アジカン後藤正文のサマーソニック談義2023 多様性に富んだフェスの見どころ

ケンドリック・ラマー、NewJeansなど気になる出演陣

後藤:あとはもちろん、ケンドリック・ラマーをこの時代に観られるのは非常に意味のあることだと思う。60〜70年代にボブ・ディランを観るくらい価値のあることなんじゃないかな。

つや:去年からツアーで世界中を回り仕上がりまくっているであろうケンドリックは絶対に観たいですよね。ヒップホップのフェスやライブが世界中で増えていく中、どれだけ“魅せる”パフォーマンスができるかが重視されるフェーズに入ってきています。日本のラッパーもケンドリックのステージからはたくさん学ぶことがあるでしょうね。

それ以外だと、NewJeansがやはり気になります。彼女たちが出演することで万単位のチケットが動いたという話もありますし。最近はアジア圏をルーツに持ちながら、グローバル規模の人気を獲得しているアーティストが増えている。昨年のサマソニではリナ・サワヤマやビーバドゥービーが話題になりましたけど、NewJeansはその流れの一つにも捉えられる。どんなステージを見せてくれるのか楽しみです。

女性グループでいうと、自分がインタビューさせてもらったFLOは、正統派のR&Bを継承していますよね。NewJeansはクラブミュージック的なサウンドがベースにあるわけですけどそのデザインや見せ方という点では、両者ともに90年代〜2000年代のカルチャーをリファレンスにしていて、同じ潮流に位置付けることもできるのかなと。





小熊:FLOも含めて、UKのニューカマーをフックアップしてきたサマソニの伝統は今年も健在ですよね。R&Bならゲイブリエルズ、ロックならウェット・レッグ、ザ・ラウンジ・ソサエティといったダン・キャリー組も出ますし、個人的に驚いたのは女性デュオのノヴァ・ツインズ。「グライムを通過したレイジ・アゲインスト・ザ・マシーン」とでも言うべき音楽性で、生で観たら相当かっこいいはず。それこそ、サマソニはかねてからラウド系も積極的にブッキングしてきたわけで、同じ日・同じくMOUNTAIN STAGEに登場するBABYMETALやエヴァネッセンスのファンにも観てもらいたいです。





矢島:アジアに話を戻すと、SOL(TAEYANG)が出演するのもいいなと思いました。彼はBIGBANGのリードシンガーですけど、そもそもBIGBANGがいなかったらBTSもあんなに成功していなかったかもしれないし、アジアのアーティストが世界中で認められている現在の土壌を作ったという点でも功績が大きい人。アジアのアーティストが多数出演する中、過去にBIGBANGの一員としてサマソニに出演している彼がレジェンドとしてMARINE STAGEに帰ってくるのもストーリーとして美しいなと。

小熊:今年はボーイズグループの存在感も際立ってますね。ジャニーズWESTから(BIGBANGと同じくYG所属の)TREASUREまで、国や事務所の垣根を超えて集うという。

矢島:HYBEからはENHYPEN、BMSGからは社長のSKY-HIとBE-FIRSTに加えて、今年デビューしたばかりのMAZZELも出ますしね。





つや:ここ数年で、アイドルグループの出演が一気に増えましたよね。

矢島:「アイドルとは?」「ロックとは?」といった設問自体がもはや時代錯誤だと思うし、旬なポップスターを呼んできたらこうなっただけ、という気がします。

つや:たしかに。音楽的にもヒップホップやクラブミュージックを採り入れた、先進的なポップスになっていますしね。

後藤:バンドによる生演奏を絶対的な是としない文化は、もはや世界中に根付きましたよね。トラックメイキングの進化は音楽をより複雑でユニークなものにしていると思うし、パフォーマーが演奏から解放されて、歌やラップに集中できるという点でもいい。そういう多様な音楽のあり方をアイドルグループは肯定しているように思います。身体一つでライブをやれるってこと自体がかっこいいもんね。



矢島:あと、ザ・キッド・ラロイも楽しみです。彼がジャスティン・ビーバーとコラボした「Stay」という曲は、10代後半〜20代前半のアーティストに取材すると、影響を受けた曲としてよく挙がるんですよね。例えばダフト・パンク「Get Lucky」やビリー・アイリッシュ「bad guy」のように、音楽シーンに大きな影響を与えた曲として後年に振り返られるんじゃないかと思っていて。

この日のMARINE STAGEはザ・キッド・ラロイやSOL、ケンドリックからリアムまで目白押しですし、マカロニえんぴつはオアシス大好きでオマージュもたくさんしているから、彼らがタイムテーブルの序盤に登場するのもいい流れだと思います。

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