「Bonobo presents OUTLIER」至高のオールナイトイベントに絶対行くべき7つの理由

2023年1月15日、渋谷Spotify O-EASTで披露されたボノボのDJセット(Photo by Tadamasa Iguchi)

エモーショナルでシネマティックなエレクトロニックミュージックで日本でも人気のボノボが主宰し、自らゲストのキュレーションも務めるオールナイトイベント「Bonobo presents OUTLIER」が5月17日(土)に日本初開催される。会場は渋谷のSpotify O-EAST~duo MUSIC EXCHANGE~東間屋。3ステージを繋いでの同時開催だ。主宰のボノボを筆頭にソフィア・コルテシスやケリー・リー・オーウェンスなど、DJのラインナップも豪華絢爛。このスペシャルなイベントの開催を前に、その見所や背景の紹介を7つの切り口からお届けする。




1. ボノボは静かに世界を制したビッグネーム


ボノボ(Photo by Grant Spanier)

まずは、主宰者ボノボの海外での立ち位置を改めて押さえておきたい。もし彼のことをただのベテランの中堅と思っていたら大間違い。Mix Mag誌は2017年の時点で、「ボノボはひっそりと、こんにちのダンスミュージックでもっともビッグなアクトになった」と評している。

「もっともビッグ」と断言するのは語弊があるかもしれないが、ボノボがれっきとしたビッグネームであることは間違いない。直近のアルバム二作、『Migration』(2017年)と『Fragments』(2022年)はともに全英5位。ロンドンでは単独で2~3万人の観客をコンスタントに動員できるアリーナアーティストである。


「Bonobo Boiler Room London」、会場はAlexandra Palace(キャパ1万人)

アメリカでも熱心なファンベースを持ち、アリーナ~ホールツアーを周れるほど。アルバムはビルボード総合チャートに二作ランクインし、グラミー賞には7回ノミネート。2010年代のEDMなど大会場向けにポップ化した音楽を除けば、欧州のダンスアクトがアメリカでこのように成功するのは稀だろう。

上の引用でMix Mag誌が「ひっそりと(quietly)」と表現したように、ボノボはハイプな音楽トレンドに一度も乗ることなく、ライブや作品の完成度の高さが口コミで地道に広がったことで、世界的なビッグネームにまで上り詰めた。こうしたユニークな成功の軌跡を描くダンスアクトは、ほかになかなか思い当たらない。その意味において、ボノボは唯一無二の存在である。


2022年のロイヤルアルバートホール(キャパ7000人)公演は5デイズ開催


2. クラブ音楽の「外れ値」を祝福するOUTLIER

OUTLIERはそんなボノボが2015年にはじめたクラブイベント。自身がキュレートした豪華ゲストを迎え、ロンドン、ベルリン、ニューヨーク、パリ、シドニーなど、世界中で開催されている。2024年4月の本校執筆時点での最新回は、ロンドンのIKEA跡地に出来た新しいメガベニュー、ドラムシェッズでの公演。15000人収容の会場を事前ソールドアウトさせるという人気ぶりだ。

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OUTLIERドラムシェッズ公演の様子

ボノボは2021年のDJ Mag誌の取材で、OUTLIERの理念を「それがどんなダンスミュージックであれ、よりオルタナティヴなもの。ストレートなテックハウスではないんだ」と説明している。また、2015年のBillboardの取材ではOUTLIERのニューヨーク公演に際し、「ヨーロッパのウェアハウスパーティのヴァイブをここ(アメリカ)に持ち込みたい」と語っていた。

つまりボノボが目指しているのは、アンダーグラウンドの純粋主義的なクラブミュージックとも、Billboardの取材を受けた2015年当時アメリカを席巻していた商業主義的なEDMとも違う、その間のグラデーションに存在するクラブミュージックの豊かさを提示すること。そもそもOUTLIERとは統計学上の異常値や外れ値を意味する。おそらくボノボは「ポップの枠組みにもアングラの枠組みにも収まりきらない何か」というニュアンスでこの言葉を使っているのだろう。

OUTLIERの東京公演は2020年に一度開催が決定していたものの、新型コロナウィルスのパンデミックで中止に。今回は念願の日本初上陸となる。会場は渋谷O-EAST~DUO~東問屋で、3ステージを繋いだ同時開催。前回のボノボのDJ来日公演と同様、O-EASTはボイラールームのようにDJブースをフロアに配した特別レイアウトになるという。後述するが、もちろん豪華ゲストも完璧な布陣。スペシャルな一夜となることは間違いない。


2023年1月15日、渋谷Spotify O-EASTで披露されたボノボのDJセット。ボイラールームのようにDJブースをフロアに配した特別レイアウト(Photo by Tadamasa Iguchi)


3. ベルリンと南米を繋ぐソフィア・コルテシスのカラフルなハウス


ソフィア・コルテシス(Photo by Dan Medhurst)

OUTLIERのために初来日するソフィア・コルテシスとケリー・リー・オーウェンスは、どちらも今もっとも観ておきたい良質な「外れ値」のひとつだろう。

ペルー出身、現在はベルリンに拠点を置くソフィア・コルテシスは、南米の眩しい陽光が降り注ぎ、水面がキラキラと輝いているような、ユーフォリックなハウスミュージックを創出する。メロディアスでカラフルで、どこかセンチメンタル。フォー・テットやDJコーツェがよく引き合いに出されるのも納得だが、彼女の場合はもっと大らかなグルーヴを感じさせる。

「私の心はとてもラテンアメリカ的だけど、私のモーターはドイツ製」とはコルテシス本人の名言。その言葉通り、オリジナル曲であれDJセットであれ、彼女が提示する音楽はベルリンのダンスフロアの暗がりと南米の暖かな日差しがごく自然に溶け合ったような美しさを宿している。





4. 英国の伝統を継ぐケリー・リー・オーウェンスのハイブリッド性


ケリー・リー・オーウェンス

イギリスにはインディとクラブミュージックが交差する伝統がある。ウェールズ出身ロンドン在住、元々はシューゲイザーバンドをやっていたというケリー・リー・オーウェンスは、そんな英国の伝統を受け継ぐ存在だ。ドリームポップとテクノのハイブリッドが彼女のサウンドの基本構成で、白昼夢の恍惚とテクノのディープでヒプノティックな感覚を併せ持つ。

レディオヘッド「Weird Fishes/Arpeggi」のカバーも収録した傑作2nd『Inner Song』でそのスタイルは一旦の完成を見せたのち、最新作『LP.8』ではより抽象主義的な表現へと旋回。近年は『LP.8』の作風を踏襲したノイズ~アンビエントなDJミックスも幾つか発表しているが、現場ではハードだがメロディアス、ストイックだがポップな混合型テクノでフロアを揺らしてくれるだろう。



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