フォークの新鋭クリスチャン・リー・ハトソン、フィービー・ブリジャーズとの共同作業を語る

『Beginners』は、ハトソンの温かみのあるヴォーカルと優雅なギターワークに潜んだテクスチュアを掘り起こし、まばゆいばかりの音の閃光を取り出している。それを達成できたのは、ブリジャーズ自身と、ブライト・アイズのNathaniel Walcott(トランペットの演奏だけでなく、ストリングのアレンジも全て手がけた)というゲスト・ミュージシャンのおかげでもある。

声をひそめて嘆くリードシングル「Lose This Number」で、ハトソンはソングライターとしての最大の強みの一つを披露している。それは歌詞に数多くの風変わりなディテールを注ぎながらも、リスナーそれぞれが自分に当てはめて考えられる余地を残すという稀な能力だ。曲全体を通してハトソンが「めちゃくちゃにしてしまって、もうどうしようもできない」と表現する、愛の試練に触発された彼のストーリーテリングは、痛烈なフレーズでつながっている(例えば、“まるで生まれた場所は銃弾の裏側だ そこに名前が書いてある”など)。




ありえないほど鮮やかな記憶に足を踏み入れたアルバム『Beginners』は、「Northsiders」で表現された優しいノスタルジアと控えめなユーモアの間を行き来している。「Northsiders」はハトソンによれば「ハイスクール時代、自分が何者なのかまだわからず、誰もが気取った態度を取っていた」ことを歌った曲だ(例えば歌詞にはこうある。“モリッシーの弁明者/アマチュア心理学者/連続的単婚者/みんな別々の大学へ行った”)。LAで成長する中でいつも感じていた違和感は、楽曲「Seven Lakes」で“僕もよく知る子供たちの日常的体験は、低年齢で更生施設へ入れられること”へとつながって行く。そして「Get The Old Band Back Together」ではなぜか楽しげな雰囲気が醸し出され、徐々に壮大な合唱へと移り変わって、Hutson自身の十代の頃の思い上がりを茶化している。

サンタモニカ出身の彼がギターを手にしたのは12歳のときだった。まもなく4トラックを使って自室でセルフレコーディングを開始した彼は、エリオット・スミスのようなアーティストのDIY能力に大いにインスパイアされていたという。ハトソンの世界はそこから大きく広がって行き、ボーイジーニアスの2018年のデビューEPで1曲、Better Oblivion Community Centerの2019年のデビューLPでは2曲を共同で手がけるまでになった(どちらのバンドでも、ハトソンはギタリスト兼サポートアクトとしてツアーに同行した)。昨年、彼がツアーでサポートしたアーティストには、ジュリア・ジャックリンやオッカーヴィル・リヴァーも含まれている。

『Beginners』のリリースで、ハトソンは意識的に行った感情の透明性に、観客が癒しを見つけてくれたらと願っている。「大丈夫なんだ、って感じてほしい。誰だっていつも失敗ばかりしているだろ。僕らは学びながら生きている、それだけで十分なんだ」とハトソンは言う。「信じていいのかはわからないけれど、僕はいつだって自分の人生にそんな声を求めていた」




クリスチャン・リー・ハトソン
『Beginners』
発売中
https://clh.ffm.to/beginners

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