スネイル・メイルの真実 USインディーの若き主役が語る「挫折と再起」

リンジー・ジョーダンの素顔

クロイスター美術館を初めて訪れたリンジーは、ユニコーンの寓話をもとに1495年頃に作られた精巧なタペストリーを、「本当に惹き込まれる感じがした」と特に絶賛した。罪のない神話上の生き物が、残虐で乱暴な人間たちに捕らえられ、殺害される運命を描いた作品だった。

美術館を出てリバーサイド・ドライブを歩きながら、リンジーは「マクドナルドは好き?」とか「どのコーヒーメーカーが好み?」と、ファストフードやコーヒーについて立て続けに質問してきた。私たちはスターバックスに立ち寄り、彼女はミディアムブリューに、アーモンドミルクとパンプキンスパイスシロップ1ポンプで注文した。「一日中いつでもコーヒーを飲むのが楽しみ」と言いながら、彼女は自分のコーヒーにパンプキンが入っていないことに気づく。恥ずかしがって言い出せないリンジーに代わって、筆者がバリスタに追加を頼んだ。「デュード、ありがとう!」という彼女の言い方が、SFコメディシリーズ『ビル&テッド』を思い起こさせた。



A列車に乗ってロウアー・イースト・サイドにある彼女のアパートメントへ向かう途中、リンジーは早く眠りたいと言った。最近の彼女は、付き合って4カ月になるガールフレンドとおしゃべりしながら居眠りしてしまうほど、疲れ切っていた。「会話の途中でもグーグー寝てしまいそう」と笑う。「『ねぇ、わたしが喋っているのよ!』という感じ。自分がナルコレプシー(過眠症)にかかっているのではないか、と思うほどだった。ベッドで横になった途端に、ぐっすり眠れるの」

リンジーは、自分たちを認めてくれるアーティストとして尊敬の眼差しで見てくれている、同性愛者のファンの存在を喜んでいる。「自分の私生活をオープンにする理由があるとすれば、それは誰かに『わたしも』と共感の声を上げてもらいたいからよ」と彼女は言う。「わたしはまだ若いし、経験も少ない。将来のロッカーたちがいろいろな経験をできるようになったのは、本当に幸せなことだと思う」

当初は持ち得なかった新たな知識や経験を、今の彼女は備えている。「『Lush』は、『これらがわたしの恋のやり方だ』という、すごく切ない作品だと思う」とリンジーは言う。「愛することを夢見ていたのね。一方の『Valentine』では、リアルに経験した喪失感や、大人の心の痛みが多く歌われている。わたしの今の心境にぴったりはまる感じ」と言いながら少し考えて、「ドラマチックな感じね!」とリンジーは声を上げた。

From Rolling Stone US.




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Translated by Smokva Tokyo

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