4月28日の日本公開以来、熾烈なゴールデンウィーク映画バトルを制し1位を獲得。その後も興行収入をグングン伸ばし続ける大ヒットアニメーション映画『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』。国内のこれまでの興行成績は5月29日の時点で100億円を突破、動員数は700万人超を記録し、全世界興行成績の累計は約12億ドル(約1729億円)に到達。アニメ作品の全世界歴代興行成績では、1位の『アナと雪の女王2』、2位の『アナと雪の女王』に次ぐ歴代3位にランクインとなった。まさに『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』は、驚異のスマッシュヒットムービーとして現在進行形で記録を塗り替えている真っ最中なのである。任天堂のゲームソフト『ザ・スーパーマリオブラザーズ』が発売されたのは1985年9月。日本はバブル期ど真ん中で、ゲーム機はオリジナルのファミコン、ファミリーコンピュータの時代である。そこから『スーパーマリオ』シリーズは、ゲームボーイ、スーパーファミコン、NINTENDO64、ニンテンドーDS、Wii、Nintendo Switchなどなど、ハードは変化しながらも長きに渡り世代を超えて愛され続けてきた。マリオやルイージといった主役たちは、もはやゲームの枠を飛び越え、世界中のあらゆる人たちに認知されているキャラクターとなっている。
今回の映画『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』は、任天堂が、『ミニオンズ』や『SING/シング』など手掛けるアニメーション制作会社・イルミネーションとタッグを組んで制作した作品だ。
ニューヨークのダウンタウンに住む配管工のマリオとルイージが異次元にスリップし、キノコ王国を滅ぼそうとするダークランドの大魔王クッパ打倒のために、キノコ王国のピーチ姫たちと奮闘するというのが大まかなストーリー。
もちろん、子供が楽しむファミリー層向け映画であることは間違いないのだが、それだけに留まらず大人も楽しめる作りになっているのがこの映画のすごいところ。世界規模で大ヒットとなっているのは、それも大きく影響しているように思う。では、『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』の大人も楽しめるポイントをいくつかピックアップしていこう。
(C) 2023 Nintendo and Universal Studios映画は約90分の上映時間でテンポよく進んで行き、とにかく内容が面白い。物語を思いっきり簡略化すると、下町の配管工・マリオのサクセスストーリーとなる。マリオが努力と根性で目標を成し遂げていく姿は、ロッキー・バルボア、ルーク・スカイウォーカー、矢沢永吉などと重ね合わせることができる。マリオがドンキーコングと対決し、「お前のパンチ効いたぜ」的に仲間になっていくところは、ロッキーとアポロの絆、少年ジャンプ的な“友情・努力・勝利”ともシンクロしてくる。また、マリオとルイージの兄弟愛は、最初から兄弟関係良好な『バックドラフト』のようでもある。そして、映画のヒロインであるピーチ姫は、時代性を反映するかのように自立する女性像的に描かれており、彼女が大活躍する姿はとにかくかわいくかっこいい。
ゲームのリンク性で言えば、『スーパーマリオ』だけでなく、『マリオカート』や『ドンキーコング』など、様々な任天堂ゲームがモチーフになった場面が出てくる。ゲームフリークのテンションは上がり、かつてゲーマーだった人たちは懐かしさを感じたりもするはず。そうした感情を上書きする勢いで、この映画は圧倒的な3Dグラフィックスの映像表現で高揚感を抱かせてくれるのだ。
(C) 2023 Nintendo and Universal Studiosさて、映画は吹き替え版の方が多く公開されているのだが、あえて大人には字幕版をお勧めしたい。それは、字幕版の声優のキャストが洋画好きにはたまらないハリウッドトップスター揃いの豪華さだからだ。
マリオ役のクリス・プラットは、マーベルの『
ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』シリーズ、『ジュラシック・ワールド』シリーズでお馴染みの俳優。ピーチ姫は、Netflixドラマ『クイーンズ・ギャンビット』や、映画『ウィッチ』、主演作『EMMA エマ』などで高く評価される大人気俳優アニャ・テイラー=ジョイ。クッパは、アメリカのコメディ映画シーンを牽引し続け、そしてロック愛に溢れる“俺たち”のジャック・ブラック。彼がいるだけで、映画の一定ラインの面白さは確約されたも同然だ。さらにドンキーコングは、ジャックに近しい系譜にあるセス・ローゲンと、かなり濃厚なキャスティングである。
そして、この映画を大人も楽しめる作品にしている大きな要因は、劇中に流れる音楽である。映画の時代設定がスーパーマリオが誕生した80年代であることを示唆するように、要所要所で80sを中心とした洋楽ヒットナンバーが聴こえてくるのだ。ビースティ・ボーイズやa-haなどの馴染み深い洋楽クラシックが、物語の場面の意味合いとハマるように流れるのだから、選曲の妙に魂がたぎること間違い無し。親子連れで見に来ている観客は、確実に子供よりもお父さんの方がグッときているはずだ。
スーパーマリオが発売されて今年で38年。最初は8ビットだったマリオは、見事なビジュアルとなって世界中の多くの人たちに感動と興奮を届ける存在にまで成長したわけだ。そんなマリオの活躍が詰まった大ヒット映画『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』を鮮やかに彩り、大人を歓喜させる劇中の洋楽クラシックについて触れていこう。