Reiが語る、「心の声」と向き合ったシンガーソングライターとしての新境地

 
Reiによる『VOICE』全曲解説

─「Sunflower」は、ESME MORIさんを迎えてReiさんが「ポップス」に真っ向から取り組んだ楽曲だと思いました。

Rei:歪まないギターでスマートにカッティングするギタリストの魅力に最近気づきまして。長岡亮介さんはもちろんその一人ですが、今年フジロックで共演したコリー・ウォンなどからの影響も大きいですね。この曲の歌詞も思い描いている人がいました。その人は、ひまわりのような人なんです。

人生には「季節」があり、別れが訪れることもある。精神的な別れにしても、物理的な別れにしても、失ったものの大切さに後から気づくことってあるじゃないですか。そういう気持ちを掘り下げて描きたかったんです。先行シングルとして秋口に配信リリースしたのですが、夏が過ぎ去った後に「ひまわり」と名付けた楽曲を出すことで、喪失感をリスナーにも体感していただけたらと。

─この曲は、別れをポジティブに受け入れようとしている気持ちが綴られていますよね。

Rei:かつての自分だったら、別れをネガティブに捉えることしかできなかったと思うんです。喪失感に打ちのめされ、いつまでもやんわり引きずっていたかもしれない。でもそうじゃない別れがあってもいいなという気持ちが最近はあって。過ぎ去った季節を懐かしむような、ガラスケースの中に大切にしまっておいて、たまに取り出して磨くような気持ちで書きました。



─「CITY」ははマンドリンやフィドルをフィーチャーしたアイリッシュフォークで、長岡亮介さんとのコラボ曲「Don't Mind Baby」(『QUILT』収録)にも通じると思いました。

Rei:私自身はブルーズなど黒人音楽からの影響が大きいのですが、アイリッシュリールのエッセンスが入ったこの曲は、私がカントリーミュージックに興味を持つようになったきっかけでもある亮介さんからの影響があると思います。ドワイト・ヨアカムやブラッド・ペイズリーなども、亮介さんと出会って聴くようになりましたし。ただ、カントリー直系ではないですがシェリル・クロウやミッシェル・ブランチ、デキシー・チックスあたりの、アコースティックな質感のあるポップスは大好きでたくさん聴いて育ったので、その要素も入っていると思います。

─こういうスタイルの楽曲を、荒田洸さん(WONK)のようなまた違うルーツを持つミュージシャンと作り上げるところがReiさんらしさなのかなと。

Rei:「Sunflower」の時もそうだったのですが、ちゃんとハイブリッドされた今の音楽にすることは常に心がけています。ちなみにこの曲は、イエバという大好きな女性シンガーがエレクトリック・レディ・スタジオでライブ録音した音源も参考にしています。洸くんは、その方向の音楽にすごく詳しくて。今回、ドラムも結構ダビングしていましたね。




─「Call My Name」も、マーティ・ホロベック&石若駿というSMTKのリズム隊がフォークミュージックを演奏する面白さがありますよね。

Rei:この曲はアルバムのリード曲で、作品を作るきっかけにもなっています。歌詞も、これまでにないくらいストーリー仕立てになっていたり、情景描写にこだわったりしているチャレンジングな曲。恋愛の曲として聴いてもらっても構わないのですが、「名前」というものがアイデンティティの象徴であるのなら、大切な人には自分の名前……つまり自分のアイデンティティを、たとえ「肯定」しなくても「認識」してほしい、受け入れてほしいという思いを込めた曲にもなっています。



─今作の中でもとりわけアーシーかつスワンピーな「RICH KIDS」は、どのようにできた曲ですか?

Rei:たとえばベン・フォールズやスーパーオーガニズムのように明るくてノリがいい曲にしたいなと。キーボードはちょっとローリング・ストーンズっぽいし、それでいて「今夜はブギーバック」あたりの影響もミクスチャーされていますね。何かそういうプレイフルな曲をアルバムの中に1曲入れたかったんです。

「RICH KIDS」というのは、「金持ちのキッズ」という意味ではなくて「精神的に豊かに生きるキッズ」のこと。たとえば「Quality of Life」といいますか、自分をねぎらったりいたわったり、そういうことに目を向けているアーティストが、同世代にはすごく多いように感じます。彼らを見ているととても元気が出るんです。そのことに想いを馳せつつ、ザ・フーの「My Generation」的な、私たち世代の思想を盛り込むつもりで書きました。ライブでみんなと一緒に歌えるアンセムのようになったらいいなと思っています。


Tag:
 
 
 
 

RECOMMENDEDおすすめの記事


 

RELATED関連する記事

 

MOST VIEWED人気の記事

 

Current ISSUE