1968年にマイク・ブルームフィールドから“史上最高の凄い奴”と紹介されたジョニー・ウィンター。アルビノで目の見えない青年は、その時まだ24歳だった。しかし紹介の言葉どおり、彼はフィルモア・ウエストからウッドストックまであらゆる会場で力強いブルースを披露し、技術力を見せつける演奏を披露した。

今年7月に70歳で亡くなってから、それほど熱狂的なファンでなくても再び彼の音楽を聴く人が増えている。ウィンターの遺作となった『ステップ・バック』は、初期にあったような不屈の精神が見られるとは言えない。先にリリースされたボックス・セット『トゥルー・トゥ・ブルース〜ジョニー・ウィンターのすべて』のほうが濃い内容だ。

ビリー・ギボンズ、エリック・クラプトン、ジョー・ペリーといった多彩なゲストが参加する新作は、ウィンターが10代の頃に聴いていた50年代のエレクトリック・ブルースの影響を受けていることは事実だ。しかし当時のレコーディング作品が持っていたエレクトリックなドロドロした感じはない。レイ・チャールズによって有名になった「アンチェイン・マイ・ハート」でのウィンターのサウンドは、バックアップ・シンガーの歌声とブルース・ブラザーズのホーン・セクションに埋もれているし、ポール・ネルソンをフィーチャーした「キリング・フロア」とペリーとの「Mojo Hand」は洗練されすぎていて、演奏は型にはまっている。ハイライトはアルバム後半にやってくるアコースティック・ソロの「デス・レター」。ギブソン・ファイヤーバードなしでも彼が最高のデルタ・ブルースを聴かせてくれることを証明する、レアな瞬間だ。

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