「朝霧JAM」体験記 新人ライターが人気キャンプフェス初参加、リアルな感想をレポート

 
くるりなど2日目も大充実、初体験の朝霧JAMを振り返って

翌日曜日の最初のアクティビティは朝8時45分からのラジオ体操だ。ポカポカした気持ちの良い陽気のなかで身体を動かし関節を伸ばすのは、根源的な楽しさや満足感がある。体操後は本門寺重須孝行太鼓保存会の和太鼓の演奏だ。人力のドラムンベースとも言える力強さと爽快さで、一気に目が覚めてくるようだった。演奏前にスピーチを読み上げたメンバーの学生が、朝霧高原の自然は地域の酪農家のおかげで保たれているのだと教えてくれた。長年にわたり地域との関わりを深めてきたからこそ、朝霧JAMはこうして20回目の開催を同じ場所で迎えることができているのだと思わされる一幕だった。


2日目の早朝、日の出もまた美しい(Photo by Taio Konishi)


富士山をバックにラジオ体操(Photo by 宇宙大使☆スター)


本門寺重須孝行太鼓保存会(Photo by Taio Konishi)

2日目は環境への慣れもあり、のんびりと過ごしてみた。例えばHelsinki Lambda Clubの演奏を遠くから眺めるように楽しんでもいいし、デュオ編成でやってきたトミー・ゲレロの演奏をぼーっと浴びるだけでも気持ちいい。湘南出身のシンガーソングライター、さらさはMCで、演者はステージから一方的にエネルギーを与えているのではなく、観客からも受け取っていて、この空間はみんなで作っているのだと言っていた。それは心からの言葉に聞こえたし、その理想に最も近い空間が朝霧JAMだと思う。


トミー・ゲレロ(Photo by Taio Konishi)

昼過ぎのRAINBOW STAGEに出演したオーストラリアのチェット・フェイカーはアップテンポなダンスミュージックで登場。自分はそのとき屋台に並んでいたが、列に並ぶ人たちも揺れながら聴いていたのは良い光景だった。ちなみに、このとき注文したキーマカレーチーズローストが筆者の朝霧JAMベストフードだ。パンに乗っかる野菜とチーズの具材にカレースパイスが効いた絶品。おすすめです。


チェット・フェイカー(Photo by Taio Konishi)


ライター・もこみ推薦、キーマカレーチーズロースト。編集・小熊は「ちさん屋」のさくらだんごがお気に入り(Photo by mocomi)

この日初めて知ったシアトルの実験的ジャズユニット、sunkingのライブは、浮遊感と共に身体に響く素晴らしい内容だった。こういった新たな出会いもフェスの醍醐味だ。夕方には、キティー・デイジー&ルイスのこだわり抜いたヴィンテージなビジュアルとロックンロールサウンドが胸に突き刺さる。筆者は彼らのライブを、RAINBOW STAGEから遠く離れた後方にある焚き火越しに眺めていた。火の粉が風になびく景色と音楽の組み合わせは何とも言い難い心地良さで、炎の暖かさもじんわりと沁みてくる。

そのあと、CARNIVAL STARというエリアのDJブースにも足を運んでみた。CAMP SITE Bの奥地にあり、ドッグランなども併設された穴場的エリアだ。時間帯もあって空いていたが、それでもみなが思い思いに身体を揺らす良い雰囲気が保たれていた。5年ぶりの復活だったそうで、リピーターから愛されるのも納得の空間だった。


sunking(Photo by Taio Konishi)


キティー・デイジー&ルイス(Photo by Taio Konishi)


グッと冷え込む朝霧JAMの夜に焚き火は欠かせない。薪の燃える音が音楽と溶け合う(Photo by 宇宙大使☆スター)

辺りが暗くなり始めた17時20分、くるりがRAINBOW STAGEに登場。朝霧はなんと17年ぶりの出演とのことだが、この2日間でもっとも多くのオーディエンスを集めていたように思う。出だしは名曲「WORLD'S END SUPERNOVA」で、イントロ1秒で大歓声が巻き起こった。もはや十分ベテランバンドの域だが、リリースしたばかりの最新作『感覚は道標』からも多くの楽曲を披露するなど現役感も冴え渡る。最後は「奇跡」でしっとりと締めた。


くるり(Photo by Taio Konishi)


くるり(Photo by Taio Konishi)

このあともステージは続き、キャンプを楽しみたい人はもう一泊することもできるが、ツアーバスの発車時刻が19時のため、我々はここで帰路に着いた。名残惜しさを感じつつ、「来年も必ず来たい」という思いを胸に朝霧高原を後にする。帰りも予定時刻より早く、22時過ぎには新宿駅付近まで到着。神奈川県在住の筆者でも、日付が変わる頃には自宅の布団で横になることができたので、月曜日から仕事や学校がある人もこのツアーならなんとかなりそうだ。ちなみに、日帰り1日参加するためのバスプランも用意されている。

全くの初心者である筆者が、突然キャンパー憧れの朝霧高原で快適に過ごせたうえに最高の音楽まで楽しめたのだから、感謝というほかない。ただ、正直に難点を挙げるとしたら、スマホの電波が場所によっては全く繋がらなかったのは要注意だ。それと、空き時間がそれなりに多いので、複数人で行くのが理想だとは思う。学生くらいの若い参加者が少ない印象だったが、コロナ禍に学生生活の大半を過ごしたことでそもそものフェス経験が乏しいことも大きいのだろう。でも、仲間を集めて一緒に準備しながら臨めば、ひょっとしたら(時期的にも予算的にも)フジロックより敷居が低いフェスかもしれない。バスツアーも含め、ぜひとも前向きに検討してみて欲しい。

何より、いろんな表情を見せる富士山や美しい星空、開放感に溢れたムードなど、会場に足を運んでこそ味わえる感動がいくつもあった。2日間とも天候に恵まれたことも大きいが、音楽と同等かそれ以上にあの快適で贅沢な空間で過ごした実感が残っている。総合的にみて大満足の体験であった。


夜のRAINBOW STAGEに集まったオーディエンス(Photo by Taio Konishi)

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

MOST VIEWED人気の記事

Current ISSUE