ジョイス・ライスが語る90年代R&Bへの愛、日本のルーツ、シンガーになるまでの物語

ジョイス・ライス(Photo by Lea Winkler)

 
アフリカンアメリカンの父と日本人の母を持つLA拠点のシンガーソングライターで、2021年のデビューアルバム『Overgrown』がR&Bファンから絶賛されたジョイス・ライス(Joyce Wrice)が、10月8日(土)にビルボードライブ東京、10月11日(火)にビルボードライブ横浜で初の来日公演を行う。彼女のことを改めて知るべく、米ローリングストーン誌のインタビューをお届けする。


ジョイス・ライスの『Overgrown』は、2022年の私たちが欲している清々しい屋外の空気のような作品だ。南カリフォルニアのシンガーがリリースしたデビューアルバムは、アリーヤ、ブランディ、マライア・キャリーら90年代後半〜2000年代初頭のシーンを代表するR&B作品に慣れ親しんだファンをも魅了する。同時に、いま正に勢いに乗るアーティストらをゲストに迎え、モダンなソングライティングを採り入れた作品に仕上がっている。

制作にあたっては、シルク・ソニックやジャネット・ジャクソン、メアリー・J・ブライジとコラボした実績を持つエグゼクティブ・プロデューサーのDマイルや、彼女のA&Rを務めるエディ・フォーセルらがバックアップした。このアルバムは、イントロからテンションの高まる「Chandler」に始まり、フレディ・ギブスをフィーチャーしたノリの良いダンスナンバー「On One」、プロトタイプ的といえるヒップホップ・ソウル「Westside Gunn’s Interlude」まで、彼女の身に最近起きたハートブレイクな出来事や人間関係をテーマにした数々の楽曲が収められている。



ジョイスは、自分が納得のいく作品に仕上がるまでいくつものハードルを越え、長い時間をかけてアルバムを完成させた。「最後までやり遂げられないだろうと思う自分と、本音ではリスクを冒したくない、と思う自分がいた」と彼女は言う。

カリフォルニア州チュラビスタ(サンディエゴ郡)で日本人の母とアフリカンアメリカンの父との間に生まれたジョイスは、幼少期をほとんど母親と一緒に過ごした。ルイジアナ州シュリーブポートに生まれ、ミシガン州フリントで育った彼女の父親は、海軍の一員として日本に配属された時に、後にジョイスの母親となる女性と出会う。父親が任務で各地を転々とする間、ジョイスと母親はサンディエゴで暮らした。チュラビスタには仏教徒のコミュニティがあり、2人はよく通ったという。



一人っ子のジョイスは、日本人向けのサタデースクールに通ったり母親と一緒に仏教徒の集まりに出かける以外は、一人で過ごすことが多かった。彼女が音楽との関わりを深めたのはその頃だった。「音楽は私の初恋の相手であり、親友でもある」と彼女は言う。「実際には存在しないけれど、兄弟姉妹のようでもある」

時間を見つけてはミュージックビデオを観て過ごした彼女は、ミッシー・エリオットやタミアに夢中になった。子ども時代の音楽に関する思い出は、父親の運転する車の中でノトーリアス・B.I.G.と112の「Only You」を聴いたこと。7歳になった彼女はよく、いとこのDJに合わせてフェイス・エヴァンスなどR&Bの名曲を歌った。その後ジョイスは、アートスクールに通うことを検討したり、特別支援学校の教師になろうかとも考えた。「両親からは、『あなたは法律家になりなさい』と言われていた」と彼女は振り返る。「(2人とも)歌ったり踊ったりは、単なる趣味だと思っていたみたい」

Translated by Smokva Tokyo

 
 
 
 

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