米ポルノ業界、アジア系女優たちが苦悩する「差別」の実態

左からアダルト女優のサヤ・ソンさん、ジェイド・クッシュさん、ヴィーナス・リュクスさん。クッシュさんは典型的なアジア人の役をまっさきに避けるようにしているという。(Photo by Jonni Darkko/EvilAngel; Courtesy of Jade Kush; Courtesy of Venus Lux)

ポルノ女優になって3年、アジア系アメリカ人のジェイド・クッシュさんは典型的なアジア人の配役を避けてきた。マッサージセラピストの役を演じた時には、監督からブロークン・イングリッシュで話すよう言われたが、断った。監督から「母国語で話してくれ」と言われたときも、「私はシカゴ生まれなのよ」と言い返した。

ある時、自分が出演した作品に一風変わったタイトルがつけられていることに気づき激怒した。作品の名前は『悶絶点心』。こうした経験はアジア系俳優の間では日常茶飯事だ。彼女たちはフェティッシュの対象とされたり、時代遅れの侮蔑的なアジア人のステレオタイプを悪用した役に起用されたりする状況に苦しんでいる。

差別やフェティッシュ化の問題は、ヴィーナス・リュクスさんのようなトランスジェンダーのアジア系俳優の場合、もっと深刻だ。俳優兼プロデューサー兼脚本家兼監督のリュクスさんは、ポルノ業界歴10年以上の大ベテラン。業界のトランス系でも数少ないアジア系アメリカ人俳優として、本人は「ニッチ中のニッチな存在」と言う。「十分なサポートがないから、みんなで集まってアジアンフェティッシュに関する問題を話し合うこともできない。私たちの懸念を声高に叫んで、改善を求めるようなパイプ役の人間もいない」 彼女が言うには、ポルノ業界でアジア系アメリカ人が受けるサポートは「皆無に等しい」そうだ。

とりわけアジア系アメリカ人の描かれ方に関しては、何もポルノ業界に限った話ではない、とトランスジェンダー向けのビデオを制作する会社Grooby Productionsのクリエイティブディレクター、クリステル・ペンさんは言う。「メインストリームの社会がアジア系アメリカ人女性をどう描いてきたかを考えてみてください。いつだって自分たちよりも劣る存在、白人男性に奉仕する女性としてです。私に言わせれば、これは人種と女性蔑視の問題です」。だが一般的に、業界内におけるアジア系アメリカ人女性の「立場はあまり強くない」とペンさん。アジア系アメリカ人男性となればなおさらだ。

アジア系ポルノはアダルトコンテンツの中でもとくに人気のジャンルだ。検索ワードでも「アジア系」「日本人」「中国人」と言ったワードが毎年常に上位25位圏内にランクインしている。たしかに、業界のトップに上り詰めたアジア系俳優も何人かはいる。有名なところで言えば、元ペントハウス誌のモデルのテラ・パトリックさん、ヴィーナス・リュクスさん、作家兼ポルノ俳優のアサ・アキラさんだ。

Translated by Akiko Kato

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