レニー・クラヴィッツの10枚目となるアルバムのジャケットを見たら、きっと驚くだろう。この男は今年50歳になったが、彼のシャツから覗く体は実年齢の半分の若さにしか見えない。体つきだけではない。クラヴィッツの音楽はいつも時代を欺いてきた。2011年に発表した『ブラック・アンド・ホワイト・アメリカ』は、現代盛んに報じられる人種問題に対して、ポスト・ヒップホップ的に思いを巡らせたものであった。それに対し今作『ストラット』は、彼を夜も眠れないようにするほかの何かからインスピレーションを得ている。“俺はお前の喜びの奴隷だ/弾けるのが待ちきれない”と、このアルバムの幕を開ける1曲目「セックス」の中で歌い上げる。本作は、彼の90年代初頭を回顧させる、力強いバック・トゥ・ロックな作品に仕上がっている。

クラヴィッツは『ストラット』を、バハマにある自身のスタジオで、ほとんどの楽器を自ら演奏し収録した。このアルバムは、エネルギッシュで、多様な要素が含まれているように感じる。オールドスクールR&Bや、ストーンズ的なカントリーロック、そして力強い「ザ・チェンバー」ではエルヴィス・コステロをプリンス風の形で提案している。しかしながら彼らしさは、「ダーティー・ホワイト・ブーツ」で“下着を脱いでその宝物をこっちによこせ”と歌うところや、足を踏みならす「ストラット」のファンクロックに感じられる。このアルバムを締めくくるのは、爆発的なショーケースとして変貌させたザ・ミラクルズのクラシカルな1965年のナンバー、「ウー・ベイビー・ベイビー」のカヴァーだ。クラヴィッツにとって、ものごとを天高く昇華させることが、最も誠意ある喜ばせ方なのだ。

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