堂々とした存在感を放ち続けるバンドインターポール。2000年初期に炸裂した数々のギター・バンドの中でも圧倒的といえるだろう。ちなみに、2000年初期とはロック・ファンが、携帯電話ではなくタバコの渦巻く煙の間からライブを観ていたような時代のことである。

彼らが矢継ぎ早にリリースした『Turn on the Bright Lights』(2002年)と『Antics』(2004年)は名盤だ。4年ぶりとなる本作は、ベーシストカルロス・デングラー脱退後の初の作品となる。彼らは贅沢なほどロマンティックなファンタジーを作る、優れた感覚を失ってはいない。ダニエル・ケスラーは6弦のカテドラルでチャイムを鳴らし、ポール・バンクスはアルバム1枚分に相当する数の哀れな女性達を集めて歌い上げる。

『エル・ピントール』のミックスは、シンセサイザーが多用されたリヴァーブの壁のせいで、まるでバンクスが冷蔵庫の中で歌っているかのように聴こえてしまう。けれども、「Anywhere」「My Desire」、そしてRushの「2112」への遠回しなアンサーソングともいえるようなメタリックなサウンドの「Ancient Ways」の仕上がりは見事だった。

ちなみに、この曲の歌詞には“古くからの方法などクソくらえ”とある。ごもっともである。しかし、中でもこのアルバムの素晴らしさを凝縮した代表曲を1曲だけあげるとすれば、「My Blue Supreme」になるだろう。“こんなことは1週間で癒えることはない”と独特の雰囲気を持った絶望への熟考と、ギターの癒しの力を見せつけるこの曲は、インターポール史上最高の楽曲である。

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