Reiと考える、この時代にアイデンティティの窮屈さを乗り越える方法

Rei(Photo by Masato Yokoyama)

性別、見た目、年齢、出身地、職業――人は自身の本当の姿とは異なる部分で判断される場面に、日々直面してしまう。逆に自分も悪気なくそういった行動や発言をしてしまうことが、誰しもにあるだろう。体型の大きい人に「よく食べるでしょ?」と言ったり、ある国籍の人を一括りにして「こういう性格だよね」と言ったり。ユーキャン「新語・流行語大賞」のノミネートワードにもなった「Black Lives Matter」のような社会問題から日常生活のそこら中に転がっている出来事まで、一人ひとりの本質的な個性に目を向けずに発された言葉や起こった行動によって誰かが苦しむという場面が、世の中には多々存在している。

Reiが11月25日にリリースした8枚目の作品『HONEY』には、「私をカテゴライズしないで」と歌う「Categorizing Me」の他、逃れられない自分のアイデンティティと自分らしく生きるとはなにかという意識と向き合い続けて生きるReiの姿がある。アルバムにはとても個人的なラブソングとも読めるような楽曲も含まれており、Reiというひとりの人間の姿がありありと目に浮かぶ作品であると同時に、アーティスト・Reiにとって新境地を拓いた作品だとも言える。数々のロックレジェンドたちが孤独を背負いながらステージ上では神々しく輝いて放っていた眩さを、Reiという存在からは感じることもできる。

自分のアイデンティティとどう付き合っていくか、そして、相手のアイデンティティをどう受け止めるか。そんな終わりなき人間の議論について、Reiの実体験と考えを聞いた。

【写真を見る】Rei撮り下ろし(全24点・記事未掲載カット有り)



Photo by Masato Yokoyama

―まず、アルバムの中からミュージックビデオも発表された「Categorizing Me」に関して話を聞かせてください。この曲では「女性」「日本人」など様々な肩書きや枠で判断されることへの抵抗を歌っていますが、Reiさんはこれまでどういった「カテゴリー」にはめられることに違和感を抱いてきましたか。

Rei:女性であること、20代であること、日本人であること、ギタリストであること……いろんなカテゴライズに私も当てはまると思うんです。もちろんそれは自分から取り外せるものではないし、それを踏まえたうえでコミュニケーションを取ることもあるんですけど、でもやっぱり私自身を本質的に奥の奥まで覗いて関係を築いてほしいという気持ちが年々強まってきて、それが溢れた瞬間に曲ができました。



―「最近の20代はこうだよね」「女性はこういうの好きだよね」とか、大きな枠に括ってなにかを知っているかのように話す行為を、人はどうしてもやりがちですよね。たとえそこに悪気があるわけではなくとも。

Rei:人がカテゴライズしたがる心理というのは、安心感を求めているのだとも思います。よくわからないものは「怖い」というイメージがありますよね。だから、「これは自分が知っているアレと同じグループだ」というふうに整理整頓するような形で引き出しに入れちゃうんだと思います。それが理解に繋がって、すなわち安心に繋がる。必ずしもそれが悪いことではないと思うけど、でもやっぱり一人の人間として見てもらえなくて傷つく場面もありますよね。

―Reiさんが他人と接するときは、相手をそういった形で傷つけないために、どういうことを心掛けられていますか?

Rei:先ほども言ったように、カテゴライズすることが必ずしも悪いわけではないですし、私は女性やギタリストであることを誇っているので、ポジティブなこともあると思うんです。なので、私は誰かと接するときに、その人がどういうカテゴリーにみなされたら嫌悪感を抱くかなっていうことをあらかじめ考えた上で話すようにしています。「こういう言葉は言われすぎて傷ついてるだろうな」とかって……想像できるじゃないですか。


Photo by Masato Yokoyama

―外見とかバックグラウンドだけで判断して発した言葉に、何気ない偏見や差別が混じっているようなことですよね。そういった「マイクロアグレッション」については、以前、ロンドン在住のリナ・サワヤマさんとのインタビューでもじっくり話をさせていただきました。Reiさんのそういった意識は、アメリカに住まれていた頃から持たれていたものですか?

Rei:いや、私は社会人になってからカテゴライズされることのしんどさを知りました。それまではアメリカに住んでいたりインターナショナルスクールに通っていたので、みんなが違うことがスタンダードだったんです。だから社会人になって、自分が音楽業界の中の一人という立場に変わったとき、すごく感じるようになりました。「差別」と言うと大げさな言葉に聞こえるけど、「Categorizing Me」は確かに差別について歌った曲ではあるんです。日常での配慮のなさとか些細なマナーの欠如で差別を感じて、それが積み重なっていくことでかすり傷が深い傷になっていく。それを女の子の繊細な心情を重ね合わせて描いた歌詞で。

―アーティスト「Rei」として活動する中で、ギタープレイばかりがフィーチャーされて「凄腕ギタリスト」「身体が小さい女の子なのにギターがめちゃくちゃ上手い」といったラベルを貼られたり……そういった面に窮屈さを感じることもありましたか。

Rei:もちろんそこは今でもコンプレックスに感じてるところがあります。でもそれは私の魅力でもあるので、それを魅力的だと思ってフォローしてくれる人には全力で感謝したいと思ってます。その上で……私は自分のことを、まずは「シンガー」、その次が「ソングライター」、そしてその次が「ギタリスト」だと思ってるんですね。その考え方は最初から変わってないです。より「シンガー」の部分に目を向けてもらえるためにはどういうふうにアプローチを工夫できるかなということを、日頃から考えてはいます。でも、世間が私のどこをピックアップして面白がってくれるかは世間が決めることなので、今は別にそこまでこだわってないですね。

―世間が決めることだって言いつつも、ちょっともどかしいですよね。

Rei:そうですね。アルバム『HONEY』には柔らかい曲調とかもたくさん入ってますけど、アティチュードとしてはその辺りを払拭したいというのがありました。

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