チャーチズか語るステージ演出とホラー映画、小島秀夫との交友、10年の節目

チャーチズのローレン・メイベリー(Photo by Sotaro Goto)

 
1月11日(水)に東京・Zepp Haneda、12日(木)に大阪・なんばHatchと、“13日の金曜日”を目前に控えた最高のタイミングで同作を引っ提げ、2019年のサマーソニック以来となる約4年ぶりの来日公演を実施したチャーチズ(CHVRCHES)。3人のパフォーマンスを見ていて感じたのは、10年を超える年月とホラー映画をテーマとした『Screen Violence』という傑作を作り上げたことによって培われたであろう、バンドが持つ「芯」の力強さだった。

幾重にも編まれたシンセサイザーやギターのレイヤーによって緻密に構築されていた楽曲の数々が、イアン・クックとマーティン・ドハーティがシンセ/ギター/ベース(マーティンは更にボーカルも)をパートごとに忙しなく切り替えながら(ほぼ)人力で再構築され、ローレン・メイベリーの力強く美しい歌声とパフォーマンスとともに、音源を凌駕するサウンドスケープを誇るポップ・ソングとして会場全体に広がっていく。アルバムのビジュアルを手掛けたスコット・キアナンも関わったというステージ演出は、どこか不穏さを感じさせる光と色使いによってステージにクールな緊張感をもたらし、数曲ごとに(やはり忙しなく)切り替わっていくローレンの鮮やかな衣装とともに、会場のムードを絶妙にコントロールしていく。それはバンドの持つビジョンに一切のブレが無いからこそ実現できるであろう、まさに圧倒的なパフォーマンスだった。

ライブ終盤、自ら「FINAL GIRL」と書かれたTシャツを身に纏ったローレンは、大量の血糊を浴びたグロテスクな姿で観客の前に登場し、至高のダンス・アンセム「Clearest Blue」によってこの日を盛大なダンス・パーティーで締め括った。ホラー映画のファンであれば、これが紛れもないハッピーエンドであることが分かるだろう。今回の来日公演は、まさにチャーチズにとっての一つの集大成であり、今のバンドだからこそ描くことができる「原点の先」を示した記念すべき瞬間でもあったのではないだろうか。

そんな圧巻のライブの前日、来日したばかりというチャーチズにインタビューを実施した。パンデミック以降初となるツアーの感想や、今回のステージ演出に込められた意図、小島秀夫との交友、10年以上に渡ってバンドを続けてこれた理由について語ってくれた。ちなみに、2月24日には早くも新曲となる「OVER」をリリース。『Screen Violence』で描かれた恐怖に対する「一時の猶予」であるという同楽曲を経て、3人はまた新たな物語を描いていくのだろう。



ー久しぶりのツアーはいかがですか?


ローレン : パンデミックの期間中、これからどうなるのか分からないまま手探りで進めてきましたし、『Screen Violence』を制作していた時点でも実際にツアーができるかどうかは分かりませんでした。だから、まずは何よりもこうしてツアーが実現したこと自体がとても嬉しいですね。

オンラインを通してファンの皆さんと交流して、アルバムについてポジティブな感想をいただくようなことはあって、それはもちろん嬉しかったのですが、やっぱり同じ空間の中でお互いに正面から向き合って、ちゃんと曲に対する反応が得られるというのは何ものにも代えがたいですから。

ー今回のツアー演出には、『Screen Violence』のビジュアル全般を手掛けたスコット・キアナンも参加していますよね。あの世界観を実際に体験できるのがとても楽しみです。

ローレン : 今回の作品は今までのアルバムよりも具体的な内容になっているので、その世界観を更に掘り下げることができたのは良い経験でしたね。みんな、一度はホラー・アルバムを作ってみたいだろうし、した方がいいと思うんですけど……。

イアン : そう?

ローレン : そうだよ!(笑)だから、すごく楽しかったし、充分に時間もあったので、色々考えながら、長年一緒にやってきている照明のデザイナーの人たちとも話し合いながら、それぞれの曲のテーマに合った演出を作り上げていきました。これまでの作品よりも明確にビジュアルの方向性があって、それをしっかり反映したものになっていますし、よりパフォーマンス性の強い内容になっていると思います。もう1年ぐらいツアーを続けてきて、完璧な、最高の仕上がりになっているので、日本のファンは一番いい状態で見れるんじゃないかな(笑)。もう準備万端ですよ。


2023年1月11日(水)東京・Zepp Hanedaにて(Photo by Sotaro Goto)


Photo by Sotaro Goto

ー今回のツアーでは、アルバムのテーマに合わせて『ビートルジュース』や『キャリー』といった様々なホラー映画にインスパイアされた衣装を着てパフォーマンスを披露されていますよね。あの衣装はどのように決めていったのでしょうか?

ローレン : 衣装を決めていくのはとても楽しかったですね。ライブ自体もそれに合わせていくつかのセクションに分かれているんですけど、まずはアルバム自体に赤・緑・青の色のテーマがあって、それぞれの楽曲や映像もそれぞれの色を持っていたので、それをなぞりながら、その中に『ローズマリーの赤ちゃん』とか色々なイースターエッグを織り交ぜていきました。ファンは色々な衣装自体を楽しんでくれるだろうし、もしホラー映画オタクだったら、きっと「あれは、あの作品に違いない!」って分かるんじゃないかなって。まぁ、もしみんなが分からなくても、自分が楽しいからいいやって思っていたんですけど(笑)。実際、SNSなどでファンからのたくさんの反応があって、すごく嬉しかったです。

先日、TikTokで種明かしをしたら、ファンから「これはあの作品だよね」と言われて、「いや、それはちょっとそこまで考えてなかったんだけど、まぁ、いっか」みたいなこともあったんですけど(笑)、それも含めて楽しかったですね。

ー「Final Girl」の衣装は、2013年のローレンさんご自身がモチーフであるとTikTokで語っていましたよね。

ローレン : そうですね、バンドを始めたばかりの頃はみんな今とは違うファッション・スタイルで、私はよくタイツとカットオフデニムとTシャツを着ていたんです。「Final Girl」はそんな当時のバンドや自分の状況をとてもよく表した曲だと思うし、あと、ホラー映画では毎回、他の登場人物が死んでも最後まで一生懸命逃げていて、「この子には生き延びてほしい」っていうふうに思う、応援したくなる女の子がいて、それを当時の自分になぞらえるっていう……ちょっと自己満足かもしれないんだけど(笑)、そういった意味も込めて、あの曲ではあの服を着ています。バンドの歴史やこれまでの歩みと、ホラー映画を掛け合わせるというのが今回のアルバムのテーマになっているので、ライブでもそれを反映していますね。

Translated by Yuriko Banno

 
 
 
 

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