ジャズミン・ビーンが語る、シネマティックな音楽を司るパーソナリティ

ジャズミン・ビーン

2019年、2020年にロンドン出身のジャズミン・ビーンが発表したMVはどれもが強烈だった。音楽、衣装、メイクアップ、ビジュアル、エモーション、世界観……圧倒的なオリジナリティを持った表現が極限まで突き抜けていたのだ。

【動画を見る】ジャズミン・ビーン「Carnage ft. Lucy Loone」MV

サンリオキャラも大好きなんだけど、そのカワイイとスプーキーの融合っぷりも、ジャンルで括れない新しさがあった。ビジュアルのこだわりは、母とともにCult Candy Cosmeticsというメイクアップ・ブランドを主宰するところにも表れていて、しかもその製品はビーガン、クルエルティフリーだったりする。今年はアルバムのリリースが控えているのだが、ジャズミンの音楽性、世界観、キャラクターはさらに進化を続けているようだ。

ー昨年の11〜12月に米原康正の+DA.YO.NEによるキュレーションで、ヒステリックグラマー渋谷店でポップアップをやりましたよね。

ジャズミン そうそう。今年はもっと大きな規模でやる予定。私自身かなり大きなサイズのキャンバス作品も描いてるから、より本格的なアートショーにしたいと思ってる。去年のポップアップには行けなかったから、今年は日本に行って、たくさんお金を使いたい(笑)。

ー自分で音楽をやろうってなったきっかけは?

ジャズミン 私は元々は映画をやろうと思っていて。音楽ももちろん好きだったけど、私の家族はパパもママもロック・バンドをやってたし、兄もやってたから、逆に私はやらないぞってなってた(笑)。でも音楽に対する小さな衝動は年々大きくなっていって。それでとうとう考えるのはやめにして、音楽をやろうってなった。そこでエクストリームなキャラを作って、16歳の時に初めて「Worldwide Torture」という曲を発表したんだけど、ママのボーイフレンドに「私のMVを撮るから、家の壁を破壊させてほしい」って言って。レーベルを探さなきゃとも思ってたんだけど、自分の音楽をやりたかったからとにかくやってみて。そしたら上手くいったんだよね。

ー「Worldwide Torture」のMVはすべてジャズミンの手作りですか?

ジャズミン 「Worldwide Torture」、「Saccharine」、「Birthday Bitch」、「Hello Kitty」といったMVはすべて自分で制作費を出して、自分で作ってる。レーベルが付いてから作ったMVは「Princess Castle」と「Yandere」で、これも自分でディレクションをやってる。これまでのMVは私自身を夢の中で描いたもので、制作費はなるべくかけないで作ってきた。私は自分の作った作品に対してスゴく厳しいから、今またやっぱり自分自身でやらなきゃってなってる。



ー音楽としてはどのようなものをやろうと思っていました?

ジャズミン 16歳で1st EPを出した時の私はめちゃくちゃ怒ってた。とにかくいろんなことがあったし、トラウマがあったし、みんな殺すくらいの勢いだった。でも今度出すアルバムでは、特定のサウンド、特定の雰囲気を持ったものにして、聴き手をどこかに連れていきたいと思ってる。「Worldwide Torture」とは全く違うものになるし、もっとシネマティックなものになると思う。私はダニー・エルフマン、スマッシング・パンプキンズが好きで、よく聴いてる。今も私はいろいろなことに怒ってるけど、今の方が自分の感情についてもっと語ることができる。

ー年月を経て、自分の表現する感情は変わっていきました?

ジャズミン より痛みを感じるようになった。というのも、自分で意識できるようになったから。今度のアルバムではどの曲でも私が何について怒ってるのか、何故怒ってるのかを歌ってる。でもそれは、より自分に正直になれてるからだと思う。私は曲を作る時に、もし私が死んだら私の作品ってどうなるんだろう?って考えてしまう。20年経った後でも新しいのだろうか?とか。私は音楽アーティストとしてタイムレスな存在になりたいと思っていて。だからいつも、もし死んだらって考えてしまうし、それで正直になれるのかもしれない。私の音楽ってスゴくエモーショナルなものだから、私のライブに来て泣いてる人もよく見かける。私自身もABBAのホログラム・ライブを観てても泣いてしまうくらいだから。

ーそれだけジャズミンにとって音楽は重要なんですね。

ジャズミン 音楽がなかったらどうしていいかわからない。もしヘッドフォンが壊れてしまったら、私にとっては死刑宣告と同じ意味。音楽があるから私はこの地球で安心して生きていける。今の私がやろうとしてることは、気が動転してうわーってなることじゃなくて、ちゃんと話して伝えること。音楽の多くは、自分のことをどれだけ嫌いなのか、どれだけ自分が落ちてるのかについて歌ってるよね。でもそこには何の気づきもなかったりする。「私は悲しい……」だけでは何も生まれないから。私はそこに気づきを入れたいし、そこに皮肉も入れたい。

ー最新曲である「Carnage」を聴くと、ジャズミンの音楽はエモーションを外に出すだけでなく、癒しのプロセスもあるような気がします。音楽的にも新しいフェーズに向かっている印象を受けました。

ジャズミン 「Carnage」はアルバムにも収録する予定だったけど、アルバムはそれ以上に、ハンパじゃなく本物になってる。エレクトロニックな要素は残しつつも、全部がデジタル・サウンドという感じにはなっていなくて。ギターも入ってるし、オーケストラも入ってるし、生ドラムも入ってる。ハイパーポップというよりは、もっとスケールの大きなシネマティックな音楽になってる。

ー最近、教会でのライブ映像「Acoustic Church Session」を発表しましたが、今話したタイムレスな音楽への志向を感じるし、楽器演奏をバックに歌を聴かせるものになっていますよね。

ジャズミン 私ってすぐにうんざりしちゃうから。昔のMVを観ると、うわってなってしまう。それは常に自分が進化してるのがわかるから。私は自分のことをプロのシンガーだって言ったことはないし、歌のレッスンを受けたこともない。だけど、何かを狙っていろいろやったりせずに、純粋に歌を歌うっていうことをやりたかった。

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