アジカンが振り返る『NARUTO』が繋げた海外への道

―「宿縁」は、今挙がった「遥か彼方」や「リライト」といったアジカンがこれまで作ったアニメ曲が持つような疾走感がありつつも、今のアジカンでそういったアプローチをやる最適解な感じがすごくしたんですけど、そういったことは後藤さんは意識したんでしょうか。

後藤:でも、疾走感ってもうお題なんですよね。ポストを開けたら“疾走感”って書いてあるみたいな(笑)。なのでそのお題に答えつつ、どうやって自分たちらしい新しさや、飽きずにいられるための何かを見つけられるかっていうのはこういう仕事を引き受けることにおけるひとつのテーマですね。「こんなもんでしょ?」って出してもわかるので、そうせずに毎回みんなで悩む。「テレビで流れるのは90秒だから、それをどこにしようか」とか。それは日本ならではの音楽の作り方ですし、どうやって作品のためだけじゃない形で成り立たせされるかはすごく考えます。だから、毎回問われるし、自分たちのことを客観視できますね。そういう引き裂かれ方をしてこその表現なんじゃないかなって気もするし。何を成し遂げてこれたのかはわからないけど、すごくいい勉強になります。毎回、「こういう経験ができるのは良かったな」と思います。



―「宿縁」はサウンドとしてはパワーポップを成熟させたような印象も受けましたが、何かイメージはあったんでしょうか?

後藤:パワーポップよりはもうちょっとアメリカンロック寄りのイメージでした。グランジとか。まあ、これに関しては好きなことをやればいいかなっていう気持ちがありますね。配信のプラットフォームの聴かれ方に合わせて音楽を作る必要もないし、結局流行りを追いかけていくと、ずっと流行りについて行かなきゃいけないし、ずっとちょっと古いみたいなことになるから。だから、自分たちがちゃんとテーマを持って貫いてこそという気持ちがあります。バンド音楽はなくならないと思いますし、ギターロックなんてイギリスと日本でしか聞かれてないみたいなことも言われますけど、音楽はユニバーサルなものでないといけないわけじゃないし、別にいいんじゃない?って思います。俺たちはこの曲を持ってまた南米とかに行くと思いますし。ケンドリック・ラマーの最新アルバムとか、流行りの音でもないけど、50年先も聴かれるようなもので。凄みのある方が結局オリジナリティがある。あとひたすら曲と音が良いもの。そういう方向を自分たちが目指すと、意外とシンプルなところに戻ってくる。自分たちの演奏をしっかりして、それをなるべく良く録る。そこでちゃんと現在と未来を見ているっていう開き直りが最近あるかもしれないです。『プラネットフォークス』も、昔のやり方のまま録ってミックスしてるだけだったら、ある種の特異性は出せなかったかもしれないけどそうじゃない。自分たちなりの歩みを進んでこれているからこそ、面白い形に持っていけているってことはすごく思います。ここ10年とかで考えたこと、学んだこと、練習したことが音楽になってるんじゃないかなって。偶然、良い音になることはないんですよね。ドラムの音も、叩けてないと良い音は出ない。いろんな仕事をしてみてそういうことがわかりました。「何でこのバンドの音は良いんだろう?」って思う時って、突き詰めると演奏が良いってことに行き着くんですよ。

Rolling Stone Japan編集部

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