リンキン・パーク『Meteora』20周年、ヘヴィロックから生まれた新たな価値観と普遍性

タイムレスな魅力を放つ理由

その上で、2023年のいま聴いて興味深いのがアルバムの構成だろう。80以上の候補曲から絞り込まれた13曲36分という短めのパッケージは、ストリーミングサービスが普及して長尺のアルバムが敬遠されるようになってきた昨今の傾向にも非常によくなじむし、その上で曲の並びも非常に良い。今回の20周年記念盤には未発表曲「Lost」が収録されており、ミックスまで完成した上で外されたこの曲はクオリティ的には本編の13曲に引けを取らないのだが(今年2月10日にYouTubeに公開されてから2カ月で3300万回以上再生されている)、他の曲に比べるとエモーショナルな湿度は微妙に高めで、この曲を入れると全体の流れに少し起伏が増えることになる。その点において確かに外した方が完成度は高いのだろうし、アルバムの構成がいかによく考え抜かれているかということを逆説的に示してもいるだろう。様々な表情を見せながら淀みなく流れ、程よい余韻を残して冒頭からのリピートを喚起する。先述の歴史的な意義とはまた別に、個の作品として完成されている点においてタイムレスな魅力を放つアルバム。本作が大きな影響を与え続けることができた理由は、このあたりにもあるのではないかと思う。



そして、この20周年記念盤は追加収録のデモ(Disc2)やライブ音源(Disc3)もとても良い。例えば、本編には採用されなかった「Sold My Soul to Yo Mama」は、レゲエとヒップホップを混ぜた上でニューメタル的なアタックを加え引き締めた感じのグルーヴが面白いし、本編にも採用された「Faint」も、デモではシンセのループとポストパンク的なビートが初期のザ・キュアーを連想させるなど、決定稿としてのアルバムver.では見えづらくなっている隠し味的な要素を堪能できる。また、「Lying from You」のライブ音源では、アリス・イン・チェインズにそのまま通じるドゥーミーな引き摺り感とヒップホップ的なフロウ/バウンス感が理想的な融合をみせているし、ナイン・インチ・ネイルズのカバー「Wish」では、原曲のニュアンスを把握した上で滑らかさを増したグルーヴ表現がとにかく素晴らしい。このバンドの地力と創意を様々な角度から知ることができる充実したパッケージ。未聴の方はこの機会にぜひ手に取ってみてほしい。









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<INFORMATION>


『Meteora: 20th Anniversary Edition/メテオラ: 20周年記念盤』
リンキン・パーク
ワーナーミュージック・ジャパン
発売中
https://linkinparkjp.lnk.to/Meteora_20

3CD国内盤: https://wmg.jp/linkin_park/discography/27468/
Super Deluxe Box Set: https://wmg.jp/linkin_park/discography/27433/

リンキン・パーク オフィシャルHP:https://www.linkinpark.com/
リンキン・パーク Discord:https://discord.com/invite/linkinpark

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