発表と合わせて、ベラのワールドシリーズ・リングも溶解されたとの見解を示した。

関係者によると、3年ほど前に地元警察が発見した現場証拠がきっかけで複数の犯行がつながったという。国際ボクシングの殿堂が2015年に強盗に遭った際、現場に残されていたガラスの派遣に付着した血液のDNAが犯行を結び付ける証拠のひとつになったとニューヨークアタイムズ紙は報じている。それをきっかけに連邦、州・地元当局が協力し、州をまたいで20か所の施設で強盗を働いたとみられる9人のペンシルベニア州住民の立件にこぎつけた。

無罪答弁を行った被告は、パスポートの提出とペンシルベニア州からの移動禁止を命じられた。公判開始は8月21日に予定されている。

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from Rolling Stone US

Akiko Kato

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