ヌードの代役が私に教えてくれた、出会い系アプリについての教訓 米

2020年1月5日、カリフォルニア州ロサンゼルスで行われたHBO主催ゴールデングローブ賞オフィシャル・アフターパーティに出席したダイアン・ファール(MICHAEL TRAN/FILMMAGIC/GETTY IMAGES)

女優ダイアン・ファール(ドラマ『Fire Country』)が、ヌードの代役を雇った奇妙な経験とそこから学んだ教訓を米ローリングストーンに寄稿した。

【画像を観る】Facebook本社前に掲げられた「乳首の写真」

ヌードは仕事ではやりたくない。でも職業上わりとよく打診を受ける。あまりにもしょっちゅうあるので、一度だけ私の代わりに脱いでくれるヌードの「代役」を要求したことがあった。ちょうど双子を出産したばかりのころで、まだ授乳していた。視聴者以上に私自身が、こんな時期に自分の裸体をTVにさらしたくなかったのだ。

それから15年後、気づけば独り身だ(双子は大きく成長したが、結婚生活は終わった)。自分でもびっくりだが、代役を雇った経験がオンラインデートで知っておくべきことをすべて教えてくれた――誰もが出会い系サイトで楽しい思いをするとは限らないので、私にとっては大収穫だった。同時に私の顔はそれなりに知られているので、私のプロフィールを見ていいなと思った人が、今日Rayaアプリで女優さんを見つけたと友人に話すケースも出てくる。そしてその友人は元ダンナだったりする。本当の話だ。あるいは、Hingeアプリの私のプロフィールを写真に撮って、Instagramのストーリーにタグ付きであげたりする。これまた悲しいかな、本当の話だ。

さらに最悪なことに(実はまだ続きがある)、そういう人たちが私の仕事にいちいち口出す場合もある。それも、気に入らない役どころについてだ。

その中でもとくに私のお気に入りは、

「TVであなたの乳首を見たことがあるけど、吸ってみたいもんだね」

あらそう、でも私の乳首じゃないんですよね。あれは代役なんですの。私も最初に目にした時、自分のだったらいいなと思いましたから、気持ちは分かります。事の次第はこうだ。

私がトレーラーに1人でいると、大きな封筒がドアの下から滑り込まれた。中を開けてみると、女性の裸体の写真が入っていた。正確には顔の部分が見切れた、首から下だけが映ったA4サイズの写真だ。うっかり『The Idol』の養成所に紛れ込んだかと思っても不思議ではない。だがすぐに、写真を依頼したのが自分だと思い出した。ここから私のふりをしてくれる身体を選ぶのだ。さあ、どうぞ。


CBSのドラマシリーズ『Fire Country』でシャロン・レオニを演じるダイアン・ファール(SERGEI BACHLAKOV/CBS VIA GETTY IMAGES)

他の女性の裸体を見るのはなんとも奇妙だった。だがもっと奇妙だったのは、自分がすぐに慣れてしまったことだ。女性たちの筋肉のラインや脱毛した肌はとても勉強になった。だが驚いたのは、顔や服装で差別化しなくても個性が光り輝いていることだった。みな美しい身体をしていた――唯一違う点は足首から下の部分だった。1人はハイヒールを履いていて、もう1人は裸足。別の1人も裸足だったが、ハイヒールを履いているかのようにつま先立ちしていた。

だが私が選んだ女性は、これぞ裸の戦士という感じだった。彼女も素足でつま先立ちも厭わない様子だったが、片方の脚がやや外側に向いていて、ヌードのオーディションにも動じず、むしろうんざりしているような印象だった。とくに私の気を惹いたのが背中のカーブだ。実に見事な曲線美だった。あばらを前に突き出し、直感に忠実。自分の身体に自信を持っていた。私自身もそうだった。

その女性が撮影セットに到着すると、私は一目散に駆けて行った。とてもきれいな女性だと今更ながらに気づいた(ここまでだと思っていただろうか?)。すると彼女が口を開いて話し始めた。出てきたのは蚊が泣くような細い声――近づかないと聞こえないほど小声。しかも手ときたら繊細で、こんにちはと握手しただけでへし折ってしまいそうだった。

「戦士」とはまるで正反対だ。

Akiko Kato

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