西岡恭蔵とKURO、世界旅行をしながら生み出した楽曲をたどる

田家:「J-POP LEGEND FORUM 西岡恭蔵」、今年がソロデビュー50周年、西岡恭蔵さんの軌跡を小学館から発売になった本『プカプカ 西岡恭蔵伝』の著者、ノンフィクション作家・中部博さんをゲストにたどり直してみようという5週間。今週は3週目です。流れているのはこの番組の後テーマ、竹内まりやさんの「静かな伝説」です。



70年代の若者の憧れとか夢とか生き方の1つの特徴に、日本を脱出するというのがあったのではないでしょうか。これは60年代からももちろんあって、小田実さんの『何でも見てやろう』という本がベストセラーになったりしたのですが、あの本は高度成長に向かう日本の若者たちが「さあ、世界を見に行こう」というとても前向きな海外志向だった。70年代の若者たちの日本脱出は、そういう健康的なものではなかったような気がしますね。日本に幻滅したとか、日本にいたくないとか、俺にはもっと違う何かがあるのではないかみたいな、日本を捨てるみたいな気分があった。中島みゆきさんの「永遠の嘘をついてくれ」はまさにそういう歌でもあるんです。はっぴいえんどの3枚目のアルバムの最後が「さよならアメリカ さよならニッポン」で、僕らには帰るところがない、無国籍なんだということで旅に出ていく。寄る辺ないまま旅に出ていった、そういう旅人志向、吟遊詩人願望が多かったのではないかと思うんです。

それを国内で形にしたのが、作詞家の岡本おさみさんで、海外を旅したのが加藤和彦さんや安井かずみさんの夫婦だったわけですが、恭蔵さん夫婦は1番吟遊詩人的でロマンチックだったんじゃないかなというのが今週の感想ですね。バックパッカー的、ヒッピー的、加藤和彦さん安井かずみさん的なセレブな旅ではなくて、現地の空気に入り込んで、現地のミュージシャンと一緒に音を出して音楽を楽しんで、そこで作品を書くという、理想的な吟遊詩人。矢沢永吉さんの「トラベリン・バス」は、恭蔵さんの1つの旅の考え方でもあったんでしょうね。激動の70年代をそんなふうに激変しながら走り抜けた2人、そのお2人がどうなっていったのかというのが来週のテーマでもあります。世の中が思いがけない方向に行きました。その中で2人は何を考えたんでしょうか。


書籍『プカプカ 西岡恭蔵伝』表紙



<INFORMATION>


田家秀樹
1946年、千葉県船橋市生まれ。中央大法学部政治学科卒。1969年、タウン誌のはしりとなった「新宿プレイマップ」創刊編集者を皮切りに、「セイ!ヤング」などの放送作家、若者雑誌編集長を経て音楽評論家、ノンフィクション作家、放送作家、音楽番組パーソリナリテイとして活躍中。
https://takehideki.jimdo.com
https://takehideki.exblog.jp

「J-POP LEGEND FORUM」
月 21:00-22:00
音楽評論家・田家秀樹が日本の音楽の礎となったアーティストに毎月1組ずつスポットを当て、本人や当時の関係者から深く掘り下げた話を引き出す1時間。
https://cocolo.jp/service/homepage/index/1210

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Rolling Stone Japan 編集部

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