ブライアン・イーノを今こそ再発見 アンビエント/ポップの両側面から本質に迫る

ブライアン・イーノ(Courtesy of ユニバーサルミュージックジャパン)


ポップとシリアスを横断するイーノの分裂性

よく言われてきたように、イーノは、アンビエント(シリアス)とポップを横断する分裂的なアーティストだとされる。それをあらためて言い換え得るなら、理知的コンセプトと(ロック的)肉体性との拮抗/分裂、とすることができるだろう。

これは彼の若かりし頃の遍歴を参照すると分かりやすい。サフォーク州ウッドブリッジでの少年時代に触れた米国産の躍動的音楽(ドゥ・ワップやロックンロール、ビッグバンド・ジャズ等)を愛し続けながら、その後イプスウィッチとウィンチェスターのアートスクールにおける教育を通じてポップ・アート/コンテンポラリー・アートの思想/方法論を学んだというイーノの経歴は、そっくりそのまま彼の音楽表現における拮抗/分裂と重なりあっている。だからこそ、当時のグラム・ロック・ムーヴメントというのは、彼本来のそうした二面性を擬制的に注入する対象としてこれ以上無いものだったのだろう。

そう考えていくと、彼の発案したアンビエントというコンセプトと一連の作品についても、これまでの一般的理解とやや趣の異なる感想が導き出されてくる。一見シリアスな実践にみえるアンビエントも、その実、他の現代音楽プロパーの作家達による静謐なドローン作品などとくらべてみると、極めてポップ(ときに主情的にすら)に響いてくる。ここに見いだされるのは、いわば、「コンセプトを再度消費財として包装し直す態度」だ。このコンセプトの「リパッケージ」というべき手付きこそが、彼を他と分ける特異なアーティストにしてきた最大の要素であろうし、たとえどんなにしかめ面の(ように見える)音楽を送り出してもなお、彼の音楽から「ポップ」の虹彩が絶えることがない要因だろうと考える。



概念を磨き上げて芸術として固有に屹立させるのがノン・ポップのシリアスな作曲家達だとしたら、消費社会以降のポップ・アート感覚を引き受けた上で、概念を食べやすい大きさに切り分けて、クールな包み紙に入れて(大衆にも手の届く価格で)郵便してくれるのが、ブライアン・イーノという人なのだ(アンビエント・シリーズのデザイナブルなジャケット・パッケージを見よ)。これも、グラム・ロック的やり方とは逆側からアプローチした、拮抗/分裂といっていいだろう。

映画音楽を手掛けるにしても、時折思い出したようにヴォーカルを聴かせようとも、また、自らの据えたアンビエントを磨き上げるにしても、彼の音楽にはこうした自覚的な「キッチュ」の輝きがある。それは「ポスト・モダン」や「メタ」という使い勝手の良いタームを超えて、というか、本来それらの語が持つ意味にもっとも密着的であるがゆえに、常に真摯な実践でありつづけているように思う。

いわば、安定的に分裂的である人、ブライアン・イーノ。ポップで軽やかであるのに、決して「軽薄」とは切り結ばない。彼の音楽は、味わおうとするそばから常に、スルスルと指の間をこぼれ落ちてしまうようであるけれど、実はその滴る様子の鮮やかさこそが、長く我々を魅了してやまないのかもしれない。






ブライアン・イーノ
『フィルム・ミュージック 1976-2020』
価格:2,500円+税
購入・視聴:https://umj.lnk.to/brian-eno-filmmusicpr



BRIAN ENO CAMPAIGN
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さらに対象商品を6枚以上お買い上げの方に、抽選でイーノが70年代に考案したクリエイター必携アイテム『オブリーク・ストラテジーズ』をプレゼント。
応募〆切:2020年11月末日消印有効


対象作品
Eno/Cale - Wrong Way Up [Expanded Edition] (BRC-649)
Eno/Wobble - Spinner [Expanded Edition] (BRC-650)
Brian Eno - Another Day On Earth (BRC-128S)
Brian Eno - Small Craft on a Milk Sea (BRC-275S)
Brian Eno - Drums Between the Bells (BRC-298S)
Brian Eno - Lux (BRC-356S)
Brian Eno - The Ship (BRC-505S)
Brian Eno - Reflection (BRC-538S)
詳細:https://www.beatink.com/user_data/brianeno_campaign.php

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