ブラック・クロウズが語る再結成の真実、ロックンロールとロビンソン兄弟へのラヴレター

俺たちはハッピーなろくでなし

─このアルバムは、ロックンロールを葬り去ろうとする世の中への宣戦布告のようにも聞こえます。2024年のブラック・クロウズは、何を目指して本作を作り上げましたか? この時代に鳴らすロックンロールは、30年前のロックンロールと何が違うと、何が違っているべきだと思いますか? あるいは同じですか?

リッチ:クリス曰く「ロックンロールはまだ生きていて、これはロックンロールへのラブレター」なんだって。つまり、考え方の問題だと思う。この50〜60年間の間に音楽はどんどんジャンルが細分化されてしまった。でも、僕たちがロックンロールに触れ始めた頃というのは、レッド・ツェッペリンもいればジョニ・ミッチェルもいて、マイルス・デイヴィスやスライ・ストーンがCS&Nやフリーと同じ括りで語られていた。ジャンルなんて存在しなかったし、障害物もなく、型にはめようなんてこともなかった。そこに存在する広範囲に及ぶ音楽性もさることながら、それぞれのアーティストの個性が讃えられていた。

それに対して今は、同じようなサウンドを出すテクノロジーをみんなが使っているように感じる。実際ポップ界の多くの人がみんな同じサウンドに聞こえる。区別がつかない。ポール・ロジャースの歌を聴いた瞬間、それがポール・ロジャースだってわかった。ロッド・スチュワート、ジョニ・ミッチェル、ディランもそう。でも今はノイズの識別が難しくなっている。

僕たちの姿勢は昔から変わっていない。それはロックンロール創世記の精神に根付いている。そして、それは今でも存在する。ただ、それを貫くには亜流でやっていくしかないとも言える。僕たちはこれまでもそれをやってきた。これはよくする話なんだけど、『Shake Your Money Maker』でレーベルと契約した当初は、誰も僕たちに見向きもしなかった。ジョージ以外はね。ジョージ・ドラクリアスだけがバンドとアルバムを気に入ってくれていた。誰も僕たちに関心がなかったから、何も言ってこなかった。で、『The Southern Harmony And Musical Companion』(1992年)を出す頃にはすごく売れていたから、逆に誰も口出しできなくなっていた(笑)。そうやって僕たちは幸いにも自分たちが作りたい作品を作り続けることができたんだ。リスクもたくさんとった。商業的には損失と思えるリスクもあったけど、アーティストとして創造性を満たすことができた。だから、躊躇うこともなかったんだ。



─タイトルの『Happiness Bastards』は、この混迷と混乱の時代にあって、楽天的とも取れるし、皮肉とも取れるし、素直に言葉そのままに前向きなものとしても取れると思うのですが、由来を教えてください。

リッチ:生意気なジョークだよ。「俺たちはハッピーだけど、今もろくでなしだ」っていう。笑ってくれればそれでいい。深い意味はないよ。アートワークも気に入っている。『The Southern Harmony』のジャケットを白く塗りつぶしたんだ。

─そう、ファンの間でも話題になっています。その意図が知りたいです。

リッチ:イカした表現だと思ったからだよ。過去を認めつつ、それをさらに新たに塗り替え、そこに過去もちゃんと透けて見える、というね。

─時間もないので最後になります。活動休止期間もありながらデビューから30年以上バンドをやってきた身として、あなたたちのようなベテラン・バンドが現在の音楽業界でサヴァイヴしていくために、あえて必要とされるものがあるとすれば、それは何だと思いますか?

リッチ:自分たちの話しかできないけど、僕たちは出てきた時からずっと孤立した存在だった。流行りに乗っかろうとしたことはない。自分たちが揺さぶられるものしかしてこなかった。それが何かというと、自分たちの心を掴んで離さない音楽の魅力だ。今でも音楽を作るのが好きだし、音楽が何よりも好きでたまらない。人生で一番大切なものを三つあげろと言われたら絶対に音楽が入る。その中で、本物であることを大切にしてきた。できのいい、悪い、毛色が違うに関係なく、そこで表現していることに嘘はない。巧妙な嘘やごまかしはない。曲を書いて、ステージに上がって演奏する。それをひたすらやるだけ。先頭に立つ者として、何をやるにしても、本気でやって、それが本物で、誠実であれば、居場所は必ずあると信じているよ。




ブラック・クロウズ
『Happiness Bastards』
発売中
再生・購入:https://orcd.co/happinessbastards

Translated by Yuriko Banno

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