宮本浩次、東京ガーデンシアターで観客を魅了したカバーコンサート「ロマンスの夜」

第2部ではセットがシンプルに変わり、シアトリカルな照明が映えるステージに。客席が待ってましたとばかりに大きく拍手したのは「翳りゆく部屋」だった。2008年、エレファントカシマシのアルバムに収録された初のカバー曲。神々しい照明の中、渾身の歌唱に、当時の衝撃を思い出す。宮本の歌はずっと前から私たちの胸を打ってきた。それはずっと変わっていない。カバー曲を歌う時の原曲への敬意も、当事者として歌う誠実さも、全身全霊で歌う姿勢も変わっていない。歌い終えると会場は、感嘆のため息と余韻に包まれていた。宮本の歌が今、大きく広がって届いているのだと目の当たりにした瞬間だった。



「異邦人」ではすっかりロックのライブの様相に。ステージの端から端まで何度も往復し、客席を指さし、語りかけ、シャウトする。アウトロの演奏陣の大セッションは鳥肌ものだ。そこから「ロマンス」「DESIRE -情熱-」と派手派手の照明でハードに決めていく。客席は総立ち、大きな手拍子。宮本は高揚し、シャツをはだけてボタンをバリバリと飛ばす。シャウトはやはりこの人の真骨頂だ。

驚いたのは「飾りじゃないのよ 涙は」で、神戸公演では見られなかった、女性ダンサー2人が参加。白シャツに黒スーツ、音に合わせて激しくクールなコンテンポラリーダンスを繰り広げる。圧巻だったのは曲の終盤で2人が退場する場面。左右に分かれ、一人は下手に、一人は上手に、真っすぐ進行方向を見つめ胸を張って悠々と去っていく。宮本は、2人をたたえるように両手を広げる。まるで、今夜披露した歌の主人公たち全員をたたえているかのような粋な演出だった。

Rolling Stone Japan 編集部

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