ザ・ローリング・ストーンズ、18年ぶり新作アルバムが「半世紀ぶりの傑作」である理由

未知の領域へと踏み出したストーンズ

『Hackney Diamonds』には、ストーンズと同世代のアーティストによる晩年の作品によくある、過去への回帰は見られない。ベビーブーマー世代のロッカーが、ツアーを続けるだけでなく新曲を書き続けている。彼ら自身だけでなく、現在の我々にとっても未知の領域へと踏み出した。我々は、ロックの歴史の中でも特に魅力的な時代に到達したのだ。世代の先駆けとして、残りの人生に向き合い怒涛の過去から最近の生活までを振り返ったり、時には世界情勢や政治についての曲を聴きながら、私たちは、70代から80代に差し掛かったボブ・ディランやニール・ヤング、ポール・マッカートニー、ポール・サイモン、ジュディ・コリンズらの心の内を垣間見ることができる。

アルバムのそこかしこでミックは、自分の世界に没頭している。ジグザグなギターパートに乗せて「俺がかつて歩いた街には、割れたガラスが散らばっている/周りを見渡すと、どこにも昔の思い出が落ちている」と歌う「Whole Wide World」は、混沌とした時代に生きる我々を元気づけてくれる。カントリーシャッフルの「Dreamy Skies」では、懐かしいAMラジオから流れるハンク・ウィリアムズのレコードを聴きながら、煩わしい日常から解放されたいと願う。

表現も非常に奥深い。ミックは「お前にもっと近づきたい」とか「俺がお前のためにめちゃくちゃにしてやるんだ、とお前は思うだろう」といったコーラスを好む。チャンスを逃した気もするが、ミックの頭の中を覗いてみたいとは思わないだろうか。それには「Bite Your Head Off」を聴いてみるとよい。「綱になど繋がれない/鎖に繋がれることもない/お前は俺を奴隷扱いするが/俺がお前の脳みそをぐちゃぐちゃにしてやる」というフレーズは、かつての「Get Off My Cloud」(1965年)から歳を重ねた男によるイライラした怒りの声だ。それよりも「リッチになりたければ、偉くなれ」と歌う「Live by the Sword」の方が、よりナチュラルに聴こえるかもしれない。




しかし「Bite Your Head Off」は、ポール・マッカートニーの控えめに聴こえるベースのおかげで、音楽的におしゃれなひと捻りが加わっている。さらにエンディングのキースとウッドによる熱狂的なギターは、最高の音のジェットコースターだ。アルバムを締めくくる「Rolling Stone Blues」は、マディ・ウォーターズの「Rollin’ Stone」をミックとキースが2人だけでカバーした曲だ。明らかに時代は巡っている。ストーンズのスタンスが正しいのだと思う。『Hackney Diamonds』がバンドとしての最後のアルバムになるかならないかに関係なく、「Bite Your Head Off」をはじめとする収録曲は、バンドのみならずロックの歴史を代表する作品として記憶に残るだろう。

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From Rolling Stone US.




ザ・ローリング・ストーンズ
『Hackney Diamonds』
発売中

国内盤全4形態で発売
ボーナス・トラック1曲収録/英文解説翻訳付/歌詞対訳付/SHM-CD仕様
再生・購入:https://umj.lnk.to/RS_HackneyDiamonds

①CD(デジパック仕様)
②CD(ジュエルケース仕様)
③CD+ブルーレイ
④1LP(直輸入仕様/限定盤)

Translated by Smokva Tokyo

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