キタニタツヤが語る、「抗うこと」の美学と「スカー」へ込めた想い

そんなキタニが2022年11月にリリースした5曲入りシングル「スカー」。表題曲は、TV アニメ『BLEACH 千年血戦篇』オープニングテーマとして書き下ろされたものだ。「あの作品はやっぱり映像のイメージが強烈で。特に冷たい風景が多い印象だったので、それを音に反映させていきました。最初に話した『うなぎ鬼』にもスラム街のような荒凉とした背景が描かれていて、それを見た時も同じように感銘を受けて『これを音でどうやって表現できるだろう?』と考えた。音の選び方って無限にあるので、とっかかりとして映像から刺激を受けるというか、自分の網膜に刻まれているイメージが音に反映されることは結構多いかもしれないですね」



とにかく、どの曲も凄まじいほどの情報量。ファンク、ロック、ジャズ、さらには民族音楽まで取り込むその音楽性は、いったいどのようにして培われたのだろうか。

「サブスクの影響はやっぱり大きいと思います。それまでは自分が持っているCDだったり、知っているアーティストだったり、調べうる範囲の音楽とその隣にある音楽くらいしかたどり着けなかったけど、サブスクがあれば『こういうのが聴きたい』と思った時にすぐ再生できるじゃないですか。今は本当になんでも聴けるから、まさにインターネットのおかげだなって。サブスクが当たり前にある、僕よりも年下のクリエーターと話していてもそれは強く感じます。彼らにはルーツみたいなものもないんですよ。ジャンルで聴いていなくて、『このアーティストのこの曲と、このアーティストのこの曲が好き』みたいに曲単位で聴いている。ジャンル的には全く脈略がないように見えるけど、ちゃんと本人の中には脈絡がある。それがすごく面白いし、自分の中にもそういう面はあるなと感じています。いろんなジャンルの音楽を聴きまくっているので、ロック的な要素は相対的に薄まってきている気がするし、あえてそこを出そうと思えばいつでも出せるような感じになっていますね」

Photo = Mitsuru Nishimura Styling = Yuji Yasumoto Hair and Make-up = Tatsuya Suzuki

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