マイケル・マクドナルドが語る、ドゥービー・ブラザーズ来日と知られざる音楽遍歴

 
サンダーキャットとの邂逅、ドゥービーが長く愛され続ける理由

―あなたはサンダーキャット、グリズリー・ベアなど、若手の優れたミュージシャンたちとも積極的に共演してきましたよね。彼らとの作業から、どんな刺激を受けましたか?

マイケル:とてもいい刺激をもらったよ。タイミング的にも実に良かった。人って年をとってくると、どんな活動を行なっていた者も……僕の場合はミュージシャンな訳だが、自分にはこのまま続ける価値があるんだろうか?と自問するようになるものなんだ。だから彼らのような若い連中に「曲に参加してほしい」と声をかけられるのは、とても嬉しかった。しかも一緒にやってみて、共通点が多くあることに気づかされた。サンダーキャットを紹介してくれたのはケニー・ロギンスだったが、スティーヴン(・ブルーナー、サンダーキャットの本名)の音楽は初めて聴いた瞬間から、すぐに共感することができた。彼のやりたいことがわかったし、ハーモニーやメロディのセンスを感じた。何より、その頃聴こえてきたどんな音楽とも違う、自分だけの世界を持っている点に惹かれたんだ。

スティーヴン・ブルーナーが面白いのは、コンピューターの世界の中で音楽を作ってしまう点だ。彼が使ってるプログラム名はど忘れしてしまったが……空港の待合室に座ってフライトを待つ間も、彼は音楽を作ってる可能性が大きいよ。そうやって彼の曲は生まれるのに、それをリズム・セクションを伴ってライブで演奏するとなると、全く違うアンビエンスやフィーリングとパワーを持つものに生まれ変わるんだ。彼とは何度か一緒にライブをしたが、彼の曲はライブで演奏されるべくして作られた曲なのだとわかったよ。レコードでも好きだったが、ライブで聴いてぶっ飛んだ。特にライブで、腕の立つミュージシャンらによって演奏される時に曲が生み出すパワーはすごい。彼のライブは100%生音だ。テンポも何もかもドラマーが実際に叩き、コンピューターは一切使ってない。それでいて物凄いパワフルなんだよ。



―人種の壁を超えた、音楽的に幅広くアメリカン・ミュージックを総合したドゥービー・ブラザーズの作品は、とても先進的だったと思います。それゆえに、今でもこれだけ多くの人々に愛されていると思うのですが。あなた自身は、ドゥービーズの人気が続いていることについて、どのように見ていますか?

マイケル:一言では言えないが……何事にも浮き沈みはあるわけで。80年代に台頭してきた新しい音楽によって、ロック・メンタリティが復活する中、ドゥービーズには冷ややかな目が向けられた時期があった。実際、“ヨット・ロック”という称号を獲得したわけだがね(苦笑)。そういう意味じゃ、あの時期は人気も下火というか、波の低いところを漂っていた。ところが90年代後半以降、また僕らの音楽が聴かれるようになり、新しいオーディエンスもつくようになった。それってどういうことなのか、よく考えたりしたよ。

以前、移動中のDoobie Liner(自家用ジェット)の中で、パット・シモンズと「30年代、40年代にコール・ポーターやアーヴィング・バーリンが書いていたような音楽が、また流行し、聴ける日が来るんだろうか?」という話をしたことがあった。ところが、その会話の1年後、リンダ・ロンシュタットがネルソン・リドルとのアルバム(『What’s New』)を大ヒットさせた。同じことが、僕らの70年代のアルバムにも言えたのかもしれない。ジェイムス・テイラーなどと並んで、ドゥービーのアルバムもナンバーワンを獲得し、人気を博したが、80年代に入ってから僕らは成功からは遠いところにいた。でもそこから盛り返してまた人気が復活してきたようだが、またいつ支持を失うかもしれない。少なくとも、僕らがやってきたことは誰かには聴かれているし、意味があるようで……それで十分だとありがたく受け止めている。

70代という自分達の年齢を考えると、今回っている会場の規模でこの齢までやり続けていられるなんて、若い頃には夢にも思っていなかった。オーディエンスを前にして、今もこうやって演奏ができることを、僕もバンドもとても喜んでいるし、感謝している。これは僕だけじゃなく、バンド全員の気持ちだよ。


ドゥービー・ブラザーズの最新作『Liberté』(2021年)収録の「Better Days」




The Doobie Brothers 50th Anniversary Tour
2023年4月15日(土)盛岡・岩手県民会館
2023年4月17日(月)東京・日本武道館
2023年4月18日(火)パシフィコ横浜 国立大ホール
2023年4月20日(木)名古屋・日本特殊陶業市民会館 フォレストホール
2023年4月22日(土)金沢歌劇座
2023年4月24日(月)、25日(火)大阪・フェスティバルホール
2023年4月27日(木)広島上野学園ホール
公式ページ:https://udo.jp/concert/DoobieBros23



ドゥービー・ブラザーズ
紙ジャケット・コレクション~MQA-CD/UHQCDエディション
(完全生産限定盤)
全10作品/2023年4月5日発売/各税込3,000円
解説・歌詞・対訳付/全作品ハイレゾCD(MQA-CD/UHQCD)仕様
詳細:https://wmg.jp/doobiebros/news/88488/
購入:https://warnermusicjapan.lnk.to/DB_10albums

Translated by Kyoko Maruyama

 
 
 
 

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