ノエル・ギャラガー、新作と爆破テロを語る「テロリストが憎むものすべてに光を当てた」

Photo by Lawrence Watson

ノエル・ギャラガーが、「恐れ知らずの堂々たるポップ・アルバム」の完成秘話、そしてマンチェスター爆破テロ事件がもたらした「ドント・ルック・バック・イン・アンガー」の重みについて語った。

ノエル・ギャラガーは最近、オアシスが残した輝かしい過去と向き合うことに以前ほどためらわなくなった。昨年公開されたドキュメンタリー『オアシス:スーパーソニック』のヒットを受け、より若いオーディエンスがコンサートに足を運ぶようになったと話す彼は笑顔を浮かべている。わずかなオーディエンスを招いて行われたアコースティック・ライブで、彼はオアシス時代の曲に涙する少女たちを目にしたという。「ライブの後で彼女たちを呼び止めたんだ。『今いくつなんだ?』って尋ねたら、15歳だってさ。オアシスのことを最近になって知ったのかって聞くと、そうだって答えた。それって素晴らしいことだと思うんだよ。何がそうさせるのかはさっぱり分からないけど、キャリアが長くなるにつれて若いファンが増えていくっていうのは、俺たちが時代に流されない音楽を残したっていうことの証だからな」。彼はローリングストーン誌にそう語っている。

「今になって思えば、俺たちはマジですごいことをやってのけたんだよ」

その興奮は彼の最新作『フー・ビルト・ザ・ムーン?』に反映されている。2011年にハイ・フライング・バーズを従えて始動させたソロ・プロジェクトの3作目となる本作は、オアシス時代から見て最もヘヴィなアルバムとなっている。「今までで最もエネルギッシュなアルバムだ」。彼はそう話す。「俺はこれまでずっと、音楽で喜びを表現することをためらってきた。特に最近は、苦悩や困難をテーマにした音楽ばかりだ。日々に喜びを見出し、それを音楽という形で表現することがいつになく難しくなってるんだよ。俺がそういう曲を作ったことは、25年間のキャリアにおいて数える程度しかない。つまり特別なものじゃない限り、俺はそういう作品は出さないってことだ」

アップリフティングなサウンドとは対照的に、本作は真冬の厳しい寒さの中、北アイルランドのベルファストにて制作されたという。「毎日雪で心底ウンザリしたよ」。ややライトな2015年作『チェイシング・イエスタデイ』の制作時、彼は北アイルランド出身のプロデューサーであるデヴィッド・ホルムスに、その楽曲群を異なる方向性でアレンジしてほしいと依頼したという。しかしホルムスは、必要性を感じないという理由でその依頼を却下している。「『むしろ新しいレコードを作ろうじゃないか』って彼が提案したんだ。でも曲がないぜって俺が返すと、彼はこう言った。『今から作るんだよ。スタジオでさ』。面食らったよ、俺はそういうやり方を試したことがなかったからな」

そして2人の共同作業がスタートした。新鮮さを求めていたギャラガーは、使い慣れたアコースティック・ギターではなく、サンプリングによるソングライティングを試みた。「デイヴが『オアシスっぽいな』って言うから『イケてるからいいじゃねぇか』って俺が返すと、彼はこう言ったんだ。『ダメだ、何か新しいことをやってみろよ』」

2人はギャラガーの音楽的バックグラウンドからアイデアを引き出そうとした。「イフ・ラヴ・イズ・ザ・ロー」は、当時聴き込んでいたジェネシスの1969年発表の野心作『創世記』にインスパイアされたという。「初期のジェネシスに完全にハマってたんだ。何であのアルバムが評価されていないのか、まったく理解できないよ」。「ホーリー・マウンテン」のフックは、知る人ぞ知る60年代のバブルガム・ポップのバンド、アイス・クリームにインスパイアされている。「俺が知る限り最高のバンドの一つだ」。ギャラガーはそう話す。「『それを元に曲を書いてみたらどうだ?』なんて言うデイヴに、俺はこう返したよ。『とんでもない無理難題だな』」。運命の愛を声高に讃えてみせる「シー・トート・ミー・ハウ・トゥ・フライ」は、個人的なお気に入りの一つだという。「ブロンディの未発表曲の中でも最高の出来さ」

Translated by Masaaki Yoshida

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