ZEDD『Telos』全曲解説 ミューズらと異種交配コラボ、EDMを超越した新たな到達点

ゼッド

ゼッド(ZEDD)が9年ぶりにニューアルバム『Telos』(テロス)をリリース。EDMシーンのみならず、ポップシーンでも大活躍を繰り広げてきたダンスミュージック界のスーパー王子が、ジャンルの壁をぶち壊す新境地へと歩みを進めている。「一編の作品として通して聴いてほしい」と語るアルバムには、ジョン・メイヤーからミューズ、故ジェフ・バックリィまで異種交配コラボが収録され、オーケストラ、アイルランド民謡、インド音楽などさまざまなサプライズが満載されている。多方面からのゲスト、協力者、インスピレーションなどを辿りつつ、全10曲を順に紹介していきたい。


1. 「Out Of Time」(feat. Bea Miller)


オープニングを飾るのは、本作からの1stシングルとなったこの曲だ。歌っているのはビー・ミラー。今年6月に先行リリースされた。アメリカはニュージャージー出身のシンガーは、「Feel Something」やNOTDとの「I Wanna Know」などのヒットでもお馴染み。多彩な楽曲が繰り出される本作中においては、比較的これまでのゼッド寄りスタイルと言えそう。リスナーに違和感のないスムーズなトランジションを促してくれる。ゼッドの初期楽曲に多い、時計を思わせるチクタク音が打ち鳴らされ、タイトルにもある“Time”がテーマに取られている。そのあたりのインスピレーションについても、一度本人に尋ねてみたいものだ。


2.「Tangerine Rays」(feat. Bea Miller, ellis)


続く2曲目も、1曲目と同じくビー・ミラーがボーカルを担当。前曲からオーケストラ演奏で、ほぼノンストップで繋がれる。彼女の歌が2曲続けられ、オーケストラで繋がれるのは、正しくこのアルバムの狙いでありポイントだ。ゼッド曰く「各曲のエレメントが、それそれ次の曲へと引き継がれている」とのこと。収録曲を順番に聴いて初めて見えてくるものがあるはずだ。プリプリに弾けるエレクトロニックサウンドが痛快すぎ。ゼッドとマレン・モリスとBEAUZの「Make You Say」のリミックスを手掛けていたUKプロデューサーのエリスがプロダクションに参加。また意外なところでは、ジェイコブ・コリアーがバックボーカルを務めている。


3.「Shanti」 (feat. Grey)


以前からインド音楽への興味を窺わせていたゼッドだが、ここで思いっきりインド愛が炸裂する。インド的な音階、楽器、メロディが導入され、インド人シンガーやコーラス隊を率いたエキゾチックな世界が展開される。プロダクションの制作にはアメリカ人プロデューサーデュオ、グレイが参加。ゼッド&マレン・モリスの「The Middle」などでもコラボしていた2人とは、久方ぶりの顔合わせだ。


4.「No Gravity」(feat. Bava)


メロウでチルなのに、小気味良さが光っている。“無重力”というタイトル通り、フワフワと宇宙空間を遊泳しているかのような錯覚に陥らせてくれる。ソフトな歌を聴かせるのは、バヴァことエイヴァ・ブリグノル。ハイチ系のアメリカ人シンガーだ。彼女は、DJスネイクやセレーナ・ゴメス、カーディ・B、オズナが共演した大ヒット曲「Taki Taki」や、本作冒頭の「Out Of Time」のソングライティングにも参加。また「Mad at Disney」でお馴染みのセイレム・イリースも共作で名を連ねている。男性らしき歌声もリードボーカルを取っているようだが、バヴァの歌声の加工音なのかゼッドのものなのかも気になるところ……。


5.「Sona」(feat. The Olllam)


おそらく本作で最大のサプライズと言えそうなのがこのチューン。共演しているジ・オラムは、北アイルランドのベルファスト出身のケルト奏者の3人組。もしくは彼らを中心としたケルト楽団として活動する。「以前はバグパイプやホイッスルなどがすごく苦手だった」というゼッドだが、コロナ禍に彼らにハマったと明かしている。アイルランドとロサンゼルスの間で、遠隔で制作されている。ファンにとっては驚きだが、ゼッド自身もこんな形でケルト音楽とエレクトロニックミュージックが手を取り合うとは、想像していなかったに違いない。

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