小瀬村晶が語る、東京で感じ取った「日本の四季」をピアノで描いた理由

―ピッチフォークの評に、「飽きることの無い彼の旋律は果てしなく、他の音楽家と一線を画するものだ」とありますけど、今作を聴いたときに本当に飽きることなく繰り返し聴いていられるのはなんでだろうって考えてみたら、あまり我を出している感じが曲にないからなんじゃないかと思ったんですよ。それは今おっしゃった、CMや映画で自分を前面に出さない仕事をしてきたことが、ご自分の作品を作るときにも多少なりとも影響してるのかなって。

小瀬村:いや、逆に仕事の場合は自分を出すことを求められることが多いんですよ。つまり「この曲を聴いてきました」って、わりとメロディーが強めの曲のイメージで作りたいっていうお話が来ることが多いので、どちらかというと映画やテレビの仕事の方で、自分を客観的に見て自分らしいと思われてる部分を強く出そうとするんです。その分、自分の作品になるとそういうものから少し遠いところに行ってる部分があるんですよね。仕事として求められたものをやるときは、ちょっと背伸びをするというか、本来自分だったらここまではやらないけど、でもこの映画だとここまでやったほうが良いから、挑戦するっていうこともよくあるんです。ただ自分の作品の場合は、自分が割と控えめなものが好きだったりするのでそういう曲になるというか。今回も「“ザ・春”っぽいメロディーを書く」とかっていうプロジェクトではなくて、もやっとした感覚的なものに近いかなって(笑)。ピアノソロ・アルバムだけど、自分の中の感覚としては最初にお話ししたフィールドレコーディングだったりとか、アンビエント・ミュージックに精神性が近いと思います。

―なるほど。残響音が夏の終わりを感じさせる「Faraway」にもそういう感覚が感じられます。

小瀬村:この曲は、夏の提灯とか祭囃子がちょっと遠くに聴こえているようなものをイメージしていた気がします。

―夏の曲で言うと、「Niji No Kanata」は2013年にボーカリストのlasah(ラサ)さんのボーカル入りでリリースした曲ですよね。

小瀬村:これだけ唯一セルフカバーみたいな感じですね。夏の曲であと1曲作ろうと思ったときに、「そういえば10年前に夏の曲を作ったことあるな」って思い出して。そのときはボーカル曲だったんで、歌いながら作曲したんですけど、ピアノで弾いたらどうなるのかなって弾き始めたらうまくいって。過去の自分との接点も今回のアルバムに組み入れられたのはすごく良かったなと思います。

―Twitterに書いていらっしゃいましたけど、CDジャケットは「正面から向き合わないとぼやけてしまう仕様」ということですね。これはどうやってできてるんですか。

小瀬村:レンチキュラーっていう素材を使っていて、見る角度によっては、絵がボケて見えて、正面から見るとちゃんと見えるんです。そのグラデーションがこの作品のコンセプトと合っていると思って。

―アルバムを1枚完成させてみていかがですか?

小瀬村:素朴な作品なので、場所を選ばずに聴いてもらえるんじゃないかと思います。僕は作品を作るのが好きなので、1つの作品を作り終えると、また次のアイディアが出てきて、「今度はこういうことがしたいな」って思うんです。これからもその繰り返しですね、ずっと。



<リリース情報>



小瀬村晶
『SEASONS』
2023年6月30日(金)リリース
Decca Records
https://akirakosemura.lnk.to/SEASONS
CD:UCCL-9111 ¥3960(税込)
LP:UCJY-9002 ¥4950(税込)
=収録曲=
1. Where Life Comes from and Returns
2. Dear Sunshine
3. Fallen Flowers
4. Niji No Kanata
5. Faraway
6. Vega
7. Gentle Voice
8. Zoetrope
9. Left Behind
10. Passage of Light
11. Towards the Dawn
12. Hereafter

https://www.universal-music.co.jp/kosemura-akira/

Rolling Stone Japan 編集部

Tag:

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

MOST VIEWED人気の記事

Current ISSUE