パンデミックとBLMの2020年、世界のメディアが選んだ年間ベストから見えてくるもの

BLMに呼応したラン・ザ・ジュエルズ『RTJ4』

BLMに呼応した作品としてもっとも評価が高かったのはラン・ザ・ジュエルズ『RTJ4』。BLM再燃の真っ只中に発売日を前倒して緊急リリースされ、警察の暴力や構造的差別のシステムを糾弾した本作が2020年を象徴する一枚であることは疑いの余地がない。これはNMEなど5媒体で1位を獲得した。

Run The Jewels – RTJ4


また、イギリスからのBLMに対する応答と位置付けられるSAULT『Untitled (Black Is)』も高い評価を得た。イギリス発のブラックミュージックはなかなかアメリカで評価を得るのが難しいが、このアルバムはRough TradeやBBC 6 Musicといった本国イギリスのメディアだけでなく、アメリカのNPRも1位に選んだことは特筆に値するだろう(計8媒体で1位)。

SAULT - Untitled (Black Is)


インディロックのアーティストに目を向けると、今年はフィービー・ブリジャーズ『Punisher』が圧倒的な高評価。11媒体で1位を獲得し、さらにはPitchforkで4位、NMEやThe FADERで5位と有力メディアからも推されている。ローリングストーンが評するところの、「内省的で荒涼とした、20代特有の心象風景を描くソングライティング」が多くのメディアで支持された形だ。

Phoebe Bridgers – Punisher


それ以外だと、フリート・フォクシーズ『Shore』やワクサハッチー『Saint Cloud』など、アメリカーナをモダナイズしたサウンドを打ち出してきたアーティストも上位にランクイン。今年はUSインディが批評的にも作品のクオリティにおいても復調を見せた年だったと言えるかもしれない。

Fleet Foxes – Shore


Waxahatchee - Saint Cloud


ベテランでは、ボブ・ディラン『Rough And Rowdy Ways』が圧勝。UncutやMojoといった読者の年齢層が高いメディアで1位を取っただけではなく、Rolling Stoneで4位、Pitchforkで6位など主要メディアでも評価が高い。やはり世界中がパンデミックで混沌を極める中、唐突に(思える形で)63年のケネディ暗殺事件についての曲を放り込んで人々に考えさせたのは、あまりにディランらしい鮮やかさだったのだ。

Bob Dylan - Rough And Rowdy Ways


Edited by The Sign Magazine

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