小瀬村晶が語る、東京で感じ取った「日本の四季」をピアノで描いた理由

―では『SEASONS』の曲について詳しく訊かせてください。曲順は四季を春夏秋冬の順に並べているわけですか。

小瀬村:そうです。ただアルバムのコンセプトとしていわゆる「春っぽい曲」「夏っぽい曲」を作るっていうコントラストの強いものではなくて、もう少し自然な流れで、だんだんと移り変わっていく季節の色合いみたいなものを表現したかったんです。あくまで自分の記憶の中にある季節をイメージして何となく出てきた曲を順番に並べていった構成になっています。

―そうして春夏秋冬、1年間がアルバムになっているわけですね。

小瀬村:1年間季節が巡ってそこで終わりっていうよりは、ずっと周回するっていうイメージです。「Where Life Comes from and Returns」という、命が生まれ戻っていく場所という意味の1曲目から始まって、最後の「Hereafter」まで行ってまた戻ってくるっていう、自然のサイクルを表現したかったんです。



―確かに、聴いているといつの間にかひと回りしていた印象でした。曲ごとの大きな起伏がない分そう感じた気がします。

小瀬村:作為的にならないように、あまりそういうダイナミクスは作らないようにしてます。最近は僕らが知ってるちょっと趣のある日本の四季とは変わってきちゃって、急に暑かったり寒かったりするので、あと50年もしたらこの作品も、記憶の中の良き日本の四季みたいなものになってしまうかもしれないですけど、僕の中ではやっぱりこういうものが四季かなっていうのがあるんです。だからわりと淡々と徐々にグラデーションしていくイメージで作りました。

―そんな中で、終盤になるとちょっと感情が入ってくるように聴こえます。

小瀬村:制作期間がちょうど冬から春にかけての間だったんですけど、まさに冬に作ってたからかもしれません。やっぱり冬に作ってると自然に冬っぽい曲になるので。ただ僕は冬にどっぷり浸かるっていうよりは、どこか春を迎える光を探したい。「Passage of Light」は最後の方で作ったので、全体をちょっと俯瞰しながら作ったんですけど、冬の沈みゆく世界の中であがいてるような部分が出てたかなと。美しい秋の印象をイメージした「Gentle Voice」から「Zoetrope」「Left Behind」に移っていくなかで、もう気持ちは冬に向かってますね。でも自分の中にある、ほの暗いハーモニーが心地良い部分だったりするので、そういうものが秋から冬で重なっていったのは良かったと思います。

―11曲目の「Towards the Dawn」はちょっとシリアスですね。

小瀬村:そうですね、トンネルの中から出て森の中を彷徨ってるみたいな。僕はたぶん環境にすごく影響されやすいんだと思います。

―そこはご自分の感情と移り変わる季節がリンクしている感じですか?

小瀬村:常にそういうサイクルっていうことを考えている部分があります。あまり自分では気づいてなかったんですけど、他の仕事で曲を書いたときに、僕の曲のフレーズが「弧を描くような音楽に感じる」って言った人がいて。自分の音楽をそういう視点で聴いたことがなかったんですけど、確かに僕の音楽って、ミニマルなフレーズの反復が多くて、その音型が弧を描いたようなものが多いことに気づいて。「なるほどな」って思ったんです。そう考えると、常に自分の音楽ってサイクルというか“サークルの中”にあるようなイメージがあって。今回も四季というサイクルしていくものをテーマにしているので、もともとそういうものを自分の中で感じながらやってた部分もあるんだと思います。行っても必ず戻ってくるところに心地よさを感じてるというか。



―どこかで完結することを求めていない?

小瀬村:たぶん、完結させることにそんなに魅力を感じてないのかもしれないです。曲1つとっても、いわゆる終わらせない終わり方が多いので。「Towards the Dawn」なんかも、終わったのか終わらないのかみたいな形で終わっちゃうというか(笑)。結構インプロビゼーションで録っていることが多くて、弾きながらモチーフが決まってくるとレコーディングして1番いいのを選ぶみたいな作曲の仕方をしているので。ピアノソロの曲を書くときは、そうやって感覚的に作ることが多いです。

Rolling Stone Japan 編集部

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