「Future of Music」日本代表25組を発表 世界各国のRolling Stone誌がアーティストを選出

Ave Mujica

アニメ発の仮面ゴシックメタルバンド



メディアミックス作品『BanG Dream!(バンドリ!)』の最大の特色といえば、キャラクターを演じる声優が実際にバンドとしてライブを行うこと。そんな『バンドリ!』から2023年に新たに生まれたバンドがAve Mujicaだ。マスクで顔を覆ったミステリアスな装い、ゴシックメタルをベースに激情と優美を兼ね備えた音楽性、幕間劇を挿むシアトリカルなステージによって生み出される重厚な世界観は、役者にして歌手や演奏家といった出自を持つ彼女たちだからこそ表現し得るものだろう。2023年放送のTVアニメ『BanG Dream! It's MyGO!!!!!』での登場をきっかけに日本のみならず海外でも注目を集めるなか、2025年にはAve Mujicaをメインにした新作アニメの放送も決定しており、例えばBABYMETALが日本特有のポップカルチャーとメタルを融合したサウンドで世界に受け入れられたように、彼女たちの音楽もアニメの物語と共にさらに大きな広がりを見せることだろう。(北野創)




HALLEY

世界に羽ばたく新世代R&Bバンド



2021年5月、早稲田大学のブラックミュージックサークル・The Naleioにて結成された現役大学生5人組バンド、HALLEY。初めてインタビューした時から「このバンドは何か違う」と感じさせられた。音楽へのリスペクトとスキルが圧倒的で、「音楽の力とは何か」「表現者とはどうあるべきか」ということに5人ともが高い視座を持っている。グローバルなアイデンティティを持つメンバーが在籍し、クラシック、ゴスペル、ファンク、ソウル、ジャズ、ヒップホップ、ヘヴィメタル、K-R&Bなどそれぞれのルーツを絡ませながら、プロダクションに真摯に向き合うことで豊かなサウンドが完成。セッション要素のあるライブもグルーヴや歌力が抜群で、3月にはSXSWにも出演。同月リリースの『From Dusk Till Dawn』は1stアルバムらしからぬクオリティと確かなポテンシャルを感じさせるもので、Suchmos『THE BAY』、WONK『Sphere』を聴いた時に似た高揚感を覚えた。(矢島由佳子)




大森日向子

夢と現実の狭間へ誘なうアンビエント作家



陶酔感のあるシンセ・サウンドと幽玄なボーカルを武器に、アンビエント、クラシック、ドリームポップの間を軽やかに往還する大森日向子。横浜出身で現在はロンドンを拠点に活動する彼女は、ケイ・テンペスト、ジョージアといったミュージシャンのライブやレコーディングに参加し、その音楽的感性に磨きをかけてきた。森林浴にインスピレーションを得た2022年のデビュー作『a journey...』では、日本の環境音楽に通底する静けさを感じさせながら、イマーシブなアンビエント・スペースを構築。そして、昨年の『stillness, softness…』では、脈動するボーカルと仄暗いシンセ、流麗なメロディを緻密にコラージュしながら、ドラマティックで複雑なサウンドスケープを描いてみせた。そんな夢と現実の狭間へ我々を誘なうような親密感のあるサウンドはフローティング・ポインツやロ・レインを魅了し、コンサートやツアーで共演。更に活躍の場を広げている。(坂本哲哉)




星熊南巫

ダークで優美な世界観を描く、和製ハイパーポップ



トラップ以降の感覚で、電子音楽やEDMを飲み込んだようなラウドロックが全世界で流行中の2024年。バーチャルでアンドロジナスな感覚を世界観に反映した上でコンセプチュアルに表現する試みは、BMTHといったアーティストを筆頭として、たとえばSpotifyの人気プレイリスト「misfits 2.0」でも可視化されてきた。星熊南巫は、昨年「新羅DARKPOP」で本プレイリストにキュレーションされ、この2020年代を席巻するムーブメントの日本代表としてグローバルで大きな注目を集めている。特筆すべきは、妖艶な日本語詞が絡むラウドなサウンドからほのかに香ってくる、唯一無二とも言える幽玄さ。他にも、ソロ・プロジェクトであるDEATHNYANNではオンラインゲーム「Fortnite」のロビーミュージックを担当、さらに4人組グループ・我儘ラキアの中心人物としても活躍中。ファッションブランドとのコラボレーションも多く、まさしく新世代のカルチャー・アイコンとして圧倒的な存在感を誇っている。(つやちゃん)




jo0ji

無限のポテンシャルを秘めた異色の大器



自然体のままで胸を掴んでしまう才能の持ち主。フォークやソウルなどいろんなジャンルの素養を感じさせつつ、シルキーな声と伸びやかなメロディセンス、心の深い部分に触れるような歌心に惹き込まれてしまう。現在24歳、鳥取在住のjo0jiは漁師の家に生まれ漁港で働いてきたという異色の経歴のシンガーソングライターだ。友人のために作った曲だという「不屈に花」をYouTubeに投稿すると話題となり、WONKのメンバーを迎えて制作したEP『475』など続く曲も高いクオリティを持つ。ルーツに挙げるのは忌野清志郎や中島みゆきやRADWIMPS。わかりやすい言葉で親密なムードを醸し出しながら、ときに死生観など深遠なテーマもさらりと表現する世界観、チャーミングなルックスも魅力だ。まだ知る人ぞ知る存在だが、アーティストの本質が国境を超えて広がった藤井 風のようなブレイクの可能性とポテンシャルを感じる。(柴那典)




Khaki

予定調和を拒むオルタナ·ロックの使者



もし「オルタナティブ·ロック」というものを、現義通りに純粋培養し、それを日本語によって表現したとするならば? 東京を拠点に活動するこの5人組は、そんな妄想を掻き立てる異色の存在だ。2021年に1stアルバム『Janome』をリリースして以降、ライブハウスを中心にその評判が瞬く間に伝播し、独力での活動ながら現在最注目の若手バンド=Khakiとして確固たるブランドを誇っている。手垢のついた進行やアンサンブルを断固として拒否する姿勢と馴染みあるメロディの同居は唯一無二であり、例えば3つのパートによって構成されている「Undercurrent」は、ライブの度に演奏順がシャッフルされ、場合によっては他の楽曲ともリンクするという縦横無尽な一曲。最新シングル「お祝い/萌芽」からは、バンドとしての幅を中塩博斗·平川直人という二人のソングライターの対比から窺うこともできる。彼らを目撃した瞬間こそ、疑うことなくオルタナシーンの最前線だ。(風間一慶)




ミームトーキョー

ボーダーを越えていく6人の“ミーム”



2019年に“でんぱ組.inc Jr.オーディション”を経て結成されたでんぱ組.incの妹分ユニット、とだけ聞くとアキバ系をイメージするかもしれないが、彼女たちが打ち出すのはその枠に留まらない、より広範なポップカルチャーを横断するスタンスだ。メンバーはMEW、RITO、SOLI、SAE、MITSUKI、NENEの6人で、RITOは天沢璃人名義ででんぱ組.incのメンバーを兼任、SOLIは韓国出身・在住。その意味でもグループや国境の垣根を越えたスタイルを確立しているわけだが、音楽面においてもGiga&TeddyLoidやウ山あまねなどを起用して、最先端のEDMからハイパーポップまでを昇華したエッジーな楽曲を続々と届けている。2023年には気鋭のボカロP・STEAKAが手掛けたハードなエレクトロクラッシュ「GAV RICH」やchelmico、国士無双、ryo takahashiが手掛けたレイヴィーなラップ曲「AGAIN AND AGAIN」でそのボーダーレスぶりを誇示。彼女たちの“ミーム”が東京から世界に伝播する日もきっと近い。(北野創)




MONJOE

エッジーな最先端プロデューサーとして覚醒



2015年にデビューしたDATSのボーカル&シンガーソングライターとして知られる一方、近年はトラックメイカー/プロデューサーとしての存在感を高めているMONJOE。MAZZELの1stアルバム『Parade』収録のワイルドなラップ曲「K&K」の作曲や、「Future 25」に選出された花冷え。のデスボイス轟くラウドロック「Tales of Villain」のアレンジなども手がけている。MAZZELと同じBMSG所属、BE:FIRSTの「Milli Billi」「Grow Up」「SOS」でも知られる。最近MONJOEの才気が大きく注目された代表曲といえば、Number_iのデビュー曲「GOAT」だろう。平野紫耀、神宮寺勇太、岸優太の凄みのあるスキルフルなラップとノイジー且つインダストリアルな手触りのトラックと暴力的なビートが入り乱れたサウンド·プロダクションは唯一無二のエッジーさと革新性がある。K-POPグループDRIPPINの楽曲にも携わっており、ジャンルや国籍の壁をぶち壊し、音楽シーンを活性化していく第一人者だろう。(小松香里)




NENE

音楽を通じて世界と交信する、ヒップホップ界の超越的存在



2016年より、Ryugo Ishida、プロデューサーのAutomaticとともにヒップホップ・ユニット、ゆるふわギャングとして活動。サイケデリックな世界観と詩的なリリック、アバンギャルドなファッションスタイルで注目を集める。海外でのライブ活動に加え、イギリスのNTS Radioへの登場、ケミカル・ブラザーズの楽曲に参加するなど、ボーダーレスな動きを見せる。インドのゴアを訪問し、トランスにも傾倒。2022年よりシークレット・レイヴも主催するなど、ヒップホップ・シーンに新たなトレンドを作り出した。NENE名義としては、ソロのアルバムやEPのリリースに加え、AwichやKID FRESINO、STUTS、MonyHorseなどの国内気鋭のアーティストの楽曲に参加。2023年リリースの「Bad Bitch 美学」が大ヒットしTV番組『ミュージックステーション』に出演。破壊的かつ美しい、カテゴライズ不可能な独自の道を進む。(MINORI)




乃紫

次世代のクリエイティブでTikTokを席巻



TikTokが音楽の消費や流行のあり方を大きく変えた今、それをクリエイティブの出発点に据えた新世代のシンガーソングライターが次々と登場している。なかでも乃紫は非常にユニークな発想の持ち主だ。代表曲「全方向美少女」は“正面で見ても横から見ても下から見てもいい女”というフレーズに乗せて様々な角度で顔を映す動画がTikTokでバズり、日本国内のみならずTWICEやaespaのメンバーが投稿するなど反響は韓国にも広まった。もともと音楽活動を始めたのとTikTokへの投稿を始めたのがほぼ同時。動画を撮りやすいフレーズがバズの決め手になったというこの曲を筆頭に、作詞作曲はTikTokのUGCを意識した方法論で行っているという。韓国を中心にアジア各国のバイラルチャートを席巻したのを受けて「全方向美少女」の韓国語バージョンをリリースするなどアクションも素早い。キャッチーなメロディセンスとしたたかな戦略性が武器だ。(柴那典)


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