田家:30以上を信じるな。長髪だった僕らの精神的な拠り所でもありましたが、曲名にはANYONEが入りました。
鈴木:はい。要するに『DON’T TRUST OVER THIRTY』ですよ。若いとき、本当にそうでしたよね。30過ぎは全く信用してなかった。
田家:そう(笑)。
鈴木:友人も全員20代だったり、10代だったりで。そういうような時代を過ごしてきて、自分らが30を超えてしまったわけだ。
田家:大問題でしたよね。
鈴木:超えたときの衝撃たるやすごかったですよ。あー、あの30を超えた、どうしたらいいんだろう。大体20代後半に30代の生き方が決まる。30代の生き方が決まって、30代はわりと和やかにいけるはずなんだけど、音楽の世界ではなかなかそうもいかなかった。1970年に音楽を始めたとき、おふくろが「あなた10年経たないと、食べられるようにならないよ」って言ったんです。たしかに30ぐらいになると、ちょっと食べられるようになった。そうではあるんだけど、それに伴う不毛感というか、虚無感、そういったもの。30超えてしまって、若くないなと。ニューウェーブをやったときにお客さんから「ジジイ帰れ」と言われるし(笑)。所謂逆説的、もしくは自虐的な言い方のDON’T TRUST OVER THIRTY。
田家:俺たちがもう30超えているんだから。
鈴木:ええ。曲は全員で作ったんですけど、歌詞は鈴木博文で。
田家:作曲がE・D MORRISONっていう(笑)。
鈴木:E・D MORRISONはアナグラムですね。moonridersのアナグラムでE・D MORRISONとなる。
田家:文字を入れ替えて、新しい言葉を作る、言葉遊び。
鈴木:一昨日から昨日、今日にかけての3日間でこんなにひどい男はいないでしょ(笑)。
田家:家庭人失格(笑)。
鈴木:そう、家庭崩壊の歌です。
田家:こんな男を信じちゃいけないよと。
鈴木:いけないよで、DON’T TRUST OVER THIRTY。30過ぎになったら、こういうことをしてしまうときもあるよってことなんでしょうねー。
田家:この『DON’T TRUST OVER THIRTY』の後に活動休止になるわけですね。
鈴木:言ってみれば1986年は10周年なんです。このときにいろいろなことをやりすぎた。
田家:ライブアルバムも出ました。『THE WORST OF MOONRIDERS』。WORSTっていうタイトルをつけるのも、moonridersらしいなと思いましたけどね。
鈴木:これはジェファーソン・エアプレインのパクリです。それと、ツアーが多かった。ビデオも作った。12インチシングルも作った。ライブを長時間、何時間やれるか試してみようで、3時間超えなんですよ。楽屋に行くと、アンコールやりたくないな……もうくたびれ果てて。でも行くんですね。
田家:そういうDON’T TRUST OVER THIRTYだった。で、再開が1991年になるわけで、そのアルバムからお聴きいただきます。