DEAN FUJIOKAが語る初めてのJ-POPへの挑戦、1番価値のあるもの

―一方で、「Stars of the Lid」と「Final Currency」は、これまでのDEANさんらしい作詞作曲方法であるわけですよね。

「Stars of the Lid」はループミュージックで、ワンセクションのみをひたすら繰り返していて。その中でバース扱いの部分があったり、ブリッジ扱い、サビ、ラップパート、クライマックスがあったり。ひたすら練りながら毎回違う側面、美味しさを見せていく自分の得意というか好きなパターンですね。ループミュージックの方が、聞いてる自分の生理的な状態とか体の状態とかも含めてトランスするわけですよ。「Final Currency」のほうは、いわゆる昔自分が好きで聞いてたトリップホップとか、ダウンビートというか、ちょっとローのビートが重い感じで。作家として好きなパターンの楽曲ですね。例えばクラブとかに行って聞きたいビート感っていうか。

―「Final Currency」は、ストリングスの音色や音像が特徴的ですよね。

この曲は、自己犠牲とその真実性についての歌だと思っていて。ストリングスって、タイムレスというか、時空を超えるのにすごくいいんですよね。視点が人間の世界じゃなくなるというか。1つの人生じゃなくて何世代も超えて超越していくような話をするときに、すごく効く。でも、決して美しいだけではなく、ビートの方は結構ゴリゴリっていうか。大地を感じるというか、もうちょっと原始的なものにしたいなと思って。

―歌詞についてはいかがでしょう。

歌詞は、さっき言った自己犠牲っていう概念があって。僕が日本の俳優の仕事で2回演じさせてもらった五代友厚さんのイメージを強く持ちながら書いた曲でもありますね。当時の明治の先輩たちが後世の人々のために何を残すかを考えた際に、その思いってどういう音色とかBPM、声のトーンなのか、どうやったらその思いが経験として感じられるんだろうと考えながら作ったり、歌詞を書いたり、ミックスしたりしました。

―日本語に訳すと「最後の通貨」ってことですよね?

人間において、いろんなCurrencyがあるじゃないですか? 円とかドルとか仮想通貨とか。すべての人において1番最終的な通貨は、時間であると思うんです。イコール命である。自分は音楽をやるために時間を使い、同じ時と場所で物語を一緒に旅して、最終的に同じところに到達することに命をかけてるわけですよね。故に「Final Currency」っていうタイトルにしたんです。

―DEANさんの楽曲は、現代社会との結びつきも強いので、仮想通貨のことを意識しているのかと思いました。

もちろん、それもありますよ。ブロックチェーンの形とか、Web3とか、AIとか、もちろんそういうのって前に進むために必要な技術なわけですけど、つまるところオールドマネーも全ては人の命の結晶なわけですよね。お金をかけてお金を増やしたり減らしたりする資本主義のルール、魂をやり取りしてる感覚に近いものがあるなっていつも思うんですよね。だから時間が最終的には1番価値のあるもので、それがもし交換可能なものになるんだとしたら、それが「Final Currency」であるし、そうじゃなかったとしても、自分においては「Final Currency」なわけですよね。それを使って自分は音楽っていうものを等価交換というか、生み出したり届けたりしてるって。

Rolling Stone Japan 編集部

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