ソランジュら絶賛の注目チェリスト、ケルシー・ルーが日本で神秘的パフォーマンスを披露

ケルシー・ルーのパフォーマンス写真(Photo by Yuichiro Noda)

これまでにソランジュ、サンファ、ブラッド・オレンジ、マライア・キャリー、スクリレックス、ジェイミーXX等と共演を果たし、今年の4月にデビュー・アルバム『ブラッド』をリリースしたばかりの注目のチェリスト・シンガー、ケルシー・ルーが、日本を代表する現代美術作家、杉本博司氏が2017年に手掛けた複合文化施設「小田原文化財団 江之浦測候所」にて海外アーティスト初となるパフォーマンスを実施。本日ライブレポートが到着となった。

現代美術作家・杉本博司によって設立された同施設は、杉本氏が「自らの集大成となる作品」と表現する、同氏の記憶や意識の原点を辿り集約させた場所。ケルシー・ルーも同じく、自身の記憶である過去や感情を自己との対話を通して音楽に昇華させる。強い生命力を放ち前進し続ける両者の表現が、日没の50分間だけにあらわれる海景と共鳴し合う。

施設屋外にむき出しに設置された“古代ローマ円形劇場写し観客席”に囲まれる、光学硝子舞台に降り立ったルーは、日本古来の伝統色で夕暮れを表す赤色と影を意味する黒色の衣装を纏い、自分の居場所を確認するかのように舞台の四隅をチェロが横たわる中央に向けてゆっくりと歩き始める。前日に施設内で収録した鳥のさえずりや自然の音を鳴らしはじめ、順にチェロの音とともに完全即興のパフォーマンスをはじめた。チェロを弾き続けたまま、歌いはじめた彼女の優しくも強い歌声に呼応するように、次第に森の方から実際に鳥の囀りが聞こえはじめ、自然のハーモニーが生まれる。自身の両親との過去や不安と恐怖に面と向かって生きた末に辿り着いた希望や愛について唄った「ブラッド」をアカペラで漠たる空に語りかける。時に縦にも横にも体を揺らしながら歌い、片手にチェロを抱きふたりで海を眺めたり、チェロを横に置きひとりで舞台の下に広がる自然に向かって歌い、光学硝子に触れる自分の足音だけを感じ、彼女が起こす静と動の波打ちが光、自然、境界線なく広がる水面と空すべての生命を一体化させる。最後には出だしと同じく、舞台の四隅を歩み、感謝を示すように観客に向かってにこっと笑顔を浮かべ、水面に浮かぶようにみえるチェロと舞台をあとにした。日没に向かうたった50分の間で、すべての自然がルーの味方となり、天空へと響く歌声か?私たちを漠色の世界へと導いた。消える太陽に照らされたチェロは神秘的な光を輝かせ、ルーの歌声に呼応するように鳥がさえずり、地球にあるすべてのものが一体化した一瞬の刻を永遠に感じさせていた。

(文: Yoshiko Kurata)



なお、ケルシー・ルーは本日5月29日(水)渋谷WWW Xでの単独公演を行う。こちらはバンドセットでの公演を予定しており、今回とはまた一味違ったサウンドが堪能できそうだ。詳細は以下の通り。



Kelsey Lu at WWW X
日程:2019年5月29日(水)
会場:Shibuya WWW X
出演:Kelsey Lu
with Special Guest: M.NIGHTINGALE
時間:開場18:30 / 開演19:30
料金:当日¥5,500(税込/ドリンク代別/オールスタンディング)
公演詳細:
https://www-shibuya.jp/schedule/011042.php


最新アルバム
『ブラッド』
配信中
試聴・購入リンク:
https://lnk.to/KelseyLuBlood

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