『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』を音楽から紐解く リアーナ、ボブ・マーリーの名曲カバーと「強き女性たちの物語」

 
6年ぶりカムバック、「母親」リアーナ起用の背景

そして2022年、待望の続編『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』が完成した。今回の音楽布陣も強力だ。音楽ファンにとってのインパクトは前作以上だったかもしれない。スーパースターたるリアーナ6年ぶりのカムバック・ソロ曲「Lift Me Up」がリードシングルとしてリリースされたのだ。

“絶望的な夢の中で身を焦がしている 私を抱きしめながら眠りについて”
(リアーナ「Lift Me Up」)



早速Billboard HOT100初登場2位を記録した「Lift Me Up」は、子守唄のようなバラード。そのシンプルさゆえに、リアーナの歌声が唯一無二である証明とも評されている。ポイントとなるのは、作詞にも参加したクーグラ―監督が、人選の理由に「母性」をあげたことだろう。事実、ラッパーのエイサップ・ロッキーとの子どもを出産したばかりのリアーナは“私の許でゆっくりしてね”とやさしく歌っている。この愛情深きヴァイブは、おそらく『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』の物語と深くリンクしている。

歴史的な大成功を遂げた『ブラックパンサー』は、喪失の悲劇に直面したシリーズでもある。主人公ティ・チャラ王を演じたチャドウィック・ボーズマンは、2018年、大腸癌によって逝去した。映画関係者の多くが彼の闘病を知らなかったとも伝えられている。マーベル・スタジオ、そしてクーグラ―監督は、ティ・チャラの代役を立てることはしなかった。そうして『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』は大切な存在の喪失、追悼を描く続編として打ち立てられたのだ。長らく音楽業界を離れていたリアーナが楽曲提供を引き受けたのも「チャドウィックに捧げるため」だという。

『ブラックパンサー』は、元々「女性キャラクターが魅力的な映画」として喝采されてきた。主人公ティ・チャラをとりまく妹シュリ、母ラモンダ、護衛隊長オコエ、スパイのナキア……今作では、偉大な王を喪った彼女たちが試練に立ち向かう物語になると予想されている。予告編時点でアンジェラ・バセット演じる母ラモンダの張り裂けるようなスピーチにフォーカスされているため、母親となったリアーナによる子守唄のような歌声は、映画館でより深く響くだろう(ちなみに、鑑賞済みの批評家のあいだでは、アンジェラと「Lift Me Up」がともにアカデミー賞の有力候補とささやかれている)。

 
 
 
 

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