MONOEYESの結成は2015年。まだ東日本大震災の傷も深く、ELLEGARDENが復活することなど誰も考えていなかった時期である。わかりやすいポップパンク、シンガロングできる歌をメインとして始まったことも、ヴァンひとつで全国ライブハウスを細かく巡るツアーの本数も、このバンドの「やりたいこと」を明確に見せていたものだ。ただ、時間と共に状況は変わり続け、バンドという生き物はみるみる成長する。エルレ、the HIATUSを同時に動かしながらMONOEYESの十年目に向かう細美武士、そして彼との時間をどんどん濃厚にしているメンバー三人は、今何を思うのか。四年ぶりの作品となる『The Unforgettables E.P.』のリリースに合わせて話を聞いた。「やりたいこと」の核を変えないまま、「やれること」がここまで高度になっていくバンドも珍しいと思う。関連記事:
MONOEYES、パンクソングの無限性を物語った日本武道館の夜一全員インタビューを始める前に、細美さん個人に聞きたいことがあって。細美武士(以下、細美):うん。
一5月からthe HIATUSのツアーが続いて、夏はELLEGARDENでフェス出演が多数、そして本日MONOEYES取材ってなると、頭がとっ散らかりません?細美:いや? 特には。
一……そういうものですか。細美:はい(笑)。
一瀬正和(以下、一瀬):でも俺もそう思う。気持ちの切り替え大変だろうなって。
細美:そうかな? ひとつのバンドを長くやって、たとえば一年ぶりにパッと違うバンドに戻ったりすると、最初はちょっと感覚わかんなかったりするかもしれないけど。全部リアルタイムで動いてるから、その方がわりと上手くいってます。
一忙しすぎてパンクしそうになることもなく?細美:忙しいっちゃ忙しいけど……いや、そもそも今年こんなスケジュールになる予定じゃなかったんだけどね(笑)。今年の制作はMONOEYESのこのE.P.だけだから、あとはライブだけ。けっこう暇な、のんびりした一年になるかなと思ってたんだけど。
一瀬:そう思ってたの、逆にすごいよ(笑)。
一メンバーから見て、細美さんのこの回転は理解できます?戸高賢史(以下、戸高):いや理解できないです。すごいなと思いますね。こないだthe HIATUSのライブ見に行ったけど、あれもあれでしっかり作り込んでるし。ほんと「どうやって切り替えてるんだろうな?」って感じがする。
スコット・マーフィー(以下、スコット):でも、逆にみーちゃん(細美)が暇だったら僕は不安になる。
細美:そんなことないよ(笑)。暇になりたいんだけど。
スコット:って言ってるけど、実際暇になったら何かしようとするでしょ?
細美:あ、なるほどね。そうかも。
一瀬:でも三つ同時に動いてるのはたぶん初めてだよね。俺が見てて思うのは、切り替えた時の集中力。たとえば今日MONOEYESのライブがありました、三日後にthe HIATUSの何かがありますってなったら、ライブ終わった瞬間から次のモードに切り替わってる。プライベートなこととか犠牲にしても、一気に次のモードに自分を持っていく。で、常にライブをマックスで考えてるんだけど、かといって「今忙しいからジムはいいや」とか考えることもないから。次のライブに向けて毎回体も作り込んでいく。よくやってるなって、今年は特に思うかな。
細美:でもね、大工さんやって漁師やってミュージシャンをやってるんだったら確かに大変だと思うんだけど。全部ミュージシャンだから。キックやってる人がボクシングルールの試合に出るみたいな、完全に0からってわけでもない感じ。しかもどれもこれもが全部身になってる、自分のプラスになってる感じはしてますね。
一楽しくないと、三つのアウトプットは同時に回せないですよね。細美:俺はフィジカル強いので。体鍛えたりライブに向けてメンタル仕上げていったり、そういうのは全然いい。苦手なのは頭脳労働の方(笑)。作詞が3カ月続くとか、そのほうがよっぽどキツいかな。だから今年はぶっちゃけ楽なんですよね。ただ、スタッフに対しては「ほんとごめん」って感じ(笑)。