文藝天国が2度目のワンマンで表現した、五感がグルーヴする非日常

文藝天国(Photo by たかつきあお)

文藝天国のキャリア2回目となるワンマンライブ「アセンション」が2024年2月17日(土)、日本橋三井ホールで行なわれた。聴覚、視覚、嗅覚のすべてが嚙み合って初めて感じることのできる快感があることを、ぜいたくな環境で味わうことのできた、特別な一夜になった。本誌独自ライブレポートをお届けする。

文藝天国はバンドではなく、五感それぞれを担う班に分かれた、ひとつのブランドとしての存在を強調している。すでにその活動の大部分が形になっており、音楽班(聴覚)、映像班(視覚)、服飾班(嗅覚)、食卓班(味覚)が、「文藝天国」を構成している(現在、触覚を担う「建築班」を構想中とのこと)。

当日は別会場にて食卓班による「喫茶文藝」、服飾班によるフレグランスメゾン「PARFUM de bungei」が行なわれ、オリジナルのスイーツと紅茶、香水が楽しめる3拠点同時開催となった。そしてライブ会場となる日本橋三井ホールは、開場1時間前には長蛇の入場列が作られた。

「まもなく離陸いたします。快適な空の旅をお楽しみください」。場内が暗転すると白の薄めの幕に、ko shinonome(ギター)、ハル(ボーカル)、すみあいか(VDJ)の3人のシルエットが浮かび上がる。しんとした独特の緊張感に包まれ、幕がかかったまま1曲目「尖ったナイフとテレキャスター」が始まった。2019年、当時高校生だった彼らの処女作『プールサイドに花束を。』の冒頭を飾る曲だ。曲終わりとともに幕が下り、3人の姿が露わに。間髪入れずに「メタンハイドレート」、「七階から目薬」、「夢の香りのする朝に。」を演奏。この日は二部制が敷かれ、「破壊」と名づけられた第一部はミドル~アッパーの楽曲が立て続けに披露された。


文藝天国(Photo by たかつきあお)

文藝天国の全曲で作詞作曲、編曲などを手がけるkoのギタープレイは変幻自在だった。ジャキジャキとしたテレキャスターの音色そのものは2000年代以降のギターロックからの影響を感じさせるが、ソロでは80’sあたりのハードロックっぽいフレージングも垣間見えた。また、ピックアップセレクターを細かく切り替えるスイッチング奏法や、ライトハンドでタッピングするという小技も冴え、音源やMusic Filmだけでは見られない、koのたしかなテクニックが見られた。

視覚表現を担当するすみあいかはこの日VDJとしてステージに立った。文藝天国の演奏は基本的に同期と思われるのだが、時おり見せるkoとの目くばせには、ただ音源をタイミングよく鳴らすだけではない、「合奏」というライブならではの醍醐味が感じられた。


Photo by たかつきあお

そしてボーカルを担当するハルである。ほぼ直立不動で、鋭いまなざしで歌う姿が印象的だった。なにかを呼びかけるでもなく、ただひたすらに楽曲の一部(歌唱)として存在することを強調していたように感じた。

第一部の終わり「破壊的価値創造」が終わると3人が捌けステージが暗転。警告音のようなブザーとともに突如ステージに現れたのは、同曲のMusic Filmに出演していたsoanである。


soan(Photo by たかつきあお)

「新ユニット。破壊的価値創造、始めます」というひと言のあとにサプライズ的に披露された、「ラスト・フライト」。文藝天国とは対照的に、soanがステージの端々を動きながら感情的に歌うこの1曲は、事件性抜群だった。この日の夜に、文藝天国の派生ユニットとしてsoanを“主演”(「ボーカル」ではないようだ)に迎えた「破壊的価値創造」がスタートすることがSNS上でも発表された。ここだけ撮影が許可されたので、その一部を目にしたファンも多いだろう。

Rolling Stone Japan 編集部

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