エレカシ、ミスチル、スピッツの「奇跡の共演」で見た三者三様の生き様

3月18日にさいたまスーパーアリーナで開催された『30th ANNIVERSARY TOUR "THE FIGHTING MAN" SPECIAL ド・ド・ドーンと集結!!〜夢の競演〜』(Photo by Katsumi Omori)


19時40分。客電が消える。2バンドと違い、SEなしでステージにメンバーが登場。宮本が無音の中、「よろしくお願いします」と一言だけ放ち、1曲目の「RAINBOW」がスタート。そして2曲目は「奴隷天国」。歌の中の“あくびして死ね 死ね”と吐き捨てる辺りも含め、宮本の迫力が尋常ではない。スピッツ、ミスチルの素晴らしい演奏、そして彼らのエレカシへのリスペクト、賛辞に宮本のスイッチが全開の感じだ。

エレカシには紅白歌合戦に出るほどのヒットと人気があるが、ヒットを生みだすバンドにはない無頼性が宮本にはある。そこがのっけから露出しいて、観ている側も“今夜は心の壁を全部ぶち壊して好きに楽しむぜ”と自然と不思議なスイッチが入る。

そして次の曲は「悲しみの果て」。ここはしっかり歌を届け、次には「星の砂」で再び宮本の無頼性が露わになる。

そこまでの4曲を一気に聴かせてMCへ。「ようこそエブリバデー。スピッツも、ミスチルも本当に素晴らしい演奏をありがとう。そしてみっともないところを見せてしまったけど、感激しちゃったんです。たまには喜んでもいいでしょ? エブリバデー」と歌そのままにハイテンションの宮本。興奮のあまりMCの内容は正直、支離滅裂な感じだったが、こういう時の宮本は手がつけられないくらい素晴らしいパフォーマンスをする。続く「風に吹かれて」「笑顔の未来へ」も圧倒的な演奏だった。

再びMCを挟み「桜の花、舞い上がる道を」を演奏し3度目のMCへ。スピッツとミスチルとの縁を語った。ミスチルを初めて観たのは94年のAAA(Act Against AIDS)のコンサートで、「innocent world」「シーソーゲーム」を生で聴いて涙を流したそうだ。

スピッツもロックフェスで一緒になったのが初めてで、そのフェスでスピッツが1曲目に演奏したのが「涙がキラリ☆」で、客席でその演奏を聴きながら涙を流したというぐらい宮本は同曲が大好きだそうで、「僕が好きなのを知っていて草野さん、今日『涙がキラリ☆』をやってくてたのかなぁ?』と相好を崩しながら言っていた。もちろん、宮本はライブで演奏を観る前からずっとスピッもミスチルも音源を聴いてきたそうだ。その理由を『勝手にですがライバルだと思っていたので』と宮本は照れながら語っていた。そんな宮本は「エレカシも彼らの曲を練習してきて今日披露すればよかった」と後悔していたが、「また一緒にやる機会があれば、その時はカバーを演奏します」と宣言し、大きな拍手が巻き起こっていた。

MC後は「風と共に」「ガストロンジャー」を連奏。「ガストロンジャー」での宮本は歌いながら客席にお尻を向けて「お尻出してブー」と子供ように客席を挑発する。

そしてMCで「いい顔してるぜ、エブリバデー!」と客席との距離をぐっと近づけると去年末の紅白歌合戦で歌った「今宵の月のように」を演奏し、その後は6月に発売されるニューアルバムに収録予定の新曲「Easy Go」というテンポも速く、言葉数がとてつもなく多い歌を全身全霊で歌い尽くした。

この曲を歌う宮本、そして前日の同会場でのワンマンライブを観て、改めて感じたことがある。少し話が反れるが、先日、『南方熊楠展』に行った。博物学者・南方熊楠が行った研究は決して体系的ではないが、兎に角圧倒的で打ちのめされた。もう少し具体的に言うと、熊楠の智へのエネルギーが圧倒的で、熊楠は兎に角、行動し、さわり、読み漁り、書き記しまくっている。その量が半端ない。死後100年近くが経つが、彼が残した「智」が今も揺るがないのは、頭の中で作ったものではなく、フィジカルを駆使して作られたからなのだと合点した。

エレカシもデビューから休むことなく全力で楽曲を作ってきた。「Easy Go」を含む6月6日リリース予定のニューアルバムは通算で23枚目のオリジナルアルバムだし、シングルは去年末にリリースされた最新作が50枚目だ。しかもその1曲1曲の歌詞は、言葉ひとつとっても生活の中から搾りだし、推敲に推敲を重ねていることがわかる。そして、そうした曲を演奏は圧倒的な集中力が必要であろう。

またライブの本数も圧倒的だ。メンバーの体調不良でできない時期もあったが、そうした特殊な状況を除いてはワンマン・ツアー、毎秋恒例の野音ライヴ、毎年恒例の新春ライヴを途切れることなく行っている。しかも、ライヴでも徹底的に肉体を使い音を出し、歌う。そんなライヴは1公演が3時間を超える。まさに熊楠のごときエネルギーで身体的だ。そんなエレカシの歌も100年経っても揺るがないであろう。それどころかそうしたバンド活動を30年、ひと時も手をぬかずやってきたがエレカシの歌は永遠に残るであろう、そう感じた。

本編最後の曲は「FLYER」。歌う前に宮本が「最高に幸せです!」と言葉を放ち演奏が始まった。前日には演奏されなかった曲に、ファンは大喜び。演奏が終わり、みんなに何度も手を振った後に再びマイクを手に取った宮本。感動的なMCを放つのかと思いきや、客にお尻を向け、「お尻出してブー」と叫び、着ていた白いシャツをはだけさせ、マイクを床に投げつけ本編が終了。日本ロック界を代表する無頼派といわれる宮本らしい締めだった。

そしてアンコール。まずはエレカシが登場する。宮本がMCでミスチル、スピッツへの感謝と敬意を表した。かと、思うと「カヴァーは昔の曲ばかりなんだなぁ」と言って笑いを誘う。

宮本の呼び込みでスピッツ、ミスチルのメンバー全員が登場。宮本が子供のようにはしゃぎながら桜井、草野とトークで絡む。草野が「久しぶりのトップバッターだったので緊張しました」と言うと、宮本は「最後に出る方が余裕ありますもんね」と返し、今度は桜井に「僕の歌どうでした?」と無邪気に聞く。桜井が「最高でした」と答えると「スイマセン、言わせてしまって」としきりに謝る。そんなやりとりを満員の観客は微笑ましく見守っていた。

そしてスピッツ×ミスチル×エレカシという奇跡の共演で「ファイティングマン」を演奏。

歌の最後に「エブリバデー、いい顔してるぜ。ドーンと行け!」と宮本が言い放ちエレカシ30周年記念のライヴの全てが終了した。

MCで宮本が言っていたが、3バンドともメンバーチェンジをせずにここまで走ってきたバンドだ。またいつかの日か共演を期待したいし、31年目に突入するエレカシに今まで以上の期待を寄せて6月6日発売のニューアルバムを待とうとしよう。

<セットリスト>
エレファントカシマシ
「RAINBOW」
「奴隷天国」
「悲しみの果て」
「星の砂」
「風に吹かれて」
「笑顔の未来へ」
「桜の花、舞い上がる道を」
「風と共に」
「ガストロンジャー」
「今宵の月のように」
「Easy Go」
「FLYER」

アンコール  
スピッツ&Mr.Children&エレファントカシマシ 「ファイティングマン」

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