米連邦政府に起訴された美術館強盗の「奇想天外」な手口

PHOTO ILLUSTRATION BY MATTHEW COOLEY. PHOTOGRAPHS IN ILLUSTRATION BY BETTMANN ARCHIVE/GETTY IMAGES; ADOBE STOCK; STEVE CRANDALL/GETTY IMAGES; UNITED STATES DEPARTMENT OF JUSTICE

米ペンシルベニア州スクラントン連邦支局は6月15日、一連の大胆な美術館強盗に関与したとみられる容疑者9人の起訴を公表した。容疑者は狙いをつけた現場を事前に下調べし、その後無線を手に――時には変装もして――現場に戻り、ボクシングのチャンピオンベルトやファベルジュのパンチボウルなど様々な美術品を持ち出し、粉々に砕けた陳列ケースを現場に残して立ち去った。

【写真を見る】「遺体の一部は油で揚げて食べた」全米を震撼させた殺人鬼

検察の発表によれば、被告らが過去20年間にわたって盗んだ貴重な美術品には、ジャクソン・ポラックやアンディ・ウォーホールの絵画作品や、ヨギ・ベラのワールドシリーズ・リング9点、年代物の武器、ティファニーのランプ、1903年のベルモント・ステークスなどのトロフィー20点以上が含まれていたという。検察いわく、犯行は1999年から2019年にかけて、ペンシルベニア州、ニュージャージー州、マサチューセッツ州、ノースダコタ州の小規模な美術館の他、宝石店やアンティークショップで主に行われていた。大半は閉館後の犯行で、容疑者はドアや陳列ケースを叩き壊してから窃盗を働き、車で逃走した。犯行には可能な限り盗んだ美術品を分解または溶解し、バラバラになった状態で推定価値をはるかに下回る価格で売りさばいていたとみられる。当局の話では、警察の目を逃れるためにアメリカの風景画家ジャスパー・クロスピーの1971年の絵画作品(推定価格50万ドル)が焼き払われたこともあったという。このようにして犯人は地元当局の目を何年もぐくり抜けてきた。

起訴されたのはいずれもペンシルベニア州在住の40~50代で、重要美術品の窃盗、重要美術品の隠蔽または処分、およびこれら犯行を共謀した罪などに問われている。逃走車を運転したとみられる人物や、犯人が待ち合わせや盗品の解体・分配に使っていたガレージの所有者らは共謀罪1件で起訴された。捜査官の話では、警察に出頭せず今も逃走中とみられるニコラス・ドンベック被告(53歳)は、核となる容疑、すなわち盗んだコインや宝石類を別の州に移動させた罪でのみ起訴されているとのことだ。

被告の内3人はすでに罪状認否を終え、いずれも無罪を主張している。無罪答弁を終えたダミエン・ボランド被告、アルフレッド・アツス被告の弁護人は、現段階では裁判に関するコメントを控えた。他7人の容疑者に弁護人がついているかどうかは分かっていない。

起訴状には、犯行グループが窃盗を計画して実行するまでの経緯が説明されている。まずは狙いをつけた美術館に複数回足を運ぶところから始まる。ノースダコタ州ファーゴのロジャー・マリス博物館、ニュージャージー州リバティコーナーの全米ゴルフ協会博物館、ニューヨーク州サラトガのナショナル・ミュージアム・オブ・レイシング・アンド・ホール・オブ・フェイムなどで犯人は盗もうとしている貴重な品々を物色し、陳列品のセキュリティ対策を確認した、と検察は考えている。起訴状によれば、陳列ケースの強度を確かめるためにコインでガラスに傷をつけたこともあったようだ。

その後犯人は閉館後に美術館へ戻り、盗みに及んだ。2005年には2人の犯人がペンシルベニア州スクラントンのエバーハート博物館のドアを破り、ウォーホールの『Le Grande Passion』(10万ドル相当)とポラックの『Springs Winter』を奪った。

Akiko Kato

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

MOST VIEWED人気の記事

Current ISSUE