tonun、ボーダーレスなラブソングで映し出した「J-POPの分岐点」

tonun

2020年10月、「最後の恋のMagic」をYouTubeに投稿し、活動をスタートさせたシンガーソングライターtonun(トヌン)。メロウなシティポップテイストの色濃いトラックに乗せ、恋におけるマジカルな感覚を甘く歌った楽曲は早速大きな反響を呼んだ。2022年1月には、藤井風、あいみょん、Official髭男dism、King Gnu、Vaundy等、今の音楽シーンを担う顔ぶれが選出されたことでも知られる「RADER:Early Noise 2022」に選ばれたことも。

tonun【ツタロックフェス2023】速報ライブ写真(写真10点)

6月14日にリリースされた1stアルバム『Intro』のアルバムタイトルには、「今作こそがJ-POPの分岐点となり、シティポップムーブメントのその先を示すきっかけとなる作品になると確信した」というtonunの思いが込められているという。



サウンドプロデュースを手掛けたのは、Nobuaki Tanakaとして、様々なアーティストの楽曲のアレンジやプログラミングを手掛けているknoak(ノーク)。ちなみにtonunとは、ギターをきっかけに音楽にのめりこんでいったという共通点がある。

これまでのtonunの楽曲は、“ひとりで作るベッドルームミュージック”という色合いが濃かったが、アルバムにはknoakの他にも、Yaffle、小川翔、MELRAW、dawgssの上原俊亮といった名うてのミュージシャンが多数参加していることもあり、グルーヴィーなバンドサウンドがベースになっている。

全10曲が収録。華やかなホーンと艶やかなコーラスで一気に高揚感を高めるオープニングナンバー「Sugar Magic」で、まず「君しかいない 何も見えていない 燃え盛っていく愛」という熱烈な宣言をし、ハイトーンで伸びやかな歌声を聞かせたと思ったら、小気味いいリズミカルなラップ調の歌を挟み込み、いきなり歌い手としての幅広さを見せつける。



続くメジャーデビュー曲「Friday Night」では、熱狂を呼び起こすハミングのような歌を皮切りに、ジャジーなバンドサウンドが軽快なグルーヴを紡ぐ。眠気を押し殺し、電車に揺られていくいつもの憂鬱を通し、心弾む“金曜日の夜”に思いを馳せる。灰色の感情が、軽快なグルーヴによって煌めき、「全てを照らして」という光のメッセージに帰結するポジティヴィティ溢れる楽曲だ。



その後、まどろむ様なボーカルゼーションから始まるスローテンポの「嘘寝」へ。微妙で複雑な関係性であることが想像できる“私たち”の距離感を描写しながらも、「目を閉じれば許される気がした」「目を開ければ崩れていく気がした」という切実な思いが紡がれる。



「君は言うから」は、ため息交じりの歌声とブラジリアンなアンサンブルが爽やかな風を運ぶ楽曲。君と一緒に過ごす何気ない時間の尊さをスモーキーな歌声で描くのがtonunらしい。ゴスペル調のサウンド×ラップ調の歌で君と出会えた奇跡と軌跡をチアフルに描く「how many times」、ホーンが高らかに鳴るソウル色の強い「rendez-vous」。その後、代表曲のひとつである、80年代シティポップ感と夏の熱気が匂い立つ「真夏の恋の気まぐれ」でアルバムは一旦ピークを迎える。



後半はtonunが影響を公言しているトム・ミッシュを思わせる、ビートが効いたジャズ×ヒップホップのアプローチによる「eyes」で抜け出せない恋とループ感のあるサウンドをマッチさせ、陽気なファンクチューン「merry-go-round」で追っても追いつけない君の心との距離をメリーゴーラウンドに例える。ラストはアコースティックギターの優しい旋律が印象的な「気持ちの糸」。ひとつの終わりを迎えた恋を切なく歌い上げる。

R&B、ネオソウル、ジャズファンク、ローファイヒップホップを愛聴するtonunの嗜好と、knoakの得意とするEDMやハウスといったダンスミュージックとソウルが混ざり合い、独自のボーダーレスなラブソングがたっぷりと聞ける『Intro』。

SUMMER SONIC 2023をはじめ、いくつかの夏フェスへの出演が決まっており、夏曲を多く持つということを考えても相性はばっちりだろう。さらに支持を広げていきそうだ。

<INFORMATION>


『Intro』
tonun
ユニバーサル ミュージック
発売中
https://tonun1.lnk.to/Intro

01 Sugar Magic
02 Friday Night
03 嘘寝
04 君は言うかな
05 how many times
06 rendez-vous
07 真夏の恋は気まぐれ
08 eyes
09 merry-go-round

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