Gラヴはなぜキャリア25年を経て、新境地を切り拓くことができたのか?

それから20年、2人の再会は2014年、ダブル・ヘッドライン・ツアーという形で突然、実現し、旧交を温めあう中で前述したようにデュオ・アルバムを作ろうという思いつきが今回の『ザ・ジュース』に発展していった。

『ザ・ジュース』にはラグモップの一言には収まりきらない全11曲(「ザ・ジュース(Reprise)」も含む)が収録されているが、それは、後述するように曲作りから曲のアレンジを含めたレコーディングまで、ケブ・モによる導きが大きかったんじゃないか――と想像していたら、Gラヴを待っていたのは、ケブ・モによるまさにシゴキだったんだからちょっとびっくり。

「ケブが“一番偽りのない5曲を送ってくれ”と言ったんで、ちょうど取り組んでいた曲の中から一緒にやるのにふさわしい曲を送ったんだ。“感想は?”って訊いたら、“おまえはソングライターと一緒にやるべきだ”って言われて、クソっと思ったけど、改善の余地があるんだったらそれもいいかなと思った。そもそも、彼と一緒にやりたかったのは、それが理由だったんだからね。“わかった。提案は?”と尋ねたら、“ナッシュビルに来い。ソングライターを紹介してやるから”と彼は言ったんだ」

そして、ナッシュビルに行き、改めてケブ・モのソングライティング・パートナーであるゲイリー・ニコルソンと曲を書き始めたところ――。

「ケブが気に入ったものもあれば、手直ししたいと思ったものもあった。歌詞に関しても、ケブがそのままでいいと思ったものと、”これはブルースじゃない“と思ったものがあった。彼はブルースに関して、とても具体的かつ確かなものを持っているんだ。だから、“その言葉やコードはブルースじゃ使えない“とか、“こういうふうにするんだ。そうじゃないとブルースじゃないから”とか言うわけ。そうやって調整して行ったんだ」



ソングライティング同様、ボーカルのレコーディングも、ケブ・モによるダメ出しの連続だったという。因みにデビューは同期でもケブ・モはGラヴの21歳年上。しかも、「ブルースの世界で彼は大御所だ。グラミー賞も獲りまくってるしさ!(グラミー最優秀コンテンポラリー・ブルース賞を4度受賞している)」とGラヴもそのキャリアを認めているんだから、覚悟を決めた以上は、彼の言うことに従うしかない。

「“違う。こうだ”“わかった。やってみるよ”の繰り返しが延々続いたんだ。毎日午前3時くらいまでね。なんてこった、俺は2人の年寄りと一緒にいて、彼らは70歳なのに午前3時までレコーディングしている! どうなってるんだ⁉って思ったね。翌日、俺がスタジオに行くと、“俺はおまえがここで仕事をしているのを見たいんだ”って言われたよ(笑)。ケブは俺を試していたんだな。俺がどれだけ彼と一緒に仕事をしたがっていて、プロデューサーとして、彼が俺に求めるものに、どれだけ応えられるか試していたんだよ。もしかすると、それは日本の昔のサムライがやっていたことに似ているのかもしれない。彼は俺のセンセイだったんだよ!」

ロックンロールの「シェイク・ユア・ヘア」、オーセンティックなブルース・ナンバーの「フィックス・ユア・フェイス」、デルタ・ブルース風の味付けを加えたノスタルジックな「シャイン・オン・ムーン」、そして、ニューオーリンズ・ファンクな「ドリンキン・ワイン」といった新境地と言える曲も含む全11曲は、ブルースの鬼と化したケブ・モのシゴキに耐えた成果と言ってもいい。


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