ブラック・クロウズが語る再結成の真実、ロックンロールとロビンソン兄弟へのラヴレター

原点回帰と大胆不敵な試み

─ブラック・クロウズとして新作アルバムを作ろうと決断したのは、どのタイミングでのことでしたか?

リッチ:君がさっき言ったように、11月にツアーを発表して、11月に数本ライヴをやった後、ヨーロッパとアメリカでBrothers of a Feathers名義での公演をやった。これがすごく良かった。そこで準備は整った。ただ、先のことは決めず、目の前のことから一つずつやることだけに専念した。これまでも先のプランを決めることはなくて、せいぜい決めても半年先か1年先くらいだ。僕たちはそういう性格なんだ。

そうして準備が整ったところで、コロナ禍が1年半続いてしまった。だったら曲作りをするか、と思ったんだ。曲作りは常時やっていることだし。でも『Shake Your Money Maker』以来、初めて仕事がない時間が長くできた。その時間を使ってじっくり考えながら、曲を書くことができて、結果40曲以上書いた。自宅スタジオでね。別に目的があったわけじゃない。ただひたすら曲を書いた。できた曲をクリスに送ったら、彼の隣人がスタジオを持っていて、そこに行って、歌を入れたものを僕に送り返してきた。それを聴いて「なかなかいいじゃん」って。僕からは43くらいのアイデアを送って、彼はその中から心を動かされたものに歌を入れて送り返してくれた。そんな調子でやっていたら、コロナ禍が明けてツアーができるようになって、『Shake Your Money Maker』30周年ツアーに出たってわけだ。

ツアー中もサウンド・チェックの時間を使ってさらに曲を書いた。ツアーは21年から23年頭までの2年間かけてヨーロッパ、アメリカ、日本、オーストラリア、南米と回った。それが終わってアメリカに戻ったところで「じゃあ、レコーディングしようか」となった。元々かなりの曲ができていて、さらに新しい曲もあった。で、プロデューサーが欲しいねってなった。セルフ・プロデュースを何度かやってみて、「自分たちでやらないほうがいいんじゃないか」ということを学んだからね(笑)。というのも、僕には僕のやり方があって、クリスにもクリスのやり方があるから、俯瞰してものを見られる人がいた方がいい。客観的な意見を言ってくれる人が必要なんだ。何人かと話をして、クリスも僕もすぐ「ジェイ(・ジョイス)がいい」ってなった。彼の何が魅力だったかというと、カントリー作品をたくさん手がけているけど、実はクリーブランドのパンク・ロック・シーンから出てきている。いろんなバンドでプレイしたギタリストで、好きな音楽でも僕たちと気が合ったから、彼しかいないと思った。彼のスタジオがナッシュヴィルにあるから、そこでレコーディングしたんだ。



─エリック・ドイチュ(key)とニコ・ベレシアートゥア(Gt)は最近のクロウズのツアーも共にしていて、ブライアン・グリフィンもツアーに参加していたと思います。本作レコーディングのメンバーは、何を基準にどんなプレイが欲しくて選びましたか?

リッチ:ニコは、僕のソロ作品やマグパイでも一時プレイしていた。エリックに関しては、今回クリスと一緒にやろうとなった時に、試しに合わせてみた一人だった。ブライアンに関しては、当初決めていたドラマーがコロナ中に「もうドラムはやらない」って言い出したんだ。あの時期、人生を考え直した人は多かったと思うけど、彼も全く違うことがしたくなったんだ。それで急遽誰か探さなきゃと、ツアーに出る直前にブライアンを見つけた。ドラムは安定しているしいい奴だったんだけど、バンドの成長について来ることができなかった。だから今はカリー・サイミントン(オッカーヴィル・リヴァー、カーシヴ、コナー・オバースト、アフガン・ウィッグス他)が参加してくれている。みんな彼を気に入っている。とにかく最高だよ。若いけどグルーヴもあって、パワフルだし、バンドにもすごく馴染んでいる。ようやくバンドっぽい音になった気がするよ。ずっとそれを求めていたんだ。時間がかかるのはわかっている。バンドを結成して、ステージに上がって一緒にプレイして、100回やってようやく、みんなの音が一つにまとまり始めるもので、今まさに僕たちは、そこにいると思う。



─アルバム1曲目の「Bedside Manners」からエンジン全開、すごい勢いで飛び出してきて、思わず笑ってしまうほど嬉しかったです。あなたが、このアルバムを象徴していると思う曲はどれで、その曲にはどんなバックグラウンドがありますか?

リッチ:最初に書いた曲は「Wanting and Waiting」だった。『Shake Your Money Maker』30周年ツアーをやって良かったのは、改めて振り返ってみて、あのアルバムがいかに作品として焦点を絞れていたかが分かったこと。ソングライティングもそう。曲が3分半で無駄がない。『Shake Your Money Maker』の後は、長尺の曲を掘り下げるようになった。ジャムを基調として、深く掘り下げることで音楽的に成長していった。いろいろ探求したし、いろんな試みもした。その姿勢は『Before the Frost...』(2009年)まで続いた。だから改めて『Shake Your Money Maker』を聴いて、ツアーをしたことで、3分半の曲ならではの輝きについて考えることができた。その骨組みの中で何ができるのかって。今回はそこに重点を置いたんだ。

と言いつつも、このアルバムでは試みもたくさんしている。「Wilted Rose」や「Kindred Friend」みたいな曲もあれば、「Flesh Wound」のように僕とクリスのパンク・ロックの影響を垣間見ることができる、これまでと違う傾向の曲もある。若い時はXとか大好きでよく聴いていたよ。アルバムを象徴する曲だとどれになるのかな。「Bedside Manners」はアルバムの雰囲気をかなり捉えているよね。パンチがあって大胆不敵で、ド直球っていうね。

Translated by Yuriko Banno

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