小瀬村晶が語る、東京で感じ取った「日本の四季」をピアノで描いた理由

―その感覚的に作った曲を作品として世に出すときに、タイトルを付けるわけじゃないですか? 今回のコンセプトだと、例えば「Dear Sunshine」は春の曲だなって思いながら聴くわけですけど、タイトルに聴く側のイメージが引っ張られることもありますよね。そこはどう考えてタイトルを付けているのでしょうか。

小瀬村:タイトルは難しいですね。一番難しいんじゃないかっていうぐらい。曲を作ってる時間より、タイトルを考えてる時間の方が長いんじゃないかな(笑)。仮タイトルをつけちゃうとそれになっちゃうから、とりあえず日付を付けておいて、後で聴きながらどういう曲名にしようかなって考えます。自分の記憶を探りながら出てきた曲を改めて聴きながら、逆にインスピレーションを受けて想像を膨らませてタイトルを付ける、みたいなことの繰り返しですね。でも「Dear Sunshine」は、夢の中で書いてた曲なんですよ。



―そんなことってよくあるんですか?

小瀬村:いや、だいたい起きたら忘れてるので15年やってて1回もないんですけど、この曲は起きたときにメロディを覚えていたので、それを全部メモして、あとからコードを付けて曲にしたんです。そのときは春の日差しの中ですごくキラキラした曲を弾いてるっていう夢だったんですよ。夢の中で、この曲はめちゃくちゃいいなって思ったのですが、実際にアトリエで弾いてみたら、「あ、そんなに…」みたいな(笑)。

―ははははは(笑)。夢の方が良い曲だった?

小瀬村:「というよりも、何か夢と違うな」って(笑)。弾いてみたら素朴な曲だったんだなって思いました。どことなく童歌みたいで。

―逆に、例えばCMや映画の曲の依頼があったときには最初からテーマがあるわけじゃないですか? そういうときはどうやって曲を書くんですか。

小瀬村:CMは絵コンテだけが送られてきて、決まった尺に合わせて作ります。映画は逆で、映像が全部出来上がってきて細かく作る感じです。

―映画だと『ラーゲリより愛を込めて』(2022)は大きな話題作でしたけど、このときも全編ご覧になってから曲を書いているわけですか。

小瀬村:そうです。全部繋がれた映像を見て、それから打ち合わせをして細かくどこに音楽を付けていくかっていう話をして作って行くんです。コンマ単位で音楽を付けてちょっと変わるとまた作り直しをするので、途方もなく大変な作業です。自分だけの作品ではないので、その作品を作ってる人たちとの話し合いの中で生まれてくるものを探す作業になるんですけど、自分の作品を作るときは自分しかいないので。自分が企画して自分で曲を考えてコンパイルしてっていう、正解が自分の中にしかないっていうのはそれまた悩みもあったりもするんですけど、基本的には自分が聴きたい音を作れるわけですから、それは大切なライフワークですね。

Rolling Stone Japan 編集部

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