2006年の『ラスト・マン・スタンディング』と2010年の『ミーン・オールド・マン』に次いで、ジェリー・リー・ルイスは最新作でも有名人の友達を招いて名曲を演奏してもらっている。ただし今回のアルバムには、オールスターものにありがちなデュエットはない。たくさんのスターが登場してはいても、決して大仕掛けなものではなく、ルイス自身の心が表現されているような、パーソナルな一作に仕上げた。ギターとバック・ヴォーカルはキース・リチャーズ、ロビー・ロバートソン、ニール・ヤング、ニルス・ロフグレンといった大御所プレイヤーたちに任せ、79歳のルイスは歌とピアノを披露する。レパートリーは、ブルースのスタンダード・ナンバーのほか、チャック・ベリーの曲や、かなりレアなボブ・ディランの楽曲「ステップチャイルド」など。

相変わらずノリノリなルイスは、サザン・ロックバンド、レーナード・スキナードの「ミシシッピー・キッド」やジョニー・キャッシュの「フォルサム・プリズン・ブルース」を男臭く熱唱する。だが60年間のキャリアのなかで、カントリーのトップ10を賑わせてきた彼が最も輝くのは、クリス・クリストファーソン作のタイトル曲や、酔いどれのつぶやき「Keep Me in Mind」といったゆったりした哀歌だ。特に後者は、長年の音楽仲間でもあり、数多くのカントリー・シンガーに名曲を提供してきたマック・ヴィッカリーの未発表曲で、“キラー”という愛称で呼ばれてきたルイスが、60年代終盤にレコーディングしたナッシュヴィル・バラードの数々を彷彿とさせる。タイトルこそロックンロールだが、ルイスが実はカントリーのヒット・メイカーだったことを、改めて気づかせてくれるアルバムだ。

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