ROGUEギタリスト香川誠が語る、当時「終わりのない歌」に感じた強い違和感

『60 ALL TIME SELECTION』ジャケット

音楽評論家・田家秀樹が毎月一つのテーマを設定し毎週放送してきた「J-POP LEGEND FORUM」が10年目を迎えた2023年4月、「J-POP LEGEND CAFE」として生まれ変わりリスタート。1カ月1特集という従来のスタイルに捕らわれず自由な特集形式で表舞台だけでなく舞台裏や市井の存在までさまざまな日本の音楽界の伝説的な存在に迫る。

2024年6月の特集は、「吉田拓郎とROGUE」。前半2週は吉田拓郎のアルバム『Another Side Of Takuro 25』、後半はROGUEの6枚組ボックス・セット『60 ALL TIME SELECTION』を掘り下げていく。

田家:こんばんは。FM COCOLO「J-POP LEGEND CAFE」マスター・田家秀樹です。今流れているのはROGUEの「終わりのない歌」。1987年に発売になった4枚目のシングル、先月発売になったCD5枚組のボックス、DVDが1枚ついています。『60 ALL TIME SELECTION』からお聴きいただいています。今週と来週の前テーマはこの曲ですね。来週はこの曲のバージョン違いで始めようと思います。

終わりのない歌 / ROGUE

今月2024年6月後半の特集はROGUE。BOØWY、BUCK-TICKと並ぶ80年代群馬出身三大バンド。ヴォーカル・奥野敦士さん、ギター・香川誠さん、ベース・西山史晃さん、ドラム・深澤靖明さん。結成が1982年で1985年に今のメンバーになってデビューしました。オリジナル・アルバムを7枚残して1990年に解散して、2013年に再結成されたんですね。去年は再結成10周年なのですが、こんなふうに何年に何があったと事務的に辿ってしまうには余りある、そういうバンドでもあります。

彼らの再結成後の活動は日本だけではなくて、世界のバンド史上に例のないものではないか。ヴォーカルの奥野敦士さんが2008年に事故で下半身不随になって、車椅子生活を余儀なくされているんですね。必死のリハビリで歌えるようになって、2013年にバンドが復活して今に至っております。このへんのストーリーは既にいろいろな形で語られておりますが、そのきっかけがこの「終わりのない歌」が好きだったMr.Childrenの桜井和寿さんが、奥野さんが車椅子で歌っている姿をYouTubeに投稿していて、それを見つけたからなんです。奥野さん歌えるようになったんだと、その映像を桜井さんと小林武史さんがやっているap bank festivalの会場で紹介して、この曲を歌ったんですね。僕はそれを客席で見ていて、奥野さんの復活を知りました。全てはそこから始まっていると言っていいかもしれません。去年は再結成10周年、そしてメンバーが還暦です。初めてのオールタイムセレクションのタイトルも60です。収録曲も60曲。今週と来週、ギターの香川誠さんをゲストにボックスのご紹介をしようと思います。こんばんは。

香川:こんばんは。

田家:前置き長くてすみません(笑)。

香川:お世話になります、香川です。

田家:いろいろ説明しないとということがあってですね。

香川:ふふ、まあね、そうなんですよね。自分たちも今おっしゃっていただいた説明を随分訊かれましたので、大変でしたけど。

田家:今回の初めてのオールタイムセレクションをインディーズ時代から再結成後の曲も集めて、初めてのボックス・セット。

香川:せっかく出せるなら全部出したいなと思って、キャニオンの山内さんに相談をしに行ったのがもう何年前になるかな。

田家:あ、何年前かになるんだ。そのときに60曲というのはもうあったんですか?

香川:ありましたね。還暦来るから。ベスト盤という形ではいろいろなバンドが、いろいろなメーカーが出すじゃないですか。でも本人が携わってというのも多い。バンド側は黙認じゃないですけど、そういうのは嫌だったんですよね。なので、選曲とかもすべてやらせてくださいというのがわがままにわがままを乗せて、で、60をやらせてという。

田家:今回のアルバムの中にはアルバムに収められていない曲も入っておりまして、次の曲もそんな1曲ですね。去年再結成10周年。高崎でライブがあったりしたんでしょう?

香川:やりました。10周年だからというか、GBGBって後で触れていただけると思うんですけど、そのイベントを去年最終回にしようというところもあって。で、たまたま東京でやったオリンピック、パラリンピックのときに奥野が次かけていただく「WHAT A WONDERFUL WORLD」を歌ったという反響もあって、それはライブでやったことがなかったから、じゃあ、アコースティックで奥野やってみる?というのも含めたライブをやったんですよね。

田家:なるほど、そのライブバージョンをお聴きいただきます。

WHAT A WONDERFUL WORLD / ROGUE

田家:去年の5月27日高崎のCLUB Jammer‘s。どんなライブだったんですか?

香川:Jammer‘s(ジャマーズ)というライブハウスのスタッフ、オーナーも含めて。ROGUEのライブをやってくれという無茶なことをずっと言ってきていて、ただ、条件が奥野の車椅子が入れるとか、ステージに上がれるとかっていうことがあるじゃないですか。それをわかったって言って、スロープから何から全部作っちゃったんですよ。

田家:バリアフリーライブハウスなんですか?

香川:してくれちゃったんです。そこまでやられると、もう断れないので、わかったって。

田家:全国のライブハウスでバリアフリーのライブハウスってありますかね?

香川:あんまりないですよね。

田家:日本第一号のバリアフリーライブハウスが高崎CLUB Jammer’sです。この曲の話は来週もまたお訊きすることになると思います。今週と来週、今知ってほしいROGUEということで、それぞれ8曲を香川さんに選んでいただきました。香川さんが選ばれた1曲目、1985年のデビュー・アルバム『ROGUE』から「GOOD TIMES」。

GOOD TIMES / ROGUE

田家:1985年11月に発売になったデビュー・アルバム『ROGUE』の中の曲です。作詞作曲が奥野さん。

香川:これがたぶんデビュー前とかデビュー直後ぐらいのROGUEというバンドの形を一番象徴していると思いますよね。今もやりますけど、今やっても新鮮だし、すごくシンプルな曲なんだけどシンプルだからなのかな、毎回新鮮なんですよね。鮮度が落ちない。毎回やっても全然鮮度が落ちないんですよ。

田家:1989年の4月にニューヨークのCBGBでライブをやっているでしょう。あのライブのタイトルも「GOOD TIMES」だった。

香川:そうだったかな。田家さんいらっしゃっていただきましたよね。

田家:ええ、おもしろかったですね(笑)。

香川:まあ、無茶なこともしましたけど(笑)。でも、そうやってアメリカ、ニューヨークに戦いを挑むんだという意気込みのときには僕らはこの曲が象徴的だと思っていたのかもしれない。

田家:今回5枚組60曲、自分たちに選ばせてくれとおっしゃった。でも選ぶの大変だったでしょう?

香川:メンバー4人いれば、割り算すればそうでもないだろう、ある程度重複してもなんとか補っていけばと思ったら、ご存知かと思うんですけど誰も何もしないグループ(笑)。

田家:任せるよって(笑)。

香川:信用しているという、都合のいい言葉を返しておきましたけども(笑)。

田家:ROGUEはソングライターが3人いるという、本当に珍しいバンドなわけで、作家で選んでいる、これはいい選び方ですね。

香川:この選び方はキャニオンの山内さんが、これこういう形がいけるんじゃないかって提案をしてくれて、そこで僕も気がついたんですよ。本当だ、こういう分け方があったって。田家さんがこの前、ライナーのときかな。取材のときに3人いるって珍しいですよねっておっしゃっていただいて、それを珍しいと思ってなかったんですよ。

田家:あ、思ってなかったんだ。

香川:思ってなかったです。楽だと思ってましたよ(笑)。1人で十何曲書いてこいなんて、そんな大変な話ないでしょう。

田家:そういう選び方でDisc1とDisc4、1枚目と4枚目は奥野さんの詞曲、詞も曲も奥野さんというのが並んでいて、Disc2とDisc5、2枚目と5枚目が香川さんの曲なんですよ。詞は奥野さんでも、曲は香川さん。Disc3が西山さんの曲なんですね。こういうセレクションができるバンドは本当に少ないのではないかということで、今週はDisc1とDisc2からお送りしようと思います。香川さんが選んだのは、Disc2の1曲目「RUNAWAY GIRL」。曲が香川さんです。

Rolling Stone Japan 編集部

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