「SHURE」が初めて作ったノイズキャンセリングBluetoothヘッドホンを使ってみた

オーディオ機器ブランド「SHURE」としては初の"ノイズキャンセリング機能"を搭載したBluetoothヘッドホンAONIC 50(© Shure Japan Limited)

オーディオ機器ブランド「SHURE」にとっては初の"ノイズキャンセリング機能"を搭載したBluetoothヘッドホンAONIC 50が発売された。長年におよぶステージやスタジオでの経験から生み出したSHUREならではの音質と、雑音を除去するアジャスタブル・ノイズキャンセリング及び、外音取り込みモードも搭載。最長で20時間のバッテリーによって、長時間途切れることなく使用することも可能だという。

SHUREといえば、音楽好きならマイクのトップメーカーの一つとして知られていることはご存知だろう。中でも、優れた耐久性と特に中低域の集音性に定評があるSHUREのSM57とSM58は、ボーカルやエレキギター、サックス、スネアドラムなどをレコーディングするときによく使われ、非常に汎用性の高いダイナミックマイクとして世界的に有名である。手ごろな価格なので、プロからアマチュアまで幅広く使用されている一方、マイケル・ジャクソンが名盤『スリラー』のボーカル録音に、SM7Bを用いていたという逸話もある。

もともとは1925年、イリノイ州シカゴで無線機部品の小さな卸売業者シドニー・シュアにより創業されたSHURE。のちにエルヴィス・プレスリーが愛用した通称ガイコツマイク(モデル55)を1939年に開発すると、その高品質な性能により「世界で最も認められたマイクロホン」としての評価を獲得する。

そんな「マイクのSHURE」がヘッドホン市場に参入したのは、2009年にはSRHヘッドホンシリーズから。「イヤホンのメーカー」としては、それより以前、1990年代後半にプロ用のインイヤーモニターシステム、Eシリーズを開発。iPodなどデジタルオーディオプレーヤーの普及にともない、高音質イヤホンの代表格として広く知れ渡るようになっていた。ここで紹介するAONIC 50は、そんなSHUREが2020年に発表したイヤホン/ ヘッドホンの新シリーズ「AONIC(エオニック)」の一つである。

前置きはこのくらいにして、さっそく試奏してみよう。フラットに折り畳んで収納出来る、専用の保護用携帯ケースから出してみる。無骨だが、どこか可愛らしさも感じさせるデザインは、SRHシリーズを受け継いだものといえよう。334gはなかなかの重量だが、装着してみるとそれほど重さを感じさせない。分厚いヘッドバンドと、柔らかく厚みのあるイヤーパッドのフィット感も快適で、これなら長時間使っていても耳への負担は少なそうだ。


© Shure Japan Limited


操作はとても簡単。R側のユニットに搭載された電源ボタンを押すと、自動的にペアリングモードに入り、手元にあるBluetooth対応のデバイスと繋がるようになっている(新たに別のデバイスとペアリングする場合は、電源を一度オフにしてから6秒間押し続けると、「Bluetooth pairing mode」とアナウンスされる)。また、再生/一時停止、電話の応答/コール終了、ボリュームの上げ下げ、2レベルに調整できるアクティブノイズキャンセリング(ANC)も、全てR側のユニットに搭載されている。

実際に聴き心地を確かめるため、まずはビリー・アイリッシュの「bad guy」を(ANCオフの状態で)聴いてみた。力強い4つ打ちのキックと印象的なベースリフの重低音が、みぞおちの辺りを突き上げるように轟いてくる。そして左右から聴こえてくるビリーの歌声は、耳元で囁いているかのような生々しさ。ブレス(息継ぎ)やリップノイズ、声を切るときの余韻なども、立体的な音像の中で埋もれず再現している。

続いて、トラヴィス・スコットがルドウィク・ゴランソンと共に書き下ろした、映画『TENET』の主題歌「THE PLAN」を聴いてみる。こちらは「bud guy」よりもさらに音のレンジが広く、地鳴りのようなキックと、その上を蠢くシンセベース、エフェクトされたトラヴィスのボーカル、高域で鳴らされるパーカッションやハイハットの音が綺麗に棲み分けされ、その間を埋めるように鳴らされるシンセのオーケストレーションも、前後左右の距離感まではっきりと分かる。全周波数帯域で様々なフレーズが飛び交っているのに少しも窮屈に感じないのは、AONIC 50によって再現されたサウンドスケープの大きさや広がりに拠るところが大きい。

先日リリースされた、ピノ・パラディーノとブレイク・ミルズによる共同プロデュース作『Notes With Attachments』は、クリス・デイヴ(ドラムス)やラリー・ゴールディングス(鍵盤)、サム・ゲンデル(サックス)といったシーンの精鋭たちがレコーディングに参加したアルバムで、これをAONIC 50で聴くと、それぞれのプレイヤーによる息遣いまでがはっきりと感じられる。ドラムのゴーストノート、ギターの弦を弾くときのニュアンス、ベースギターの輪郭、それらが鳴らされているスタジオのアンビエンスに耳を澄ましていると、時間を忘れてどんどん没入していくようだ。


© Shure Japan Limited


ANCの効果はどうだろうか。実際に外へ出て試奏してみることにした。筆者は毎朝犬を散歩させながらラジオを聴いているのだが、犬を連れて歩いている場合は車や自転車、人の気配を普段以上に気にしているため、周囲の音がちゃんと聞こえるように片耳だけイヤホンを突っ込んでいる。今回、イヤホンの代わりにAONIC 50を装着し、ANCのモードを切り替えながら外を歩いてみた。すると、耳栓タイプのイヤホンよりも周囲の音が良く聞こえる。これなら安心して犬も連れて歩けそうだ。

ちなみにShurePlus PLAYアプリを使うと、ノイズキャンセリングレベルを2段階切り替え、と外音取り込みのレベルを調整するなどのカスタマイズが可能。例えば、電車の中で音楽に没入しながら、駅員のアナウンスは聞き逃さないようにすることが出来るわけだ。

新型コロナウイルスの感染拡大により、昨年から自宅で過ごす機会が多くなった。配信ライブや映画を観る機会やリモートワークも増え、イヤホンやヘッドホンが以前よりも身近になって、その音質や機能にこだわりたい人もきっと多いだろう。そんな時は、ぜひともSHURE AONIC 50を選択肢に入れてほしい。




製品名:AONIC(エオニック)50ワイヤレス・ノイズキャンセリング・ヘッドホン
カラーバリエーション:ブラック・ブラウン ・ホワイト
製品スペック:Qualcomm® aptX™、aptX™ HD、aptX™ Low Latency audio、Sony LDAC、AAC、SBC
バッテリー:連続再生時間 20時間
付属品:2年保証、AONIC 50ワイヤレスヘッドホン、キャリングケース、3.5mmオーディオケーブル、
USB-C充電ケーブル
https://www.shure.com/ja-JP/products/headphones/aonic50


Text by Takanori Kuroda

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