米中間選挙:フロリダ州初の黒人知事なるか? 民主党候補の挑戦

ギラムが知事として実現したい思う内容と、選挙に勝ったらやらねばならないこととは、とてもかけ離れているだろう。彼は現職のリック・スコットの政策を覆し、国が推進する法人税の引き上げによる国民皆保険制度の実現を支援することで、80万人以上のフロリダ州住民にメディケイドを拡大したいと考えている。また、ほとんどの公金が私立学校へと流れ、教師の給与レベルが全米45位にランクしているような公的教育システムも改革したいと考えているという。さらに彼は、「60秒間に60連射可能な銃など市民社会に必要ない」とも主張している。言うまでもなく次期知事は、2020年の国勢調査の結果に基づく地域再編成に影響力を持つ。さらに、現在空席となっている州最高裁判所の3つの席を埋める必要もある。これは裁判所のイデオロギーのバランスにかかわる。

フロリダ州の共和党は、過去20年間に渡り州政府の3つの権限(知事、州上院、州下院)を牛耳ってきた。さらに与党である共和党議員は、ギラムの足を引っ張ろうと待ち構えている。

「私のビジョン通りにこの州をあるべき姿に持っていくのは、とても負担の大きな仕事になりそうだ」とギラムは言う。「しかし自分ひとりでは成し遂げられない。オバマ大統領の二の舞いは避けたい。当時は勢いに乗って“素晴らしいことをどんどんやってやろう”という感じだった。しかし最終的に皆夢破れて家へ帰っていった」

ギラムは、州の統治は集団的なプロセスである上に、対立する党からの支援も期待できない、ということを理解しているようだ。それゆえにギラムとフロリダ州の民主党員は、ギラムを知事にするだけでなく、同士の民主党員を議会へ送り込むことにも力を入れているのだ。「部隊を送る。我々には部隊が必要だ」とギラムは言う。彼は自分自身の選挙の行方と同じくらい、苦戦している民主党議員候補の選挙にも気を配っている。しかしギラムは、歴史を作ったり象徴になるような専門の教育を受けてない。

「彼は、公共政策を学んだ人間です」と、レットマン=ヒックスはギラムについて言う。「彼はキャリアにおける全ての決断を、準備万端で着実に行ってきました。選挙によってただ役職に就くのを望んだ訳ではありません。有力政治家になりたいと思って必要な準備をしている訳でもないのです」

ギラムをはじめ、ステイシー・エイブラムス(ジョージア州)とベン・ジェラス(メリーランド州)の3人の黒人知事候補は、同日に当選する可能性があるが、その内の1人だけが“米国初”の黒人州知事となる。

さらに、ギラムが勝利した場合に行使できる権力は、とてつもなく大きなものとなるだろう。人種差別に立ち向かうことを厭わない有望な候補者は、全米各地に存在する。しかしフロリダ州ほど大きな州の知事に立候補している者は誰もいない。フロリダ州の人口は全米第3位で、2020年の大統領選挙時には民主党支持が多数を占める可能性がある。しかしトランプ時代の今、特に人種差別やトランピズムに対するギラムの異議の唱え方こそ、来る選挙サイクルに備えて民主党が準備していると思われる、ますます多様化する候補者たちの手本となるべきだ。

Translated by Smokva Tokyo

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