ブラック・サバスと「定番」の新解釈、清春が語るドクターマーチンの魅力

清春(Photo by Tim Gallo for Rolling Stone Japan)

生誕60周年を迎えるドクターマーチンと伝説のハードロック/ヘヴィメタル・バンド、ブラック・サバスとのコラボシューズが10月1日に発売された。     

ドクターマーチンの定番である8ホールと3ホールの2種類のシューズに、リリース50周年を迎えるブラック・サバスの1stアルバム『黒い安息日』と2ndアルバム『パラノイド』 のアートワークが投影され、“ヘヴィメタルのゴッドファーザー”とも評されるバンドに敬意を示したコレクションとなっている。 

今回、そんなレジェンダリーなシューズを見事に履きこなしてみせたのは、邦ロック界のレジェンドの一人、清春。アーティストとしてはもちろん、ファッションアイコンとしても多くの人に影響を与えてきた彼に、ドクターマーチンの愛用歴とこのシューズの魅力について語ってもらった。

―今回、ドクターマーチンとブラック・サバスのコラボシューズを履いていただいたわけですが、清春さんとドクターマーチンとの出会いっていつ頃だったのでしょう?

高校生の頃かな。先輩が履いていたのを見て、うらやましくて。僕ら世代が好きだったようなバンドだと、メンバーのうち一人は必ずドクターマーチンを履いていましたからね。それで、名古屋まで出掛けて派手な洋服が置いてあるようなお店で買ったのが最初です。

―どのアイテムを持っていたんですか?

普通のシンプルな黒い8ホールも持っていたし、チェリーレッドも持ってました。今でも実家に行ったらあるんじゃないかな? 黒夢の時も結構履いてましたよ。後期はパンクっぽいファッションでやっていたので、チェリーレッドの長めのブーツを黄色い紐で履いたり。確か『Like @ Angel』のPVでも履いてたはずです。

-最近では?

一時期離れてたけど、また最近いいなと思っているところです。ヨウジヤマモトとか自分が好きな服や近いところで履いている人をよく見かけるのもあって。あと、娘もドクターマーチンが好きで、何回か一緒に展示会に行かせてもらっています。

―ブラック・サバスは好きでした?

実は僕、ブラック・サバスもですけどハードロック全般あんまり詳しくないんですよ(笑)。何年か前に、OUTRAGEやLOUDNESSとライブをやった時にセッションでカバーしたことがあったくらいで。


Photo by Tim Gallo

―何をカバーしたんですか?


「パラノイド」だったと思います。それほど興味なかったんですが、カバーすることになって、ちゃんと聴いてみたんですよ。そしたら無茶苦茶カッコよかった。あとはオジー・オズボーンの存在はすごいなと思いますね。歌だけじゃなくて伝説とか生き方とか含めて。ただ、僕らはどちらかと言うとジャパメタ世代であまり洋楽ハードロックやメタルは聴いてこなかったし、強いて言えばモトリー・クルーとかガンズ・アンド・ローゼズに少し触ったくらいで、ブラック・サバスくらいになると、もう伝説の人というか。写真がぼやけちゃってる感じの存在だなぁと(笑)。

「定番」の色あせない魅力


−校長室に飾ってある三代前の校長先生みたいな(笑)。ブラック・サバス自体は2017年にラストライブをやって一応活動は止まってますが、トミー・アイオミは将来復活する可能性を示唆してますし、フロントマンであるオジー・オズボーンは71歳でバリバリの現役ですからね

それがすごいですよね。オジーは今も海外のフェスとかで一緒に若手のモダンヘヴィのバンドの人たちとやってるじゃないですか。今年出したオジー・オズボーンのソロアルバム『オーディナリー・マン』もカッコよかったし、アルバムの中の「ストレート・トゥ・ヘル」のPVもすごくカッコ良い。50年前のアルバムが革新的でしかもカッコよくて、更に今でも最新のものに触れて作品を生み出してるのが、単純にすごいよね。

−そして、今回ドクターマーチンにプリントされている 1stアルバム『黒い安息日』も2ndアルバム『パラノイド』のどちらもハードロック/ヘヴィメタル史における伝説のアルバムです。それがシューズという新しい表現手段として登場したのも、すごいことだと思うんです。

本当にそうだね。そもそも、ドクターマーチンって昔はパンクスの象徴のような存在だったじゃないですか。それがハードロックバンドとコラボレーションするというのに時代の流れと変化を感じますよね。昔はパンク好きとハードロック好きって絶対分かり合えなかったのに、めちゃくちゃ分かり合えてるこれ(笑)。

−融合してますよね。

あれから30年以上経ってね。世界では分断ばかりなのに、すごいことだと思いますよ。


ブラック・サバス『黒い安息日』のアルバムグラフィックが施された、定番の8ホールブーツ(Photo by Tim Gallo)

−確かに。それに、こういうプリントに主張がある靴って、昔は履きにくかった感じもありましたけど、今は違和感なく履ける感じもします。

確かにそうですね。最近ひとが街で派手な靴を履いてても気にならなくなったかも。昔は「何その靴?」って言われたけど(笑)。『黒い安息の日』がプリントされた8ホールなんか、以前だったら履く人を相当選んだと思うけど、今は普通に履きこなせる人、多いと思うな。まぁそれだけデザインが優れているんだと思う。それとドクターマーチン自体がアイコンとして浸透してるのが大きいよね。今年はコロナでイベントがほぼ中止になったけど、若い子達のライヴやフェスでドクターマーチンは完全な定番らしいもんね。

清春が提案するスタイリングとは?

―そうですね。ちなみに、清春さんは『黒い安息の日』が全面にプリントされた8ホールと、『パラノイド』がプリントされた3ホール、この2つをどう履きこなしますか? 

個人的には8ホール派なんですよ。でもこの3ホールは甲の部分に“BLACK SABBATH”とエンボスが同色で入っててこだわり感じますね。履きこなしという点でいうと、僕は普段よくペインターパンツを履いてるんですけど、そういうのと合わせても良いし、普通にブラックジーンズとも合いますよね。あとは衣装としてもモードなフレアーパンツとかに合わせますかね。

―『黒い安息の日』の総プリントものも一般的になってきたとは言え、履き方には工夫がいると思うんですが、何かアドバイスはありますか?

柄をちょっとだけ見せるよりは、全部見せちゃった方がいいと思う。ハーフパンツで靴下出して履くのも良さそうです。


Photo by Tim Gallo

−敢えて短めのパンツで、歴史的な作品のモチーフを全部出して履いてみようと。

うん。僕は別にブラック・サバスを知らなくても良いと思うんですよ。知らない人が履いていて、ハードロック好きのおじさんとコミュニケーションが生まれるきっかけになったりするかもしれないしさ(笑)。あ、バンドTを詳しくない人が着るなみたいなのあるじゃん?僕はそういうのクソだと思ってて(笑)。プリントやデザインが気に入ったなら着ていいんだし、昔の伝説のバンドのアルバムジャケットって今はもはやファッションや雑貨に使う為にあるものっていう解釈でいいんですよね。完成度の高いアートワークの有効再利用というか。このマーチンももちろん普通に履いていいけど履かずに部屋に飾るだけでもアリなんだと思うんですよ。単純に見た目カッコいいから、バンドに興味がない人も欲しくなるよね。あ、その時お店でカッコいいと思ったら絶対に買った方がいいですよ。意味なんか知らなくてもカッコいいものはカッコいい。もちろんブラック・サバス好きな人、ドクターマーチンマニアの人にはレアアイテムだし間違いなく刺さるよね。

―確かにそうですね。

その点で言うと、3ホールの方は柄の主張が少ない分、本当にサバスを好きな人が選びそうなイメージかも。僕は普段あまり3ホールやローカットの革靴を履かないけど、この『パラノイド』の3ホールはおしゃれですね。ちょうど最近、街で見かけた若い子が3ホールを履きこなしてて、おしゃれだなと思ってた。

男にとって靴は評価の基準の一つ

−足元のチェックするんですね。

見ますね、靴は。ポリシー感じるじゃないですか。その人の好きなジャンルとかもわかるので。

−街で見かけた人のコーディネ―トを参考にしたり?

参考というか、靴は評価だと思うんです。男の場合ですけど。

−というと?

歳を取ると車とか腕時計とかで評価されるけど、若い時なら靴なんじゃないかな、と。持ってるアイテムの中で靴が一番消費するものでもあるし、でもTシャツみたいに安くないっていうところで。靴を見ればその人の好きなファッションとかこだわりが分かって、「この靴履いてる人いいな」って憧れたり。少なくともドクターマーチンはそういう存在でした。


アルバム『パラノイド』のアートワークが足首にデジタルプリントされ、バンプにはエンボス加工のブラックサバスのロゴで仕上げられた3ホールシューズ(Photo by Tim Gallo)

−ドクターマーチンは進化し続ける伝説ですよね。そこに不滅の名作『黒い安息の日』と『パラノイド』のジャケットがデザインとしてあしらわれている。伝説×伝説ですよ。

すごいことですよね。オジーも欲しいんじゃないですか?

−清春さんが70歳くらいになった時に、昔のアルバムジャケットをブーツにしたいって言われたらどう思います?

超嬉しいですよ。こうなれるアーティストって売り上げや実績だけではない、理屈じゃない人しかいないので。素晴らしいことだと思います。

−そういう清春さんも、日本ロック界のレジェンドだと思いますよ。

いやいや、僕なんか狭いジャンルの中だけだから。

−日本のロックシーンの中でも、清春さんみたいに音楽史に名を残していて、ファッションアイコンで、スタイルも生き様もすべてを兼ね備えている人って正直いないです。

そんなこと全然ないですよ。いつ辞めよう?ってずっと言ってますからね、ここ十何年くらい。

−それは肉体的にしんどいからですか?

それもあるし、人生をどう使うかというところとか、娘達が大きくなって世代交代みたいな気持ちも出てきたりとか。あとは単純に年齢的にあと何年やれるだろう、どこまで手が届くんだろうっていうクエスチョンもあります。日本って本当に特殊な国で、実力と実績が比例しないですからね。

−それでも続けているのには何か理由があるんですよね?

ずっと支持してくれるひとの絶対数がいるというのはありますね。あるひとつの美学を追求していると、少数派だけど絶対に好きな人がいて、時代がどう流れても負けないんですよ。オジーほどではないけど、僕も国内でそれを立証している何人かのうちの一人なのかなとは思います。

継続することに意味がある

−今の若い人が清春さんの音楽を聴いたら、改めてその素晴らしさに気づいててくれるはずです。

若い子たちに自分の親くらいの歳の人の音楽を聴かせるのって、至難の技だと思うよ。昔と違ってCDを買う機会が減って、音楽自体に興味がない人も多い。でも、今の若い子たちが30歳、40歳くらいになった時に「このひとスゴかったんだ」って少しでも気づいてもらえたら嬉しいとは思います。一度ファンから離れても、僕がまだ続けていることで戻ってきてくれる人や、親子二代で応援してくれる人もいますよ。それぞれの人生にいろんな流れがあって、また帰ってくるタイミングで自分が存在しるっていう、そのすれ違いやぶつかりが何度もあって伝説になっていくんだと思うんです。「まだ清春さんやってるんだ、私も頑張ろう」とか、「また聴いてみよう」とか。今回のコラボシューズのような、まったく別のものをきっかけに音楽を聴いてファンになってくれる人もいるかもしれない。だから続けることには意味があるんでしょうね。


DR. MARTENS X BLACK SABBATH COLLECTION



「1460 BLACK SABBATH」8 ホールブーツ

UK3-11 (約22-30cm)¥26,000+ TAX

定番の8ホールブーツに『黒い安息日』のアルバムグラフィックが施されている。パープルのアイレット、平紐のレース、シューレースの隙間からは、ブラック・サバスを象徴する空飛ぶ悪魔/天使「ヘンリー」が見えるという粋な演出も。



「1461BLACK SABBATH」3 ホールシューズ
UK3-11 (¥約22-30cm)¥22,000 + TAX

3ホールシューズでは、パープルのアイレット、「ヘンリー」モチーフ、ヒールループに、セカンドアルバムの『パラノイド』のアートワークが足首にデジタルプリントされ、バンプにはエンボス加工のブラックサバスのロゴで仕上げられ、2色のシューレースが付属している。

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【関連記事】ブラック・サバス『黒い安息日』『パラノイド』発売50周年、ドクターマーチンとのコラボモデルを発表

ドクターマーチン・エアウエア ジャパン
https://jp.drmartens.com/category/COLLABO_BLACKSABBATH

清春
1994年 黒夢のヴォーカリストとしてメジャーデビュー。そのカリスマ性とメッセージ色の強い楽曲で人気絶頂の最中、1999年突然の無期限の活動休止を発表。同年sadsを結成し2000年TBS系ドラマ「池袋ウエストゲートパーク」の主題歌「忘却の空」が大ヒット。同曲を収録したアルバム「BABYLON」はオリコン1位を記録する。2003年 DVDシングル『オーロラ』でソロデビュー。2004年 David Bowie JAPAN TOUR 大阪公演にオープニングアクトとして出演。2020年3月に10枚目のオリジナルアルバム「JAPANESE MENU/DISTORTION10」をリリース。10月30日には初の自叙伝「清春」発売予定。
https://kiyoharu25.com/


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