ジョーイ・バッドアス来日公演レポ、観客との一体感で魅せるプロフェッショナルの流儀

ジョーイ・バッドアス(Photo by 古溪一道)

1階アリーナが前の方まですし詰めになり、開演前から熱気で溢れた9月1日(金)のEXシアター六本木。この日パフォーマンスをしたのはNY出身で絶大な人気を誇るラッパー、ジョーイ・バッドアス(Joey Bada$$)だ。今回の来日公演は2018年以来、約5年ぶり。去年リリースしたばかりの最新アルバム『2000』にはディディやクリス・ブラウン、Westside Gunn、JIDなどが客演として参加し話題となっており、もちろん今回のライブのチケットは事前にソールドアウトしていた。

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開演時間を少し過ぎた頃にDJタイムがスタート。ニューヨーク出身のOGたちのヒットソングをメインに、名曲を次から次へと繋げ、フロアの熱を急激に上げていく。会場の期待がピークに達したとき、待ちに待ったジョーイ・バッドアスが「Paper Trail$ 」で登場。力強く踏みしめるようなラップと堂々とした佇まいに圧倒される。ステージ真ん中の彼に向かって集まっていく観客たち。全員が手を上げて彼を見上げ、うごめいていた。ここからはアルバム『1999』から「Hardknock」「Righteous Minds」「Waves」を続けて3曲プレイ。「10年前から俺が好きなやつも、俺のライブが初めてじゃないやつも、これが初めてのライブのやつも、みんな騒げ!」と右から左、上から下まで観客席を指さした。続いて披露されたのは「95 Til Infinity」。煙たいストリートの雰囲気が一気に会場を包み込む。DJの紹介の後、「今日はSAKEを飲むぞ」と日本酒の瓶を取り出しグラスに注ぐと、「乾杯しようぜ」とフロアに向かって掲げた。この日は会場でのアルコールの提供はなく観客はみなペットボトルのドリンクを持っている人が大半だったのだが、そんな会場に向かって「(持ってるのは)水です? お茶です?」と日本語で質問していた姿が愛らしく印象的だった。



ここからはアルバム『B4.DA.$$』から2曲続けて「Hazeus View」「Christ Conscious」を披露。赤い照明に照らされ、ダークなビートが映える少し危険な雰囲気が漂っていた。会場の熱は冷めることなく更にヒートアップしていく。「Rockabye Baby」では合唱する観客たち。「今日のエナジーは最高。超いい。グレイト、ワンダフル!」と煽り、「“あり”と言ったら“がとう”と返してくれ」と、まさかの“ありがとう”でコールアンドレスポンスを始める。積極的に日本語を取り入れ、アリーナも2階席も関係なく一人ひとりとコミュニケーションを取ろうとする姿は、さすがプロフェッショナルそのものだった。



続く「Distance」ではモッシュピットを開けるように指示。激しいモッシュに慣れない観客たちが少し戸惑いながらも遠慮がちに移動すると、それじゃまだ足りない、と更に大きな円ができた。「THE REV3NGE」の力強いビートが流れはじめると、フロアが大きく揺れ始める。大勢の掛け声と、ぶつかり合う観客たち。フック部分では更に激しくなっていく。一体感がより一層高まった頃、『2000』について話しはじめ、ここから同アルバムの収録曲を6曲続けて披露。Westside Gunnをフィーチャリングした「Brand New 911」では、お馴染みの「Boom, Boom, Boom, Boom, Boom!」を叫ぶ観客が大量発生していたのがおもしろかったし、ヒップホップファンが多く集っていることが勝手ながらうれしかった。





「Cruise Control」ではステージ中央の椅子に座ってパフォーマンスを始め、優しく心地の良い音が、会場を柔らかくメロウな雰囲気に変えた。ここで観客に向かってスマホのライトを付けるよう指示。彼の尊敬するニプシー・ハッスルやジュース・ワールド、King Vonなど、既に亡くなってしまったラッパーたちの名前を連ね、彼らにリスペクトを送りながら「Head High」をプレイ。XXXTENTACIONを客演に迎えた「infinity (888)」を続けて披露し、胸にXのマークを掲げ、会場は情緒的な空気に包まれた。夏の気だるい雰囲気を感じさせる「327」を挟み、「Show Me」では「愛を示すことが大事なんだ」と話し、Kiss Cam(会場のカップルをカメラが選び、選ばれたカップルはキスをするというもの)が突如として始まった。まるでアメリカン・フットボールの試合のような時間が急に始まり正直驚いたのだが、観客の一体感と当事者意識のようなものが高まった瞬間であり、ユニークだが微笑ましく、愛のある時間だった。最後にはジョーイ・バッドアス本人のガールフレンドが袖から登場。熱いキスを交わし、会場を笑顔が包んだ。ロマンチックな空気の中、続く「Love Is Only a Feeling」では座って、少しレイドバックした雰囲気で披露し、フック部分ではみなが自然に体を揺らしながら歌っていた。






Photo by 古溪一道

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